企業版ふるさと納税の正式名称は「地方創生応援税制」で、個人版ふるさと納税と同じく、応援する地域に寄附を行うことによって地域の活性を図るとともに、寄附した側は寄附金額から自己負担額を控除した額の減税を行うことができる制度です。
ただし、返礼品等の経済的利益の受取が禁止されているほか、国が認定した地域再生計画に位置付けられる地方公共団体の地方創生プロジェクトを実施している地域のみが寄附対象、など様々な制限があります。

ここでは、企業版ふるさと納税のメリットや留意点とともに、企業にとってメリットがあるかを解説していきたいと思います。

個人版ふるさと納税との違い

個人で行うふるさと納税と企業版ふるさと納税の、主な違いは下記のとおりです。

税金上の取り扱い

税額控除について

寄附額の最大6割を当該企業の法人関係税から税額控除する仕組みです。これにより、通常の損金算入による軽減効果(特定寄附金に該当、寄附額の約3割)と合わせて、最大で寄附額の約9割が軽減され、実質的な企業の負担は約1割まで圧縮されます。
詳細は、内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトをご覧ください。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

内閣府(地方創生推進事務局)の企業版ふるさと納税のリーフレットには、以下の記載があります。ただし、税額控除には上限額があるため、常に企業の負担割合が約1割になるわけではありません。
自己負担割合が1割になるように寄附をする場合の寄附額の上限の目安金額は、課税対象所得のおよそ1%と考えられます。控除には条件があるため、年間所得が少なくとも1千万円以上の企業の場合、寄附をする恩恵を受けられると考えられます。

計算例

例えば、東京都の中小企業等(資本金1億円以下)で、寄付金を支払う前の年間所得金額が5,000万円の場合、企業版ふるさと納税をしない場合と企業版ふるさと納税をした場合で以下のような違いがあります。
※簡易的に実効税率33.58%で計算

【企業版ふるさと納税をしなかった場合】
納税額=5,000万円×33.58%=1,679万円

【50万円の企業版ふるさと納税をした場合】
納税額=(5,000-50万円)×33.58%-50万円×40%-50万円×20%=1,632万円
キャッシュアウトの総額=50万円+1,632万円=1,682万円

メリットと留意点

企業版ふるさと納税の主なメリットと留意点は以下の通りです。

活用する主なメリット

寄附を行った地域で企業名を公表することができるため、社会貢献に取り組む企業としてのPRになるほか、企業版ふるさと納税を通じて地域の活性化、SDGsやESGに寄与することができます。 また、寄附をきっかけに地方公共団体等との新たなパートナーシップを構築したり、人材派遣型の活用で新たな人材育成にも繋がっているようです。なお、人材派遣型の場合は派遣した従業員の給与を寄附企業の寄附金から拠出してもらえます。
企業版ふるさと納税(人材派遣型)のスキームは以下リンクをご参照ください。https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/R021013_jinzaigaiyou.pdf

留意点

一方で、企業版ふるさと納税にはいくつか注意点があり、主なものは下記の通りです。

  • 寄附金の最低金額は1回あたり10万円です。
  • 企業の本社(主たる事務所又は事業所)が所在する地域には寄附を行うことはできないほか、国が認定した地域・事業にのみ適用されます。
  • 経済的な利益の受取は禁止されています。例えば寄付金のお返しに、補助金、低い金利での貸付け、換金性の高い商品(商品券など)の提供を行うことは禁止です。一方で、地方公共団体のHPや広報誌で寄附企業名を紹介することや、寄附により整備されたサテライトオフィスを、寄附を行った法人が利用することは、経済的な見返りに該当しないとされています。

経済的な利益に該当するか等の詳細は、内閣官房・内閣府総合サイトのページをご覧ください。https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/keizaitekirieki_qanda.pdf

寄附手続きの流れ及び確定申告

企業版ふるさと納税ポータルサイト等で寄附先を探し※、寄附をしたい先の自治体に申し出を行い、納付方法や時期等を調整ののち納付を行います。
※地方自治体への寄
寄附金の入金確認後に「受領書」が発行され、税額控除等の措置を受けるためには「受領書」の保存が必要です。

また、寄附の時期として、例えば決算期が3月末の場合、3月末日までに寄付決済(振込など)が完了したものが対象になります。請求書発行時に計上を行う場合は対象外になりますので、詳細は税理士にご確認ください。

また、法人税の確定申告書には、明細として別表6(25)「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」、住民税及び事業税の確定申告書に明細書(東京都の場合は第7号の3様式「特定寄附金を支出した場合の税額控除の計算に関する明細書」)を添付し、受領書も合わせて提出します。

まとめ

今回は企業版ふるさと納税について解説しました。
企業版ふるさと納税を利用することで、税額控除の恩恵を受けることができる可能性があるものの、キャッシュアウトの総額で考えた場合はメリットが乏しい可能性があるほか、多くの留意点があり寄附方法の検討に時間を要する可能性もあります。そのため、企業にとって税額控除以外のメリットがある場合は利用を検討しても良いのではないでしょうか。

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