「SO(ストックオプション)を発行したのですが何か注意すべきことはありますか」
「実際に発行する際にはどの様な手続きが必要なのでしょうか。」
成長局面に入り優秀な人材を確保するタイミングで多くのベンチャー企業が直面する問題です。
今回はそんなSO(ストックオプション)について解説します。

SO(ストックオプション)のメリットデメリット

そもそも、ストックオプションとは、
自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利です。
ベンチャー企業を中心に、取締役や従業員への報酬形態の一つとして、
様々な企業で活用されており、下記の様なメリットデメリットがあります。
【メリット】
・将来的報酬による優秀な人材を確保出来る。
・業績意識向上による従業員のモチベーションがアップする。
・付与側(受け取る側)の金銭的負担やリスクが発生しない。
【デメリット】
・既存株主の持分が希薄化してしまう。
・付与基準が公平さを欠く場合には、社内において不信感が生まれてしまう。
・付与の都度、株価を算出する必要がありコストがかかる。

SO(ストックオプション)発行時に留意すべき3つの事項

発行限度枠に注意する

発行限度枠に、明確な線引はありませんが、
発行済株式数の10%くらいまでが基準になっており、
それを超えるとIPO時に外部からの指摘や審査がより厳しくなります。
これは、
ストックオプションの権利行使で同時期に多くの株が買われた場合、
既存の株の価値が薄まり、既存株主が不利益を被ってしまうからです。
SOを初期で出し過ぎたことで資本政策が上手くいかなくなるケースが多く存在しますので、
発行限度枠の設定を含めしっかりと制度設計をして付与する様にしましょう。

発行時期と発行価格に注意する

シリーズA、シリーズB、などの資金調達を行うタイミングにて、
形式的な企業価値及びそれに基づく理論的株価が確定する形となり、
その後発行するSO(ストックオプション)の発行価格についても当該株価に影響を受けます。
これにより、SO(ストックオプション)の発行タイミングによっては、
そのメリットを十分に活用できない形となってしまいます。
そのため、外部からの資金調達を行うタイミングの前には、
「現時点でSO(ストックオプション)を発行する必要はないか。」を検討するとよいでしょう。

税制適格ストックオプションとして設計する

行使時に課税されないよう税制適格ストックオプションとして設計する必要があります。
なぜなら、
税制適格ストックオプションは、
「譲渡所得」となり、税率20%と低い税率で課税関係は終了する一方で、
税制非適格ストックオプションは、
一部が「給与所得」:となり、税率は最高で55%と高い税率を課せる形となります。

税制適格ストックオプションの要件

下記、いずれの要件も満たす必要があります。
・付与対象者が役員または従業員であること
・行使期間が付与決議の後の2年後から10年後以内であること
・行使価格が年間1,200万円以内である必要がある。
・行使価格が契約締結時の1株あたりの価格以上であること
なお、
発行済株式数の3分の1以上を有するものには発行できないので資本設計に注意が必要です。

SO(ストックオプション)における税務手続き

付与時及び行使時の翌年1月31日までに、
法定調書「新株予約権の付与に関する調書」を提出する必要があります。

付与時に、
「その付与をした日の属する年の翌年1月31日までに、税務署長に提出していること (租特法第29条の2第5項7項」、
は失念しがちなため注意が必要です。

SO(ストックオプション)は上手く利用することで、
優秀な人材を早期に確保できるという大きなメリットがあります。

メルカリは、多くの従業員にSO(ストックオプション)を付与することで、
企業全体が同じ方向を向きIPOによって多くの従業員が、
その利益を享受出来たSO(ストックオプション)の上手な活用事例でしょう。

一方で、SO(ストックオプション)を付与したものの、
実際の行使されない(行使できる状況にない)事例も多く存在します。
これは、
SO(ストックオプション)はIPOを目指さない会社で発行しても意味がないというこです。
将来の資本構成にも影響を与えるSO(ストックオプション)の設計。
様々な観点を加味し十分に考慮して発行する様にして下さい。

Takeoffer会計事務所では、SO(ストックオプション)の設計を含め、
幅広い会計・税務のアドバイスを行っております。
何かありましたらお気軽にご相談下さい