3月18日に「融資期間も融資金額も余裕を持った借入が大事!  ~新型コロナの融資対応について~」というブログを執筆してから、東京オリンピックの延期が決まる等、新型コロナウイルスの影響はより拡大しつつあります。3月21日には日本商工会議所より、新型コロナウイルスによる経営への影響は92.1%の企業で既に生じていることが発表されました。[i]

[i] 日本商工会議所「新型コロナウイルス感染拡大に伴う中小・小規模事業者への影響および政府への要望」

また、外出自粛要請に伴い更なる景気の悪化が想定され、中小企業の多くに影響が出始めています。

行政による支援策は打ち出されているものの、支援策が矢継ぎ早に打ち出され、中小企業、小規模事業者の方々の中には何から手をつけていいのか、そもそもどんな支援策が用意されているのか、日々の事業活動に追われ支援策についての情報収集等ままならない状況もあるかと思います。

今回は新型コロナウイルスによりどんな影響が生じているのか、また、当該影響に対する行政等の支援策について、より具体的な支援策にフォーカスする形でまとめました。

中小企業の方々、小規模事業者の方々等、新型コロナウイルスによって影響をうけた方々にとっての手助けになれば幸いです。

【新型コロナウイルスによりどんな影響を受けるの?】

下記は、新型コロナウイルスに関する商工会議所の経営相談対応窓口に寄せられた相談内容です。資金繰り関係、雇用関係で影響を受けたことに伴う相談が大半を占めていることが分かります。また、飲食業を中心に幅広い業種業態に影響が出ていることが伺えます。

【出典】日本商工会議所「新型コロナウイルス感染拡大に伴う中小・小規模事業者への影響および政府への要望」

 

新型コロナウイルスによる影響(リスク)の具体例は下記の様な形です。

まずは、自社に今後、どのような影響が出るかについて、しっかり考察することが何よりも大切です!!

リスク例 詳細
①資金不足 営業や生産活動、イベント中止に伴う受注・売上減による資金不足リスク
②雇用維持 資金不足による社員、派遣社員の雇用維持困難リスク
③職場環境の変化 等 外出自粛、休校等に伴う在宅勤務(テレワーク)導入に関するリスク 等

 

では、このようなリスクに対応する支援策として、どのようなものがあるのでしょうか。
4月2日付で経済産業省より公表された「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」をもとに具体例をいくつか挙げます。なお、下記に記載の図表はすべて当該パンフレットからの引用です。

【①資金繰り支援(融資、納税猶予等~実質無利子・無担保融資あり!~】

経済産業省「新型コロナウイルス感染症で資金繰りにご不安を感じている事業者の皆様へ」に大枠の記載があります。

《融資(公庫融資と制度融資)、信用保証について》

行政は信用保証制度の一環、融資制度の両面から資金繰り支援を打ち出しています。

(1)融資(公庫融資及び制度融資)

一般事業者、生活衛生関係の事業者(飲食業、販売業、サービス業(利用、美容、旅館、興行等))に分けて3段階での支援を実施しています。

・一般事業者

  • 生活衛生関係の事業者向け融資制度

これらの融資の特徴としては上記表内の貸付と、特別利子補給制度を併用することで、金利負担が実質ゼロになる点です。

また、無担保で借入ができる点、さらに新型コロナウイルス感染症特別貸付、危機対応融資、及び生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付では最大5年間の元本返済が不要(いわゆる据え置き)となりますので、短期的・中長期的に企業経営を支える支援策となっています。

なお、まずは公庫融資を検討し、追加で資金が不足する際は制度融資(保証協会付融資:本店所在地近辺の信用金庫や地方銀行を窓口にした融資)を検討すると良いでしょう。

公庫融資、制度融資(保証協会付融資)については、弊事務所のブログ「融資期間も融資金額も余裕を持った借入が大事!  ~新型コロナの融資対応について~」に詳細を記載しておりますので、ご参照ください。

なお、融資自体の申込みが行い易くなっている状況ではありますが、
過去の決算申告状況や直近の事業状況が融資判断要因になることに変わりはなく、
お申し込み者全員が融資対象となる訳ではないことに留意が必要です。

【各種融資問い合わせ先】については上記表をご参照下さい。
現在でも金融機関の窓口は相当に混雑する状況となっています。
とにかく早め早めに行動する様にして下さい。

(2)信用保証

信用保証制度では下記の制度を設け、一般保証枠とは別に保証枠を設けております。信用保証協会を利用することにより融資枠の拡大を図ること等が可能です。

※信用保証制度について詳細はこちらをご参照ください。

【問い合わせ先】最寄りの信用保証協会
※経済産業省HP特設ページ内の「最寄りの信用保証協会」よりご確認いただけます。

 

《厚生年金保険料、納税の猶予について》

融資制度等のほかに資金繰りへの短期的な対応策として、厚生年金保険料等の猶予制度があります。

(1)厚生年金保険料等の猶予制度

下記の「換価(いわゆる差押えと換金)の猶予」または「納付の猶予」が認められると、猶予された金額を猶予期間中に各月に分割して納付、財産の差押えや換価(売却等現金化)が猶予、猶予期間中の延滞金が一部免除されます。

・換価(いわゆる差押えと換金)の猶予:
一定の要件に該当するときは、納付すべき保険料等の納期限から6ヶ月以内に管轄の年金事務所へ申請することにより、換価の猶予が認められる場合があります。

