前回、細かなくくりである「社会保険」についてお話しましたが
今回はもう一方の「労働保険」についてお話します。

労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」を総称した言葉です。
労働者を一人でも雇っていれば労働保険の適用事業所となります。
適用事業所は保険関係成立手続きを行い、労働保険料を納付しなければなりません。

そこで今回は、労働保険とは何か?
また、加入手続きや納付方法などについて解説します。

【労働保険の仕組みや役割とは?】

労働保険とは労働者に何かあった場合、保険給付をしてくれる制度になります。
では、一体どのような、仕組みや役割になっているのでしょうか?

◇労災保険

労働者が仕事(業務)中や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になってしまった場合に、
労働者や家族に対し、保険給付を行う制度です。
労災保険料は事業主が全額負担することになっています。
また、事業の種類によっても保険料率が変わってきます。
労災保険料率は以下参照。
労働保険料率
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000198405.pdf》

・労災保険の加入条件とは?
正社員やアルバイト、パートを問わず従業員を一人でも雇っている事業所は、
原則として労災保険に加入しなければなりません。

◇雇用保険

労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、
労働者の生活や再就職ができるようにするために必要な給付を行うものです。
失業給付のほかに、雇用安定事業・能力開発事業・雇用福祉事業なども行っています。
例えば、よく耳にする育休中に受給できる育児休業給付金も対象になります。
育児休業給付金とは、育児休業を取得した場合、「育児休業給付金支給申請書」を申請することで、受給されます。
しかし、受給条件があるので注意が必要です。
詳しくはハローワークHPより、ご確認ください。
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_continue.html

雇用保険は事業主と労働者双方で負担することになっています。
雇用保険料率は以下のようになっています。

雇用保険料率
https://www.mhlw.go.jp/content/000484772.pdf

・雇用保険の加入条件とは?
適用事業に雇用される従業員は原則としてその意志にかかわらず被保険者となります。
加入条件については、下記に該当する場合が加入対象となります。

・週20時間以上働いている
・31日以上引き続き雇用される見込みがある

基本的に、1日から数週間といった短期雇用や短時間雇用を除いた場合は
雇用保険に加入する必要があります。

【労働保険の加入手続き方法】

事業所を新たに設置し、従業員を雇用した場合
下記の書類を記入し、提出する必要があります。

《提出書類》
①保険関係成立届
②概算保険料申告書

※この用紙は複写式になっているため、
労働基準監督署窓口へ取りに行く必要があります。

《添付書類》
法人の場合:登記事項証明書
個人事業の場合:事業主世帯全員の住民票写し

《提出先》
所管の労働基準監督署
(※概算保険料申告書は、労働基準監督署、労務局、銀行でも提出可能です。)

①、②の手続き完了後、続いて③、④手続きを行います。

《提出書類》
③雇用保険適用事業所設置届
④雇用保険被保険者資格取得届

※用紙はハローワークで取得可能であるとともに、インターネットからもダウンロード出来ます。
雇用保険適用事業設置届はこちら→https://hoken.hellowork.go.jp/assist/600000.do?screenId=600000&action=koyohotekiSetchiLink
雇用保険被保険者資格取得届はこちら→https://hoken.hellowork.go.jp/assist/600000.do?screenId=600000&action=koyohohiLicenceLink

《添付書類》

保険関係成立届(①)の事業主控(コピー)
法人の場合:登記事項証明書
個人事業主の場合:事業主世帯全員の住民票の写し
④を提出する場合は労働者名簿

《提出先》
所管の公共職業安定所(ハローワーク)

【労働保険料の納付方法とは??】

概算保険料は通常の場合、前年度に支払った賃金の総額によって算定し、
当年度における賃金上昇などによる増加分は、翌年度の初めに精算すればよいことになっています。
また、保険年度の中途で保険関係が成立した事業は、
保険関係が成立した日から保険年度の末日(3月31日)までの分を計算して申告・納付しなければなりません。

納付手続としては、前年度から引き続き労働保険の保険関係が成立している事業は、
原則として6月1日から7月10日までの間
(新規で保険関係が成立した事業については、当該保険関係が成立した日から50日以内)に
「概算保険料申告書」と「納付書」を作成し、
この保険料申告書と納付書に概算保険料を添えて
銀行、所轄の都道府県労働局又は労働基準監督署に申告・納付することになります。

 

【概算保険料はどうやって作成したらいいの??】

例えば、
『飲食業を営んでいて
4月に1名雇用し、毎月170,000円の給料を支払う場合』

まず、4月から翌年3月末までの賃金総額を計算します。
170,000(毎月の給与)×12ヶ月=2,040,000(賃金総額)

次に、労災保険料率+雇用保険料率を合わせた額を計算ます。
飲食業の場合:
労災保険料が3/1000、雇用保険料が9/1000となるので、合計で12/1000となります。
なお、雇用保険料が9/1000のうち、事業主負担は6/1000、被保険者負担は3/1000です。

最後に、労働保険料(納付額)を計算します。
2,040,000(賃金総額)×0.012(労災保険料率+雇用保険料率)=24,480(労働保険料)

よって、24,480円の納付となります。

※この場合は事業所負担分となり、被保険者負担分を除いています。

上記の24,480円のうち、
事業主負担額:6,120(労災保険料)+12,240(雇用保険料)=18,360円
被保険者負担額:6,120(雇用保険料)=6,120円となります。

【まとめ】

労働者を一人でも雇用した場合は、必ず加入しなければなりません。
労働保険とは従業員の健康や生活を守るための保険です。
労働者が安心かつ安全で働くためには、事業所はきちんと手続きをし、
申告や納付を忘れずにしましょう。
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