【コメント】
- 今朝もトランプ氏就任を目前にして、トランプ外交に懸念を示す記事があった。
- トランプ氏のやり方は、19世紀の帝国主義的な発想に基づいているそうだ。第二次世界大戦後期での当時の大国である米英ロで世界の枠組みをヤルタ会談で決めたような手法に似ていると記事には書かれています。
- ただ、現時点では、英国はもはや大国と呼べる国力ではなく、ロシアや中国も米国と肩を並べて物事を決めていくという力ではないと感じます。客観的に見ると、世界は米国一強であり、その大統領の意向でなんでも決まりかねない状況にあると感じます。その状況に乗じて、ロシアや北朝鮮がトランプ氏に擦り寄ってきており、トランプ氏もそれを利用しようとしているように見えます。
- 各種ニュースを見ていると、トランプ氏は個人的に話すととても良い人だというコメントが多数見られます。公式的にメデイアに発する言葉と大きなギャップがあるようです。とりあえずメデイアで「はったり」をかまし、最終的には穏便な決着をつけようとしているならば良いのですが、、、。
【記事概要】
- トランプ氏が米大統領に復活するまで、約1週間となった。就任前から19世紀の帝国時代を思わせるような発言を連発し、さっそく各国に波紋を広げている。
- いじめとしか言いようがないこうした態度を、どう受け止めればよいのだろうか。
- 主要国の当局者らの間では、2つの反応が飛び交っている。
- 1つ目は、彼の発言が「はったり」であり、相手国から譲歩を得るための駆け引きに過ぎないとの見立てだ。トランプ氏といえども、グリーンランドやパナマ運河を本気で獲得できるとは考えていない。それらの一部利権をしぼり取るため、デンマークやパナマに高めの要求をふっかけているという分析だ。
- もう一つは、彼が半ば本気だとの仮説だ。国際政治は大国が牛耳るものであり、小さな国々は従うべきだとトランプ氏は考えている。この信念に基づき、真剣に獲得を目指しているという解釈だ。少なくとも彼の世界観は、後者だと考えた方がいいだろう。これまでも世界の主要課題について同盟国の頭越しに、大国主導で対応する発想が鮮明だからだ。
- 例えば、ウクライナにおける停戦問題である。バイデン米政権は北大西洋条約機構(NATO)の欧州諸国と密に連携し、ロシアの侵略に対応してきた。トランプ氏の手法は逆だ。ロシアのプーチン大統領と直接交渉し、停戦を果たそうとしている。欧州の同盟国と事前に政策をすり合わせようとする形跡は、今のところうかがえない。
- 北朝鮮問題にも同じことがいえる。日米韓の協調によって暴発を封じ込めるよりも、トランプ氏は北朝鮮とのトップ会談で突破口を開こうとするだろう。彼は金正恩(キム・ジョンウン)総書記から届いた書簡を「美しいラブレター」と呼び、秋波を送る。金氏が好きだからというより、強権で国を掌握する大事な交渉相手とみているからに違いない。
- 世界は第2次世界大戦の惨禍から国連憲章を定め、規模の大小にかかわらず、すべての国が国際ルールを尊重する原則を掲げた。それにより力ではなく、ルールに基づく秩序を保とうとしてきた。
- しかし、国際社会は倫理やルールではなく、力関係がものをいうジャングルだというのがトランプ氏の世界観だ。仁義なき不動産ビジネスで培われた本能であり、今後も変わらないだろう。
- そうだとすれば、トランプ時代の再来により、世界は「新ヤルタ主義」に覆われることになる。第2次大戦末期の1945年2月、米英ソの首脳であるルーズベルトとチャーチル、スターリンがクリミア半島のヤルタに集まり、密約を交わした。
- 新ヤルタ秩序の復活を最も願っているのが、ロシアのプーチン大統領だ。NATOの欧州諸国を脇に置き、トランプ氏との交渉でウクライナの命運や欧州の勢力図を決めたがっている。同盟国の利益は置き去りにされてしまう。
- 英スパイ機関、秘密情報部(MI6)のヤンガー元長官は2024年11月、英フィナンシャル・タイムズ紙のポッドキャスト番組で、危機感をあらわにした。「トランプ氏は徹頭徹尾、ヤルタ人間だ」。こう指摘し、大国の利益を優先するような世界観は「英国の利益と根本的に相いれない」と批判した。
- トランプ氏の大国外交には驚くべき成果を生む可能性もある。だが、禍根を残す危険はさらに大きい。プーチン氏や金正恩氏の任期はないに等しいが、トランプ氏に与えられたのは4年だ。ウクライナ停戦や北朝鮮問題で功を急げば、専制体制の相手に有利な決着にならざるを得ない。
- 不動産売買と外交には大きな違いがある。前者は商談の末、契約を交わせば一区切りとなる。外交は1回のビッグディールで終わるわけではない。焦るトランプ氏が両者を同じように扱えば、失敗に終わり、歴史からしっぺ返しを受ける危険がある。