所得税には源泉徴収という税金の前払いのような制度があり、源泉徴収された金額と確定申告において計算された年間の所得税額の金額の多寡により、所得税が還付されたり納付となったりします。

今回は一般的にどのような場合には納付が必要になることが多く、還付となるのはどのような場合があるのかを説明してみたいと思います。

源泉徴収とは?

源泉徴収とは、給与や一定の報酬などについて、その支払者が支払の際に本人から所得税を預かって代理で国に納付する制度です。

例えば一般的なサラリーマンの場合、会社から給与をもらう際に源泉所得税が差し引かれます。会社は本人に代わり、預かった源泉所得税をまとめて税務署に納付しています。この源泉徴収される所得税の金額は、月額での給与がこの程度の金額であれば年間での所得はこのくらいになるであろうという前提で計算された、暫定の金額です。したがって、所得が確定した後に、必ず年間での所得税の金額を計算し直して源泉徴収された金額と精算する必要があります。サラリーマンの場合は会社で年末調整を行うことにより、この年間の所得税の精算を行うことができます。

 

確定申告とは?

一方で、個人事業を行っている人、2か所以上から給与をもらっている人などは、確定申告が必要になります。原稿料など一定の報酬については源泉徴収の対象になるものもありますし、2か所から給与をもらっている場合にもそれぞれ源泉徴収は行われますが、確定申告を行うことによって年間の所得税の精算を行う必要があるのです。

 

年末調整と確定申告の違いについては、こちらで詳しく説明しておりますのでご参照ください。

Takeofferブログ:ご存知ですか? ~年末調整と確定申告の違い~

https://takeoffer-ac.com/?p=2371
 

確定申告で納付になるケース

確定申告で一般的に納税となるケースを見ていきましょう。

個人事業や不動産賃貸による所得など、源泉徴収が行われていない所得がある場合

あらかじめ納付している源泉所得税がありませんので、確定申告で計算された所得税の金額をそのまま納税することになります。(このような方については、年間の所得税が15万円を超える場合には前年の所得税の金額を基に計算された予定納税を行う必要があります。予定納税は、本人が直接国に支払う税金の前払いです。予定納税を行っている場合は、その金額と確定申告において計算された所得税額の多寡により、納付になるか還付になるかが決まります。)

 

2か所以上から給与をもらっている場合

2か所以上から給与をもらっている場合で、2か所目からの給与が乙欄源泉(注1)となっていないなど、源泉徴収されている金額が少ない場合には納税になります。

(注1)会社から給与をもらう場合には、通常「扶養控除等申告書」を毎年会社に提出しているかと思います。この「扶養控除等申告書」は1か所にしか提出することができず、この申告書を提出することにより甲欄源泉という低い金額で源泉徴収が行われることになります。2か所目からの給与は乙欄源泉といって甲欄より高い税率で源泉徴収される仕組みになっています。

 

確定申告で還付になるケース

次に確定申告で一般的に還付となるケースを見ていきましょう。

医療費控除や寄付金控除など、確定申告でしか適用を受けられない控除がある場合

一定額以上の医療費がかかった場合に受けられる医療費控除(セルフメディケーション税制とどちらかを選択)や寄付金控除(注2)は確定申告でしか控除を受けることができません。会社で年末調整を行った後に、これらの控除を受けるために確定申告した場合には、所得税は還付となります。

(注2)ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用している場合には、ふるさと納税の寄付金控除の適用を受ける場合であっても確定申告の必要はありません。

 

住宅ローン控除初年度の場合

住宅ローン控除の適用初年度は、必ず確定申告を行う必要があります。年末調整を行った後、確定申告で住宅ローン控除を受けることにより、所得税が還付となります。2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。

 

2か所以上から給与をもらっている場合

2か所以上から給与をもらっている場合で、正しく源泉徴収が行われている場合には、一般的に還付となるケースが多いです。

 

給与所得がある方で、事業所得や不動産所得が赤字になってしまった場合

個人事業での所得がある場合は、先ほど述べたように通常は確定申告により納税が発生します。これらの所得がたまたま赤字となってしまった場合で、その他に給与所得がある方の場合には、給与所得と事業所得の赤字が損益通算されることになりますので、確定申告により給与所得から源泉徴収されていた所得税が還付されることになります。

例えば1,500万円の給与所得がある方で、不動産所得が300万円の赤字となってしまった場合を考えてみましょう。源泉徴収は1,500万円の所得について行われ納税が終了していますが、不動産所得の赤字300万円は給与所得と相殺されることになりますので、年間の所得税は差額の1,200万円を基に計算されることになります。結果として、300万円にかかる所得税は納め過ぎになっていたことになりますので、この部分の源泉徴収分が確定申告により還付されます。

※事業所得しか所得がない方が、前年まで利益が出て納税を行っていたが今年は赤字になってしまった場合には、別途純損失の繰戻し還付の請求を行うことにより、前年に納付していた税金のうち今年の赤字に相当する部分の還付を受けることができます。

 

まとめ

所得税は給与所得、事業所得、譲渡所得など所得の種類も多く、源泉徴収や分離課税など様々な制度があるのでとても複雑ですね。

Takeoffer会計事務所では、所得税の確定申告書の作成から節税対策のアドバイスなど、個人の方のサポートも幅広く行っております。

何かありましたらお気軽にご相談ください。