毎月、給料支給日にもらう給与明細。
夏休み前の給与明細、どんな事に使おうかなど、
楽しみでもありますよね。

ただ、給与明細の中には、「基本給」「支給額」「厚生年金保険額」など
聞き慣れない色々な項目がずらり。
どうしてその金額なのか?
なんで、この項目が控除されるのか?
良く分からないまま、何となく読み過ごしてしまうかと思います。

今回は新入社員の山田花子(22歳)さん(東京都在住)の給与明細を参考に、
疑問点を解決していきます。

【給与明細の構成】

給与明細は大まかに分けて、【勤怠】【支給】【控除】【振込支給額】で構成されています。

支給日と締め日

支給日と締め日は意味が異なります。
この会社は、毎月1日~月末を計算期間とする「末締め」で、
支給日は翌月未払い毎月20日となります。

勤怠

出勤日数、欠勤日数、残業時間など、給料の「締め日」を元に計算された
日数や時間が記載されています。

残業時間の確認は必ず行ったほうが良いでしょう。
また、取得した有給日数などが記載されているケースもあるので、
有給残日数なども間違いがないか確認すると良いでしょう。

支給

会社から支給される基本給、通勤にかかわる通勤手当、残業代が
この部分に記載されています

基本給

基本給とは、該当月に就業した時間数などに関係なく、
月によって変動することのない賃金の事です。
従って、毎月決まった額が支給されます。
また、賃金に関しては、最低賃金が法律により定められており、
雇用主はこの水準を守らなければなりません。
例えば、平成30年度の東京都の最低賃金は985円となっており、
基本給がこれを下回ってないか確認しましょう。
<参照>地域別最低賃金(出典:厚生労働省) 

224,000円÷勤務日数20日÷所定労働時間8日=1,400円

花子さんは1時間あたりの賃金が1,400円なので
最低賃金を上回っているので大丈夫ですね。

通勤手当

通勤に必要な交通費の事です。この部分は非課税な為、間違って
課税されていないか、念の為、確認しておきましょう。
<参照>通勤手当の非課税限度額(出典:国税庁)

残業代

残業した時間を元に、正しく残業代が支給されているかも、きちんと確認しましょう。
残業代の計算方法はなかなか複雑なので、
上記の給与明細を元に、解説していきます。
【計算方法】

算定給与額÷1カ月の所定労働時間=1時間の単価(円)
224,000円÷160時間=1,400円

残業代(1時間当たり)
1,400円×1.25=1,750円

従って、この月の残業代は以下の様にもとめられます。
1,750円×20時間=35,000円

(備考1)(*)の項目については企業により異なる為、就業規則をご確認ください。
(備考2)<参照>労働基準法 割増賃金編(出典:東京労働局)

控除

ここには、支給額から差し引かれる項目が記載されています。
支給額からはいろいろな控除がされている事が分かります。
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料、所得税、住民税などが
これにあたります。
こちらも少々複雑な計算方法がありますので、解説します。

厚生年金保険料・健康保険料は報酬月額をもとに、標準報酬月額を算出し、
保険料が決定されます。
その計算の際に使用するのが健康保険・厚生年金の保険料額表です

厚生年金保険

鈴木花子さんの報酬は以下の金額です。通勤手当は含めません。
基本給が224,000円なので、
この金額は上記の表の「210,000~230,000円」の15等級、
標準報酬220,000円に該当します。
この220,000円に9.150%を乗じた金額、20,130円が
花子さんの厚生年金保険料となります。

健康保険料

同様に保険料額表を基に計算していきます。
鈴木花子さんの健康保険料は18等級となり、220,000円に4.95%を乗じた金額、
10,890円が健康保険料となります。

介護保険料

介護保険料の控除対象者は40歳以上となります。
花子さんは22歳なので対象外となります。

雇用保険料

雇用保険料を計算する際には、税金や社会保険料などを控除する前の総支給額で、
労働の対価として事業主が労働者に支払うすべての賃金が対象となります。
<参照>雇用保険対象となる賃金(出典:厚生労働省)

鈴木花子さんの場合を例にとって計算してみます。
基本給224,000+通勤手当8,000円+残業代35,000=267,000円

この総支給額に雇用保険料率を乗じた金額が雇用保険料となります。
通勤手当も計算の対象となるところが、健康保険料などの計算と異なる点です。

267,000円×3/1,000=801円

所得税

所得税の計算は以下の様に行い、最後に源泉徴収税額表に照らし合わせて算出します。

支給額【①基本給+③残業代】―控除額【Ⓐ厚生年金+Ⓑ健康保険料+©介護保険料+Ⓓ雇用保険料】
(224,000円+35,000円)―(20,130円+10,890円+0円+801円)=227,179円

この金額は給与所得の源泉徴収額表(出典:国税庁)
「230,000~233,000円」の欄に該当します。

花子さんは扶養家族0人なので、所得税額は5,890円となります

住民税

住民税は前年の所得を元に、計算されます。
花子さんは新入社員で、前年まで所得がなかった為、住民税は発生しません。

振込支給額

この様に計算された支給額、控除額をもとに、振込支給額が決定されます。

花子さんの場合は、
支給額 267,000円―控除額 37,601円=229,399円
となるわけです。

まとめ

給与明細書の見方、いかがでしたか?

給料日に普段何気なく見ている給料明細にも、いろいろな社会の仕組みが
盛り込まれています。
ぜひ、この機会に給料明細を見てみると良いかもしれません。

Takeoffer会計事務所では給与計算手続きを含め、
事業経営に必要な幅広いアドバイスを行っております。
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