事業を開始して従業員を雇用した場合、毎月行わなければならないのが、給与計算です。
事業者は雇用契約で定められた給与を間違えなく計算し、期日通りに支給する責任があります。
そこで、今回は給与計算の基本や流れなど解説します。

給与計算とは

 

給与計算とは、従業員の給与支給額を計算する業務です。
具体的には、雇用契約や会社の諸規定に基づいて従業員の勤怠状況や手当などを計算して給与総支給額を求め、
そこから社会保険料や所得税等を差し引いて、最終的な手取額を計算します。
「給与計算」という言葉だけで聞くと簡単な事務作業のイメージがあるかもしれませんが、給与計算は支給額の計算だけにとどまらず、
税金や社会保険料の徴収や納付するまでの作業を行う大切な業務です。

給与計算のき・ほ・ん

給与計算は、勤怠、支給控除、の3つの要素で構成されています。
従業員への給与の支払額は大きく言うと、
「固定給与」「変動給与」から「控除額」を引いて算出します。
では、どのように算出するのか詳しく見ていきましょう。

給与体系の分類

給与体系は、会社によって違いはありますが、毎月決まった額で支給される『固定的給与』と
労働時間や出勤状況によって支給額が変わる『非固定的給与』に分けられます。
具体的には、次のようなものがあげられます。

 固定的給与 ・役員報酬
・基本給
・役職手当
・資格手当
・家族手当
・住宅手当 他
 非固定的給与 ・皆勤手当
・時間外労働手当
・休日手当
・深夜手当 他

控除の分類

給与から控除をできるものは、大きく分類すると『法定控除』と『協定控除』に分類されます。

・法定控除
健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料、所得税や住民税といった税金です。

・協定控除
法定控除以外の会社ごとに定める控除です。例えば、社宅使用料や財形貯蓄、従業員旅行の積立などです。

法定控除について…

◇社会保険料には、大きく分けて2種類の控除があります。

①健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上~)
この保険料は会社と従業員が半折ずつ負担することになっています。
そのため、給与から従業員負担分額を控除し、会社負担分と合わせて年金事務所に支払います。
保険料は毎月の従業員への報酬『標準報酬月額』より決定します。
また、会社は厚生年金保険料の納付時に、児童手当拠出金を納めなければなりません。
納付方法は口座振替、金融機関の窓口で納付、電子納付(ペイジー)で納めることができます。
《詳しくは日本年金機構HP:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150515-01.html

②雇用保険(労働保険)
この保険料は会社が6割、従業員が4割を負担することになっています。
給与から従業員負担分の控除し、労働基準監督署に納付します。
納付に関しては、雇用保険料と労災保険料を併せて、1年分の保険料を概算し前払いすることになっています。
そのため、翌年には前払で納付した保険料を精算する手続きがあり、6月1日~7月10日までに、申告書の提出・納付することになっています。

※労災保険料は全額会社負担となるので、従業員からは控除されません。
《労働保険HP:https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/daijin/hoken/980916_3.htm

◇税金には、大きく分けて2種類の控除があります。

①所得税とは?
所得がある人に課される国税です。
毎月の給与から所得税を引き、会社から税務署へ所得税を納付します。
また、源泉徴収税額は扶養家族によって変わります。

②住民税とは?
都道府県民税と市町村民税を合わせたものです。
会社から市町村民税を納付する場合は特別徴収といい、給与から引いて納付します。

 

給与計算の主な流れ

毎月の給料計算の流れをまとめると下記の通りになります。

1.勤怠管理表の作成
従業員ごとに出勤日数、勤務時間、残業時間、欠勤・遅刻・早退等の勤怠を集計します。

2.人事データの確認
基本給や各種手当、また通勤交通費等の金額の確認をします。

3.不就労による控除額の計算
集計した勤怠を元に、欠勤・遅刻・早退等による控除額を算出します。

4.総支給額を決定
上記の情報をもとに、その月の総支給額が確定します。

5.控除額の計算
社会保険料や所得税や会社独自の天引き額を計算後、すべての控除額を算出します。

6.差引支給額の計算
それぞれの項目で算出した額を次の式に当てはめると、差引支給額を求めることができます。『総額支給-控除額=差引支給額』

7.給与明細書・賃金台帳の作成
給与明細書は、従業員に渡すものですが、会社で保管すべき、賃金台帳の作成も忘れないようにしましょう。

8.各従業員への振込手続き、給与明細の配布
給与明細については、WEB上での配布も認められています。

9.社会保険料、源泉所得税の納付

 

源泉所得税の納付方法

 

源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納付期限となっています。
しかし、給与の支給人員が常に10人未満の源泉徴収義務者は、『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』を提出した場合、
年に2回にまとめて納付できるという特例制度があります。納付の期日は、下記となります。
・1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税…7月10日
・7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした所得税…翌年1月20日

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書』は下記よりダウンロード可能です。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/201601h268.pdf
なお、提出期限は特に定められておらず、
申請書を提出した日の翌月に支払う給与等の所得税から適用となります。

例えば、6月15日に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認されると、
7月中に支払った給与等の所得税から特例の対象となりますので、8月納付分からは翌年の1月20日までに納付すればよいことになります。
※注意:納付期限を過ぎてしまうと不納付加算税や延滞税が発生するため、必ず期限内に収めるようにしましょう。

まとめ

給与計算の基本や主な流れなどをについてご紹介しました。
給与計算は毎月の業務の1つです。
給与計算を行うためにまずは基本をしっかりと理解し、行っていきましょう。
また、給与明細の見方についてはこちらのブログをご参照ください。
社会保険料ってなに?!源泉所得税ってなに?! 社会人が知っておきたい給与明細の見方を解説します。
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