法人契約による生命保険を用いた節税策は、税制改正により縮小されたものの、
要件を満たすことで保険料の一部を法人の経費として計上することが可能です。
目次
【生命保険にはどんな種類があるの?】
生命保険は大きく分けて、定期保険、養老保険、終身保険の3つがあります。
それぞれ以下の特徴があります。
保険期間 | 満期時 | 解約時 | 貯蓄性 | 保険金額 | |
定期保険 | 有期 | 支払なし | 解約返戻金はあるが、
払込保険料と比べ少額 |
低 | 低 |
養老保険 | 有期 | 満期保険金 (死亡時と同額) |
払込保険料と同程度の
解約返戻金あり 通常、保険期間が終了するころに |
高 | 高 |
終身保険 | 無期 | 該当なし | 払込保険料と同程度の
解約返戻金あり 通常、保険料支払期間が終了するころに |
高 | 高 |
【保険料を法人の経費として計上できると、どんなメリットがあるの?】
支払保険料を法人の経費とすることで、保険料支払時に利益が圧縮されるため課税の繰り延べができます。
また、解約返戻金が発生するため、解約返戻金を役員や従業員の退職金とすることで返戻金による益金と退職金による損金を相殺できます。
法人契約をして支払保険料を経費としたのみでは、単なる課税の繰り延べとなり将来的に支払う税額に変動がなくなってしまうため、あらかじめ出口戦略を計画し返戻金による益金と支出による損金を相殺し税金の支払による資金の流出を防ぐことが重要です。
【どのような保険が節税に有用なの?】
しかし、どの保険でも支払保険料を損金計上できるわけではありません。また、支払保険料の全額を損金計上することもできません。
では、どのような保険であれば節税に有用なのでしょうか。
昨年の税制改正により、定期保険の損金割合=支払保険料を経費にできる割合が大きく制限されました。これにより定期保険の節税効果はほとんど失われました。
2020年現在、節税効果のある保険として注目されているのは福利厚生目的で加入する養老保険です。
なお、終身保険は被保険者が亡くなるまで続く保険です。そのため、必ず死亡保険金がもらえることから資産の意味合いが強く、保険料の全額が資産計上され損金には計上されませんので、節税には向きません。
【養老保険を利用した節税】
養老保険とは「一定期間の死亡保障と将来に向けた貯蓄機能をうまく兼ね備えた保険」のことで、貯蓄性の高い積立型の保険です。貯蓄性が高いため、本来法人で加入した場合は保険料を全額資産計上する保険商品になりますが「従業員の福利厚生」という名目のもとに加入することで保険料の1/2を法人側で損金処理することが可能です。
残りの1/2は保険積立金として資産計上されることになります。
解約時、満期時は返戻金を法人が受領することになり所得額が増えますが、多額の設備投資や退職等と解約時・満期時のタイミングを合わせることで税金の支払による資金の流出を防ぐことができます。
<養老保険を福利厚生とする要件>
上記のとおり養老保険の保険料を損金に計上するには、「従業員の福利厚生」という名目で加入する必要があります。客観的に福利厚生名目と証明するためには以下の要件を満たす必要があります。
✓福利厚生規程を整備する
✓契約者は法人、満期保険料受取人を法人、死亡保険金受取人を被保険者の遺族に設定
※死亡保険金及び満期時保険金の受取人を両方法人にした場合は全額資産計上、被保険者又はその遺族にした場合は給与となります。
✓被保険者として、役員・従業員を普遍的に加入させる
※福利厚生目的であることが保険料の1/2を損金計上する要件であるため、役員や特定の使用人のみを被保険者としている場合には、その役員、使用人に対する給与となります。
参考:国税庁HP
【法人保険のメリット】
節税以外にも法人で加入する保険は、下記のようなメリットがあります。
✓貯蓄効果
会社の資金の一部を保険会社に預けておき、一定期間後に解約返戻金として受け取ることができるため、預貯金同様に貯蓄効果があるといわれています。ただし、預貯金と異なり元本保証ではないという点にご注意ください。
✓保障
上記のように元本保証はありませんが、保障がついているため有事の際は保険金として支払った保険料の何倍もの金額を受け取ることができます。
✓保険料を経費にできる
法人で上記のような養老保険等に加入すると、保険料を経費として計上できるため、その期の利益が減ることになります。
一方、個人の場合は、確定申告時に所得控除=所得額から控除できる制度として生命保険料控除という制度があります。しかし、控除額は所得税で最大12万円、住民税で最大8.4万円の控除があるのみです。
✓保険金支払い額での資産計上となり時価評価が不要となる
法人で余剰資金を株式投資にまわしている場合には、保有している株式を決算時毎に時価評価し、含み益に対しては課税されます。
一方、保険積立金の場合、株式投資と同様に金融商品としての性質がある一方で、多種多様な保険契約が存在する上、保険料の中の保険料部分と積立金部分の区部計算が困難であるという背景から、期末時価評価は不要とされています。
そのため、従業金の福利厚生目的としての法人保険は通常、一定期間を経過すると含み益を抱えた状態になりますが、時価評価は不要なため、当該含み益について契約期間中に時価評価=含み益に対して課税されることはありません。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
今回は「法人化による税務メリット~法人保険編~」として保険をつかった節税について、まとめてみました。
法人保険にはその法人の状況に応じた保険種類、保険料受取時の出口戦略が非常に重要になります。
Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。
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