既存の事業とは異なる領域で新規投資を行う場合等に、同じ会社で行うのではなく、新規事業を運営するための会社を新たに設立することがあります。
既存の会社とは事業内容が大きく異なる場合に、対外的に新規事業を別の法人として運営したい場合や、経営管理のために既存事業と分けて管理したい等の目的で会社を新規設立するケースが一般的です。
会計・税務面では新たに法人設立をすることで法人税を一部減額する効果がありますが、設立費用や経理作業の追加負担が生じるなどのデメリットもあるため、法人設立のメリットとデメリットを理解した上で判断を行う必要があります。
今回は、新規事業実施に伴う法人設立のメリット・デメリットについて解説します。
法人設立のメリット
法人税の節税
資本金1億円以下の中小法人の場合、課税所得が年800万円以下の場合は法人税率が15%となります(通常は23.2%)。そのため、既存事業の所得が年800万円を超える場合でも、新規事業を新たに設立した会社で行うことで、法人税の負担を低減できる可能できる可能性があります。
また、中小法人の場合は、交際費は年800万円まで損金に算入することが可能です。新たに法人を設立することで交際費の損金算入できる限度額が増えるため、交際費が多額に発生する事業の場合はメリットがあります。
事業リスクの分散
新規事業で発生する損失を既存事業に影響させたくない場合等にも法人設立はメリットがあります。新規事業で発生した損失を既存事業でカバーすることができなければ、最悪の場合、倒産してしまう可能性もあります。法人設立をすることで、このようなリスクを低減することが可能になります。また、新規事業により発生する赤字を既存事業から切り離すことができるので、銀行借入による資金調達の面でもメリットがあると考えられます。
外部への売却がしやすい
既存事業とは別の事業を別会社として保有する場合、資産の所有権や権利義務関係等の整理ができ、将来的に外部への売却を想定している場合は、株式の譲渡のみで行うことができます。新規事業を別会社ではなく既存の会社の一部門として行う場合は、外部へ事業譲渡を行う際に上記の整理を別途行う必要があり、実務的な負担が大きくなります。
法人設立のデメリット
追加費用の負担が発生
新規設立に伴う設立費用や法人登記に必要な手続、書類の準備等のコスト・業務の負担が生じます。また、税理士費用等のランニングコストの追加発生や許認可の再取得が必要になる場合もあります。また、事務所の設置が必要な場合は、新たに家賃や光熱費の負担が生じます。税金については、新たに法人設立を行うことで、法人税を節税できる点は法人設立のメリットに記載しておりますが、住民税の均等割は赤字であっても発生するため、この点は法人設立に伴う追加コストとして認識しておく必要があります。また、新規設立法人が法人税の節税目的であり、企業実態が伴わないと判断された場合には、租税回避行為とみなされる恐れもあります。企業の事業実態が適切であるかについて留意が必要です。
管理業務の負担が増大
複数の会社を経営することになるため、人材の配置や意思決定プロセスの整理、財務・税務関連業務にかかる時間等の面で、同一の会社で運営するよりも負担が増大します。特に外部との契約関係を複数の会社で行うことになるため、事務手続が煩雑になることが考えられます。
既存事業の所得と新規事業の損失の合算ができない
既存事業で所得が生じており、新規事業で欠損金が生じているケースでは、両者が別会社の場合は新規事業で生じた欠損金を既存事業で利用することができず、既存事業の節税ができなくなります。法人化せずに同一の会社であれば、新規事業で生じた損失によって既存事業の所得が減少し、法人税を低減できる可能性があるため、こちらは法人設立のデメリットの一つと考えられます。
まとめ
今回は法人設立のメリット・デメリットについて解説しました。
新規事業を始めるにあたり、別会社を設立するか否かは両者の内容を把握したうえで検討することが望ましいです。
以下は今回の要点になります。
法人設立のメリット | 法人設立のデメリット |
・法人税の節税 ・事業リスクの分散 ・外部への売却が容易 |
・追加費用の発生 ・管理業務の負担が増大 ・既存事業の所得との合算が不可 |
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