- 先日推奨した図書(GDPも純利益も悪徳で栄える: 「賢者の会計学」と「愚者の会計学」)に通じる記事です。
- 企業の評価や行動の仕方を変え、社会を良くする力を秘める会計が注目されている。
- ハーバード・ビジネス・スクールなどが主導する「インパクト加重会計」と呼ばれるもので、企業活動が生む利益以外の社会的な影響(インパクト)を見える化。
- KDDIは「我々のIoTビジネスは年間約5000億円の社会的価値を生んでいる」という試算を開示。エーザイは、無償提供する熱帯病治療薬の社会的価値を年1600億円と開示、など。
- また新たな会計として企業の行動変容を促す「付加価値分配計算書(Distribution Statement=DS)」も注目され始めている。
- 英オックスフォード大学で教鞭(きょうべん)をとったこともある早稲田大学のスズキトモ教授は、人口が伸びない日本では売上高を増やしにくくなり、利益最大化のために人件費などのコストを減らし人への投資がおろそかになったと分析。結果、企業による付加価値の分配が株主に偏ってしまい産業競争力が低下したとしている。これに対応するため、企業ごとに、株主資本に対する還元率を下げた際、従業員給与や役員報酬をどれだけ増やせるかを簡単に把握できるツールを開発。
- また海外では、独BMWは「付加価値計算書」を開示し、収益から原材料費や償却費などを引いた付加価値を従業員に41%、株主に11%配分したと示した。
- 欧米発の「株主利益の最大化」という考え方は、賃金の抑制とリスキリングなどの教育の遅れを招き、日本の人的資本の質的低下を招いた。
- 株主資本市場主義(ROE崇拝)は、産業の発展にブレーキをかけ、温暖化など地球環境の破壊を助長してきた。
- 社会と人間にとって、個々の企業の活動がいくら貢献しているのかを計測する会計手法は、今後ますます重要になると思われる。