中小法人を経営している方は、法人税率という言葉を聞いたことがあるかと思います。
では、法人税の実効税率という言葉はご存知でしょうか。
今回は、中小法人の法人税率と実効税率について説明するとともに、延滞税などのペナルティについて解説しようと思います!
※記載の税率は2024年9月現在の税率です。
【法人税率と実効税率の違い】
法人が稼いだ利益(所得)について、法人税がかかることは皆さんご存知かと思います。
では、法人にかかる税金は法人税だけでしょうか。実は、法人税だけではなく、以下の税金も同時に支払わなければいけません。
法人税率は、①法人税のみにかかる税率をいいます。資本金1億円以下の法人にかかる法人税率は以下の通りです。
それでは、法人税の実効税率とは何でしょうか。
①~⑥すべての税金を含めた税率をいい、「法定実効税率」と呼ばれています。つまり、法人が実質的に負担する税率のことをいいます。
③~⑥については法人の資本金の額や所得金額、所在する場所などによって税率が異なるため、法人ごとに実効税率は異なります。計算式は以下の通りです。
それでは実際に東京都の税率を使って、所得金額800万円超、資本金1億円以下の中小法人(標準税率適用)の法定実効税率を計算してみましょう。
※東京都の場合、下記HPに各税率が記載されています。<spanhttps://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/houjinji.html#ho_02_02
※法人税率と地方法人税率については、国税庁のHPを参照してください。
■法人税率:23.2%
■地方法人税率:10.3%
■地方住民税率:7.0%
■法人事業税率:7.0%
■特別法人事業税率:7.0%×37%=2.59%
東京都の中小法人の法定実効税率は33.58%となります。
以上より、法人が実質的に負担するべき納付額を計算する場合には、法人税率のみで計算するのではなく、法定実効税率を使って計算すると、より精緻な納税計画を立てることが可能です。
【ペナルティが発生した場合】
ここまで法人に係る税金について説明してきましたが、ここからは、万が一、税金が納付できなかった場合、どのようなペナルティが法人に対して発生するかについて説明したいと思います。
法人は、申告期限までに申告書の提出や納税を行わなかった場合、延滞税や加算税が課されます。また、税務調査によって、過去の申告内容について修正を求められた場合にも同様にペナルティが課されます。
※今回は国税(法人税・源泉所得税)について説明しますが、都道府県民税や市町村民税についても同様にペナルティが発生します。その場合、税務署からではなく、それぞれ管轄の県税事務所や市役所などからペナルティについての連絡がきます。
それではどのようなペナルティがあるかみていきましょう。
1.利子税
通常申告期限は決算日から2か月以内ですが、「申告期限延長届出書」を提出している場合には、申告期限が2か月より長くなります。ただし、納付期限は2か月以内と決まっているため、2か月以内に納税を行っていない場合、利子税が発生します。
たとえば、R6年5月31日が決算日の法人が、申告期限延長届出書を提出し、申告期限を1か月延長している場合、申告書の提出はR6年8月31日までに行えば問題ありません。しかし、納税はR6年7月31日までに行わなければ、利子税が発生することとなります。なお利子税は経費(損金)として計上できます。
2.延滞税
申告期限までに税金を納付することができなかった場合や、税務調査によって過去の申告内容について追加の納税が求められた場合などに、申告期限の翌日から実際に納付するまでの日数に応じた延滞税が発生します。
たとえば、R6年5月31日が申告期限の法人税について、資金繰りの都合などで実際に納付できたのがR6年7月31日だとします。その場合、R6年6月1日~R6年7月31日までの61日間に対して延滞税が発生します。
延滞税は、未納分の本税に下記の税率をかけて計算します。
■納付期限の翌日から2か月を経過する日までに納税した場合
年2.4%
■納付期限の翌日から2か月を経過した日以降
年8.7%
※いずれも令和6年現在
参考:https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
万が一申告期限までに税金を納付することができなかった場合でも、1日でも早く納税すると延滞税は安くなります。
また、悪質な租税回避行為によるペナルティの発生ではない場合、1年を超えての延滞税の発生は免除されます。つまり、たとえば税務調査が申告期限の3年後に行われ、その結果追加の納税が求められた場合にも、延滞税は1年分しかかからないということになります。
3.過少申告加算税
税務調査によって申告書を修正すると、延滞税のほかに過少申告加算税が発生します。
過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税金の10%相当額です。ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%となります。
新たに納める税金については、修正申告書を提出する日が納付期限となります。よって、申告書の提出と納税を同日に行わなかった場合(申告書の提出の翌日以降に納付した場合)は、3のほかにさらに延滞税が発生するため、注意が必要です。
なお、税務署の調査を受ける前に自ら申告の誤りに気付き、自主的に申告・納税を行えば過少申告加算税は発生しませんので、誤りに気付いた場合には、速やかに修正申告を行ってください。
※税務調査の事前通知の後に修正申告を自主的にした場合は、50万円までは5%、50万円を超
える部分は10%の割合を乗じた金額の過少申告加算税がかかります。
4.無申告加算税
申告期限までに申告を行わなかった場合、下記のケースを除き無申告加算税が課されます。
■申告期限後1か月以内に自主的に申告を行った場合
■災害の発生など正当な理由がある場合
■申告は期限後であったとしても、納税は申告期限までに完了している場合
■無申告加算税又は重加算税を課されたことがない場合で、かつ、無申告加算税の不適用制度の適用を受けていない場合
無申告加算税は、納税額によって税率が異なります。
納付すべき税額に対して50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%です。
なお、税務調査を受ける前に、自主的に期限後申告した場合は、納付すべき税額に対して50万円までの部分は10%、50万円を超える部分は15%、300万円を超える部分は25%です。
無申告を繰り返す納税者など悪質なケースが目立つことから、2024年1月より無申告の場合の罰則が厳しくなっています。
前年度及び前々年度の国税で、無申告加算税または無申告重加算税を課された納税者が、再び無申告行為を行った場合、無申告加算税または重加算税(無申告)がさらに10%加算されます。
5.重加算税
悪質な脱税行為と判断された場合(たとえば税金が安くなることを知っていて故意に売上計上をごまかしていた場合や、架空経費を計上していた場合、脱税目的での無申告だった場合など)に発生します。
重加算税は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の税率で課されます。
6.不納付加算税
毎月10日が納付期限(納期の特例を適用している場合には、7/10と1/20が納付期限)である源泉所得税の納税が遅れた場合に発生します。
不納付加算税の税率は、10%とされていますが、期限後納付であっても、自主的に納付をした場合は5%となります。
ただし、納税額×不納付加算税の税率が5,000円未満の場合や、納付する意思があると認められ、かつ法定の納期限から1ヶ月以内に納付した場合には不納付加算税は課されません。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
今回は、中小法人にかかる税金の考え方や、万が一納税ができなかった場合に追加で発生するペナルティについてまとめました。会社の利益に対してどれだけ税金がかかるかを常に把握し、納税計画と資金繰りの計画をうまく組み立てていただくことが大切かと思います。
Takeoffer会計事務所では、会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。
何かありましたらお気軽にご相談ください。