会社設立にあたって、最も多くいただく質問が「株式会社と合同会社、どちらがいいですか?」というご質問です。
結論からお伝えしますと、弊社では「株式会社」をお勧めしております。
株式会社と合同会社の相違点を整理し、自身にとってどちらの法人形態がいいのか選択しましょう!
目次
会社形態って何があるの?
会社法上、会社とは以下の4種を示します。
・株式会社
・合同会社
・合名会社
・合資会社
この4種は、「有限責任」と「無限責任」に分けられます。
「有限責任」とは、文字通り責任の範囲が限定的であり、出資者の責任は出資額の範囲内に限定されるというものです。
一方、「無限責任」は文字通り責任の範囲に限定がなく、出資額を超えて無限に責任を負わなければなりません。
たとえば、会社が銀行から1億円を借り入れたまま会社が返済できなかった場合、
無限責任の場合は出資金が1,000万円でも、出資者は会社にかわり1億円を返済する義務を負います。
一方、有限責任であれば出資者は出資額を限度に責任を負うのみで済みます。
事業を行うにあたり、リスクはつきものです。
無限責任を負っていると、事業運営に大きな支障をきたす可能性があります。
そのため、有限責任である株式会社か合同会社を選択されることが多いです。
また、「株式会社」と「持分会社」という区分でも分けられます。
「株式会社」は所有と経営の分離がなされますので、出資者と経営者が別人でも問題ありません。
一方、「持分会社」の場合は、所有と経営が一体であり、出資者=社員となります。
何が違うの?
では、株式会社と合同会社、設立手続や設立後はどのような違いがあるのでしょうか?
違いを表にすると以下の通りです。
株式会社 | 合同会社 | |
設立費用 | 高い(約20万円~) | 安い(約6万円~) |
定款の認証 | 必要 | 不要 |
税務面の取り扱い | 相違なし | 相違なし |
社会的信用度 | 高い | 低い |
役員の任期 | 最長10年 | 任期なし |
上場 | 可能 | できない |
利益配分 | 持株割合(出資比率)に応じる | 定款で自由に規定 |
議決権の数 | 株式数に応じる | 株式数によらず、1人1票 |
ポイントは「株式会社」か「持分会社」かの違いです。
「株式会社」は前述の通り、所有と経営の分離がなされますので、必ずしも代表者=株主ではありません。
株(会社の所有権)は第三者が持っていて、経営を行うのは代表者です。
そのため、株主を保護するために会社法で様々なことが要求され、
定款の認証や、会社規模が大きい(資本金5億円以上or負債200億円以上)場合は会社法監査が要求されます。
一方、「持分会社」は所有と経営が分離していないため、社員=出資者です。
出資者自らが経営を行いますので、株式会社よりも要求事項が少ないです。
そのため、定款の認証は要求されず、規模を問わず会社法監査も要求されません。
※よく誤解されますが、税務面の取り扱いは株式会社も合同会社も一緒です!
株式会社のメリット・デメリットは?
<メリット>
・社会的信用がある
・上場可能
・株数に応じた議決権のため、意思決定が対立した場合でも収拾がつく
<デメリット>
・設立費用が合同会社に比較して15万円程高く、定款認証も必要
・決算公告義務がある※
・会社規模によっては監査役や会計監査が必須
・役員に任期がある(最長10年)
・出資割合に応じた利益分配
※実務上、大会社でない小規模企業で決算公告を行っている会社は少ないです。
⇒株式会社であることの一番大きなメリットは、社会的信用面となります。
知名度の高い株式会社に比べ、合同会社は知名度が低く、後述の通り犯罪に使われることも多く、
大企業と取引を行う際や、銀行で融資を受ける際には「合同会社とした理由」を聞かれこととなり、
設立後の説明コストが発生する形となります。
また、仮に上場(IPO)を目指す際にも、合同会社のままでは上場することが出来ず、株式会社への組織変更(別途登記費用が発生)が必要となります。
デメリットとして、会社規模が大きい(資本金5億円以上or負債200億円以上)の場合は会社法監査が求められます。
会社規模が大きいほど、株主や債権者といった利害関係者が増えるためです。
ただし、設立初期や会社の事業拡大を見据えていない場合には当該デメリットはあまり気にしなくていいでしょう。
合同会社のメリット・デメリットは?
一方、合同会社のメリット・デメリットは下記の通りです。
<メリット>
・設立費用が安く、認証手続
・合同会社は出資金の額にかかわらず、会計監査不要
・決算公告は不要
・出資額によらない利益配分が可能
<デメリット>
・株式会社に比べ、社会的信用が低い
・簡単に低額で設立できるため、犯罪に使われやすい
・取引先や銀行に、「なぜ合同会社なのか」を聞かれるため説明コストが高い
・議決権の数は1人1票のため、意思決定が対立した場合に収拾がつかない
⇒大きい会社と一緒に事業を行うと、出資比率が9:1であったとしても、定款により利益配分を1:1とすることが可能です。
そのような事業を構想される場合は合同会社が向いているといえます。
一方で議決権は出資者1人に対し1票です。
意見の対立が生じた場合、多く出資しているほうの意思が通る株式会社とは異なり、収拾がつかなくなる可能性があります。
Google、Apple、Facebook、Amazonのような外資系日本法人が合同会社なのはなぜ?
とはいえ、合同会社の知名度も最近増加してきました。
Google等の有名な外資系日本法人が合同会社を選択しているためです。
では、なぜこれらの会社は合同会社を選択しているのでしょうか。
①GAFAは既に社会的知名度・信用力があるため合同会社でも周囲は気にしない
②会計監査人監査が不要
③容易で迅速な意思決定が可能
①前述の通り、合同会社は株式会社に比べ信用力の面で劣ります。
一方、GAFAは既に社会的知名度・信用力が高いため、当該デメリットの影響は殆ど受けないでしょう。
②前述の通り、株式会社の場合は資本金5億円以上or負債200億円以上の規模になると公認会計士や監査法人による監査が要求されます。
会計監査は費用も多額(数千万円~数億円)となり、また、会計監査のために多くの人手が必要となります。
合同会社の場合は会社規模によらず、会計監査人の設置義務がないためGAFA等の規模の大きい会社であっても、会計監査人監査は義務付けられません。
③所有と経営が一体となった運営がされるため、会社法上において株主総会の開催といったプロセスを求められず、容易で迅速な意思決定が可能です。
今から会社を設立しようとされている方は、社名に知名度がなく、資本金や負債の規模もこれほど大きくない場合が殆どだと思いますので、
②の費用は発生せず、①の信用力が劣るデメリットと、設立費用のバランスを見て会社形態を選択しましょう。
なお、③の意思決定についても、代表者が株式の過半数を有する場合には、株式会社においても合同会社同様の迅速な意思決定が可能です。
GAFAが合同会社だからといって、合同会社を選択することはおすすめしません。
まとめ
会社の形態を選択するポイントは、「将来会社をどうしていきたいか?」もポイントになります。
上場を考えている場合には株式会社一択ですし、他社との取引や融資を受ける場合は信用力がある株式会社をお勧めします。
特に、代表者が100%出資して1人会社の場合や中小規模の場合は、
株式会社であることによる配当分配(出資率に応じた利益配分)となるデメリットは発生せず、
設立後の費用面はほぼ同一となるので、株式会社を強く推奨しています。
(株式会社も合同会社も、税務面の取り扱いは同一です!)
一方、資産管理会社のような、他社との取引が殆どないような会社であれば合同会社でもデメリットは殆どありません。
「どんな事業を行うのか」
「将来会社をどうしていきたいか」
を考えながら、会社形態を選択しましょう。
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