令和2年から所得税の基礎控除が改正され、いままでの38万円から48万円(*1)に増額されました。
基礎控除は所得控除の一種ですが、基礎控除が10万円増額されたことにより所得税額はどのように変わるのでしょうか?
(*1)年間の所得金額が2,400万円以下の方
一方で住宅ローン控除は、令和5年取得分から令和6年~令和7年取得分へと減額されています。
住宅ローン控除は税額控除の一種ですが、先ほどの所得控除とはどう違うのでしょうか?
今回は所得控除、税額控除とは何なのか、両者の違いについて、所得税率の考え方も含めて解説していきます。
所得控除とは?
所得控除は、課税所得からマイナスすることができる項目です。所得控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など、特定の支出がある場合に控除ができるものと、配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、自分や家族の状況によって控除ができるものがあります。
例えば事業所得が500万円あるAさんが健康保険料、国民年金を30万円支払い、奥さんが専業主婦の場合、Aさんの課税所得は
となります。この課税所得に一定の税率を掛けることで、Aさんの所得税の金額が計算されます。
この「一定の税率」については、後半でご説明したいと思いますが、計算の結果Aさんの所得税の金額は約34万円と計算されます。
税額控除とは?
税額控除とは、課税所得に一定の税率を掛けて計算された所得税額からマイナスすることができる項目です。
税額控除には、配当控除や外国税額控除など、2重になってしまう税金を調整するためのものと、住宅ローン控除や試験研究費の税額控除など、政策目的で税金面でのインセンティブを与えるために設けられているものがあります。
日本政府が国民にもっと住宅を購入してほしい、事業を行っている人に積極的に新技術の研究を行ってほしいなどと考えていて、その目的を達成するために税金が安くなる制度を設けているのです。
先ほどのAさんが住宅ローンを組んでいて、住宅ローン控除の金額が10万円だとします。
所得税34万円から10万円をマイナスすることができますので、最終的なAさんの所得税の金額は24万円になります。
所得控除と税額控除の違い
所得控除は税率を掛ける前の課税所得から控除されるのに対し、税額控除は課税所得に一定の税率を掛けて算出された税額から控除されるのが大きな違いです。
つまり、所得控除の場合にはその金額ⅹ所得税率が所得税の減少額であるのに対し、税額控除はその金額そのままが所得税の減少額となります。
先ほどのAさんの場合、一番初めにお話しした基礎控除が10万円増額されたことにより10万円x20%=2万円の所得税が少なくなったのですが、住宅ローン控除10万円は所得税をそのまま10万円少なくしています。
このような違いから、税額控除は(控除しきれないことが無ければ)所得額に関わらず効果は一定ですが、所得控除は所得が多い人の方が効果が大きいということになります。
所得税率の考え方
よく所得税の税率についてご質問があり、誤解されている方が多いので、ここで所得税率の考え方について説明したいと思います。
先ほどのAさんの例ですと、所得控除をマイナスした後の課税所得は384万円ですので、下記の速算表の上から3番目の「330万円超~695万円以下」のレンジになり、所得税の金額は384万円x税率20%-控除額427,500円=340,500円になります。
この時「所得が330万円を超えてしまうと税率が10%も上がってしまうから、所得は330万円以下に抑えた方がおトクですよね?」といった内容の質問される方がいらっしゃいます。
所得税は段階税率といって、所得の増加により階段のように税率がアップしていく仕組みになっており、Aさんの所得のうち20%の税率がかかるのは330万円を超えた54万円の部分のみなのです。
例えば課税所得が5,000万円のBさんと、900万円のCさんがいるとすると、Bさんの所得の最初の900万円にかかる税金はCさんと同じです。
Bさんの税率がCさんより高くなっていくのは、900万円を超える所得についてということになります。
所得税額速算表
課税所得 | 税率 | 控除額 |
~ 195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 ~ 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 ~ 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 ~ 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 ~ 1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円超 ~ 4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 ~ | 45% | 4,796,000円 |
まとめ
今回は所得控除と税額控除の違いについて解説しました。正しく違いを理解して、賢く節税したいですね!
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