・納付の猶予:
一定の要件に該当し、厚生年金保険料等を一時的に納付することが困難な時は、管轄の年金事務所を経由して地方(支)局長へ申請することにより、納付の猶予が認められる場合があります。

猶予の要件、問い合わせ先については「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」の33ページをご覧ください。

毎月の社会保険料は会社にとって大きな支出です。納付猶予を受ける状況の可否について、融資と併せて検討すると良いでしょう。

(2)税務申告・納付期限の延長について

国税の納付についても猶予制度が設けられており、猶予が認められた場合、原則1年間猶予が認められ(状況に応じて更に1年間猶予される可能性あり)、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除されます。要件、問い合わせ先については「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」の36ページをご覧ください。

また、地方税についても経済産業省から各地方公共団体に猶予等の対応に関する要請がでています。地方税徴収の猶予等に関しましてはお住まいの都道府県、市区町村のHP等をご覧ください。

なお、具体的な運用手続きについては、今後の行列連絡を注視して下さい。

 

【②雇用維持支援~雇用調整助成金・有給休暇取得支援助成金について~】

雇用維持のための政策もすでに行政より打ち出されています。なお、当該助成金は、「労働者災害補償保険の適用事業主(労災保険)」が対象であるため、従業員を雇用しておらず労災保険の適用事業者でない会社(役員のみの会社)は対象外であることに注意が必要です。

(1)雇用調整助成金について

行政は雇用維持の支援策として、雇用調整助成金の特例措置を設けています。

雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

4月1日から、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者に対しては特例措置が拡大されています。休業手当等についての事業者の賃金負担相当額×助成率を助成金として受け取ることができます。※助成金額は対象の従業員一人あたり8330円までとなりますのでご留意ください。また、休業手当に対する助成金であり、給与額に対する助成金ではない点、ご留意ください。

 

(2)有給休暇取得支援助成金(労働者に休暇を取得させた事業者向け)

新型コロナウイルス感染症に関する対応として、3月2日頃から一斉休校が始まりました。このような小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金が創設されています(支給額上限は日額8,330円)。

 

また、委託を受けて個人で仕事をする方(業務委託契約等に基づく業務遂行等)に対しても1日あたり4,100円を定額で支給する支援策も準備されています。
詳細は上記表内の【お問い合わせ先】をご覧ください。

その他、休業や労働時間変更への対応について厚生労働省がQ&A形式でまとめらているので、雇用者の多い会社は目を通す様にして下さい。

厚生労働省HP新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

 

【③テレワーク導入にあたって~導入支援、助成金について~】

感染リスク回避のため、外出自粛要請がでていることからテレワーク導入が急がれています。こちらについても行政はテレワーク導入支援策、及び助成金を設けています。

《テレワーク導入支援》

・テレワーク導入支援策(無料で受けることが出来ます。)

テレワーク導入支援として、総務省はテレワークの知見、ノウハウ等を有する専門家が無料で、テレワークの導入に関するアドバイス等を実施しています。詳細は株式会社NTTデータ経営研究所の総務省令和2年度 テレワークマネージャー相談事業HPをご覧ください。

《テレワーク導入支援に関する助成金》

(1)コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース

従来から厚生労働省の制度として働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)がありましたが、新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースが創設され、令和2年分の受付が既に始まっています。

当該制度は、対象となる中小企業事業者に1企業当たりの上限額を100万円として、支給対象となる取組の実施に要した経費の1/2を補助するというものです。

なお、こちらも「労働者災害補償保険の適用事業主(労災保険)」が対象であるため、従業員を雇用しておらず労災保険の適用事業者でない会社(役員のみの会社)は対象外であることに注意が必要です。

制度詳細はこちらの厚生労働省HPをご覧ください。

また、都内に本社または事業所を置く中小企業等で都が推奨している「2020TDM推進プロジェクト」に参加している企業では公益財団法人 東京しごと財団の事業継続緊急対策(テレワーク)助成金(上限250万円、助成率10/10)を受けられる可能性もあるので、併せて検討すると良いでしょう。

詳細は東京しごと財団HPをご覧ください。

 

(2)IT導入補助金2020(二次公募分)

事業継続性確保の観点から、ITツール導入による業務効率化等を支援するため、中小企業・小規模事業者を対象に補助額30~450万円、補助率1/2の補助を一般社団法人 サービスデザイン推進協議会より受けられる制度があります。

こちらは、5月からベンダー・ツール登録を開始し、6月から補助事業者の公募開始予定となっていますので詳細は一般社団法人 サービスデザイン推進協議会HPをご覧ください。

 

なお、テレワーク導入に関しては、厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトにて企業の取り組み事例等が載っていますので、併せて活用して下さい。

【まとめ】

当初は直接的な影響が少なかった事業者にも玉突きで影響が出て始めている状況です。
上記にも記載の通り、まずは、自社に想定されるリスクを想定し、早め早めの対策を心がけ、行政のサポートを上手く活用する様にして下さい。

少しでも多くの事業者様と安心安全にこの状況を乗り越えていきたいと考えております。
Takeoffer会計事務所は税務に捉われない業務全般のサポートを実施しています。
何かありましたら、お気軽にご相談ください。

なお、上記は4月2日時点での政策をまとめたものとなります。
各種制度については事後的に発表されるものも含め、
経営産業省のサイトで特設のページを設けておりますので継続的に確認する様にして下さい。
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