PwC、甘い見積もり露呈 中国、恒大の粉飾見逃しに厳罰
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241030&ng=DGKKZO84453120Z21C24A0EA1000
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241030&ng=DGKKZO84453120Z21C24A0EA1000
【コメント】
- 会計に関係する読者には見逃せない記事なので取り上げた。特に、会計士/税理士の資格を保有している方々には再認識することが重要なことは言うまでもありません。
- Pwcの不正案件は大規模で世界的な大問題に発展しているが、決してこれを他山の石としてはならない。顧客の大小に関わらず、実態と整合性がとれない極端な会計処理の容認は、結局は当該企業の将来への経営判断を誤らせることになる。上場企業の監査なら投資家への責任問題にも発展します。
- 会計処理は、将来業績の見積りが大きく影響するケースが少なくありません。当該企業の運営当事者ではない会計士/税理士が、業績見通しの判断をすることには困難を伴うと思われますが、最大限、当該業界や当該企業を学び、経営者と議論できる知見を身につけ、見積りの妥当性を判断し正しい会計処理を促す知見を養ってもらいたいと感じます。
【記事概要】
- 大手国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が中国で苦境に陥った。不動産大手、中国恒大集団による粉飾決算を「隠蔽、容認」したとして当局から厳しい処分を受けた。中国で過去最大の会計スキャンダルは、高度成長が覆い隠してきた監査のゆがみを映す。
- PwCは「単なる監査の失敗ではない。不正を一定程度は隠蔽、容認し、法の基盤を著しく損なった」。
- 恒大の中核事業会社は売上高を複数年にわたって水増ししていた。PwCは23年に辞任するまで監査を担い、粉飾額が合計5640億元というケタ違いの不正な決算を認め続けてきた。
- PwCが視察した開発案件の88%では記録と実態が一致せず、同社は更地さえ「引き渡し可能物件」と認めていた。
- PwCが重要顧客である恒大に意見した形跡はない。中国には会計事務所が乱立し「世界的に見ても顧客争奪戦が激しい」「営業では政府関係者らに食い込めるかが重要で、監査の独立性が損なわれるケースがある」。
- 「会計問題は経済が右肩上がりの時代が終わってから表面化するものだ」。日本の会計制度改革をリードしてきた青山学院大学の八田進二名誉教授はこう指摘する。
- 会計監査では現在価値や将来見込みを検討し、収益や損失を認識するかどうかを決める「見積もり」が重要だ。
- 経済の潮目が変わると、高成長によって正当化できたはずの甘い見積もりの矛盾を隠せなくなり、問題が表面化しやすくなる。
- 八田氏は「中国が会計監査の信頼向上に取り組まなければ、外資の投資を呼び込むうえで障壁になっている『中国リスク』に会計問題が加わりかねない」と指摘する。
- 恒大は外国人投資家が自由に投資できる香港に上場していた。会計監査の質の問題は香港市場にも新たな影を落としている。