キティ、世界で100年稼ぐ3 育ての親はいちごの王さま
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241213&ng=DGKKZO85432770S4A211C2EA1000
【コメント】
  • サンリオが発表した2024年4〜9月期の連結決算は、純利益が前年同期比82%増の190億円、4〜9月期として過去最高を更新したそうです。
  • 米国や中国を中心としたアジアのライセンス収入が増えたことに加え、国内ではインバウンド(訪日外国人)需要で物販事業やサンリオピューロランド(東京都多摩市)の客単価が伸長したようです。
  • 世界のキャラクター累計売上の世界ランキングは、世界の上位10位内に、ハローキティを含め日本発のキャラクターが5つ。他の3つはアンパンマン、マリオ(任天堂)などで、米英勢ときれいに半数を分け合っているそうです。これらは「遊び」の延長として軽視されて来た分野に、日本の強みがあったことになります。
  • ハードウエアの競争力強化も重要ですが、こういった文化戦略による国力強化が日本には必要なのではないかと思います。
  • アニメ作家は不足しているようですし、人気アニメを各国語に翻訳する人手も不足状態のようです。この不足感をAIを使って解消していく動きが加速しているそうですが、政府が多彩な作品が生まれるインフラの整備や、現場が困っている点を助ける伴走型の支援が大切でしょう。
【記事概要】
  • 「小さなお財布向けに描かれたデザインのうちの一つだった。初めて見たときは『かわいいな』と思った」
  • サンリオ創業者の辻信太郎(97)は、50年前に「ハローキティ」を見たときの思いをこう振り返る。辻は山梨県職員を経て、1960年にサンリオの前身となる山梨シルクセンターを設立した。やがてキャラクターをあしらったギフト用品事業を始め、74年にキティが生まれた。
  • 最初にキティが描かれた商品は、75年に発売したプチパース(小さな財布)。ほかのデザインもあるなかで圧倒的に売れた。登場当初は名前すらなかったキャラクターは人気の上昇とともに名前が付き、家族や好きな物といった詳細なプロフィルができあがっていった。
  • 辻は人気が出た理由について「口が描かれていないことで、見る人の気持ちに寄り添うことができたから」と分析する。
  • 90年に開業したテーマパーク「サンリオピューロランド」(東京都多摩市)は、歌って踊るキティがファンと交流をもつ重要な施設だ。辻も「ピューロビレッジの村長」として度々ピューロランドの舞台に登場し、ハーモニカを吹いていた。
  • 高齢に伴い、辻がピューロランドで演奏する姿を見ることはなくなった。一方で「いちごの王さま」として、今でもサンリオファン向けの月刊紙「いちご新聞」にメッセージを寄せ続けている。「『優しい心とあたたかい思いやりを大切にしてほしい』ということを伝えたい」という辻の思いからだ。
  • キティのコンセプトでもある「みんななかよく」は辻自身の戦争体験も影響している。17歳のときに甲府市が空襲にあい、生家があった場所は焼け野原になった。今年8月のいちご新聞には「1番いいのは最初から『戦わない、争わない』ことです。王さまは、普段から仲良く信頼関係を築いていれば、できると信じています」とつづった。
  • キティが世界に広まったのはかわいさだけではなく、辻の思いでもある「みんななかよく」に共感が集まったことが理由の一つだ。キティは2019年から国連との共同企画で、持続可能な開発目標(SDGs)の支援に取り組む。これまでバングラデシュなど各地の難民キャンプを訪れるといった活動をしてきた。
  • 「これからも世界中になかよしの輪を広げていって」。辻は自ら育てたキティにこう期待し続けている。