英国迷走の金融立国〈上〉投資マネー、自国に向かず NISAの「先輩 ISA苦悩 米欧へ流出、改革案も空転
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241128&ng=DGKKZO85088060Y4A121C2EE9000
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【コメント】
- 日本の数十年先をいく英国が国民の投資傾向で苦悩しています。
- 英国は、自動車などの主要な産業がもはや英国資本ではなくなり、生活インフラ(例:上下水道など)なども外国資本の運営となっています。それでも金融などで欧州の中心的存在感を示していたが、EU離脱後はドイツなどにその地位を開け渡すことになってしまっています。
- 日本の新NISAがお手本とした投資優遇制度は、英国のISA(Individual Saving Account)ですが、英国でも ①自国企業へ投資が向かず欧米企業への投資が多い ②投資よりも貯蓄を選好する傾向が継続している など、日本の金融資産活用改革が直面していると同様の悩みが続いているようです。
- 記事後段にもあるように、企業価値を高める努力がなければ投資資金は海外に流れてしまうし、リスクを感じれば預貯金に資金は滞留します。
- 日本も、英国の後を追うように産業空洞化が進んでいると感じまます。かつての日本は、自動車、電機、製鉄、化学など多くの分野で世界的な地位を誇っていましたが、今では自動車がなんとか存在感を示しているに過ぎない状況かもしれません。電機などは、半導体やAI、インターネット分野が稼ぎどころだが、日本の存在感は非常に薄い。
- このような状況で、新NISAの資金を日本企業に呼び込むには、米国の後追いではない独自の発想による新産業の育成が必要と思われます。このまま放置すれば、数十年後に日本は英国と同じ道を辿ることを予感します。
【記事概要】
- 英国の金融市場が難局に立たされている。ロンドン証券取引所から米国への企業流出や国民の英国株離れが問題だ。英政府や金融界は改革に乗り出すが、資産運用立国を掲げる日本にとっても人ごとではない。金融立国としての存在感を維持しようともがく英国の姿を追った。
- 日本の少額投資非課税制度(NISA)がお手本としたISAは、国民の資産形成を促進するために1999年に始まった。23年4月時点の残高は7000億ポンド(135兆円)を超す。。
- 課題もある。一つが海外株への資金流出だ。英シンクタンクのニューフィナンシャルの推計では、株式型ISAでの英国株への投資比率は残高の約30%にとどまる。投資家の間では高い成長が期待できる米国株や英国以外の欧州株が人気で、英国企業には十分な資金が回っていない。
- ISAを巡っては、3月に当時の保守党スナク政権が改革案を提示していた。年間2万ポンドの非課税枠に5000ポンドを上乗せし、追加分の投資先は英国企業に限定するという内容だ。英国に資金を呼び込む狙いだった。ところが、新たな投資枠の追加は制度を複雑にする恐れがある、リスクを軽減するには投資先の分散が重要で、英国株に縛るのは個人の資産形成に不利益になるとの理由により反対する声もある。
- ISAは株式型への投資比率が低いという課題もある。22~23年課税年度の利用額でみると預金型に資金の約6割が滞留し、株式型は4割弱だ。「金利がある世界」の英国では預金型も人気だが、英シュローダーのピーター・ハリソン前最高経営責任者(CEO)は「リスクのない預金に税制優遇をしても富は生まれない」と話す。
- ISAが抱える課題は、新NISAが始まった日本にも共通する。投資信託の資金流入額ランキングでは海外株に投資するファンドが上位を独占する。家計に眠る現預金が日本株の投資に向かい、日本企業の価値が向上する好循環につながっているとは言い切れない。
- 大和アセットマネジメントの浜田好浩商品本部シニア・ディレクターは「成長期待が高い市場に資金が集まるのは当然」と話す。新NISAが投資の火付け役となることが期待されるが、浜田氏は「自国市場へマネーを呼び込むには、日英ともに企業価値自体を高める努力が必要だ」と指摘する。