【コメント】
- 「どうして上場するのか?」日本のスタートアップ経営者に警笛を鳴らしている記事です。
- 日本の若い経営者は、「上場がゴール」「上場で自分を含めた従業員に資産形成で報いる」と考えて上場を目指す傾向があると思われます。
- 記事にあるように、上場はさらなる成長へ向けたスタート地点であり、更なる成長のために株式市場で資金を募る手段です。
- 上場後はコストがかかります。上場を維持していくためには、ガバナンス/内部統制を厳格に運営することが必須であり、事業を成長させていくコスト以外にも相当な管理コストがかかることを覚悟する必要があります。これを疎かにすると重い経営者責任が問われます。また事業運営方針も、これまでのように仲間内で決めていけるわけではなく、多くの株主の意見に耳を傾ける必要があり、ややもすると経営のスピードが落ちるリスクもあります。
- これらのリスクを飲み込み、強い成長意思がある経営者のみが上場を行うべきと思われます。
【記事概要】
- 企業にとって新規株式公開(IPO)は目的ではなく、さらなる成長へ向けたスタート地点だ。日本はそれが機能せず、小粒でとどまる企業があまりに多い。
- 民間調べでは2024年のIPO社数は90社弱と前年の96社を下回る見込みだ。大半は小規模案件ばかりだ。小粒なIPOが繰り返される状況を今なお抜けられない。東京証券取引所によれば東証グロース市場でのIPO時の平均時価総額は23年が154億円。米国はこの21倍の規模で上場する。IPOに応じる投資家も日本は個人に偏り、機関投資家の参加は乏しい。
- しかも上場してもなかなか成長しない。新興企業向けのグロース市場といいながら、成長力の乏しい企業ばかり並ぶのが実情だ。
- 幅広く投資家から資金を集めて大きな成長を目指すのが本来のIPOの姿だ。新事業の拡大や海外進出、M&A(合併・買収)に果敢に挑み、企業価値の向上を競う経営者がもっと増えてほしい。
- 取引所の上場基準を厳しくするのも検討課題だろう。グロース市場で上場を維持するには、上場10年後の時価総額で40億円以上というハードルがある。これを高くして規律をもたらすのも一案だ。
- 大事なのはスタートアップ企業が連続して大きく育つエコシステムを築くことだ。米国では起業で成功した人が新たな起業に取り組み、投資家としても次の担い手を支援していく流れがある。資金調達のパイプも太く多様にしたい。非上場段階から大手企業や投資ファンドによる出資、M&Aが活発になれば、小規模のままのIPO以外に選択肢が増える。成長の道筋をつけたうえでのIPOは投資の魅力を高める。
- 情報開示など投資家保護とバランスを取りながら、非上場株を取引しやすくする市場の整備や投資家層の拡大策も課題になる。
- 米巨大テック企業の多くは新興企業向けのナスダック市場から成長してきた。次の主役を担う企業が育ち、家計にも恩恵が及ぶような循環を日本も生み出したい。