IT投資 生かせぬ日本 変わらぬ業務フロー、革新生めず コロナ前の4割増も…生産性低いまま
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250201&ng=DGKKZO86454380R30C25A1EA5000
【コメント】
  • 日本の労働生産性が低い真因に言及した記事です。
  • まず日本は、ソフトウエア投資絶対額が他の先進国に比較して見劣りすることです。
  • 更に「IT投資をしても働き方そのものを変えない」。故に「IT投資の大半が既存システムの更新に留まっていること」が問題の本質です。
  • 日本企業に散見される現象は、トップは統一したシステム導入により労働生産性を上げようと投資に踏み切りますが、結果的に現場が反対勢力になるということです。終身雇用が長く続いたことにより「過去からの作業フローが絶対であり変えたくない」「業務改革を行うと自分の居場所が無くなる」などの思いで包括的な業務改革にならないのだと感じます。
  • 人口減少が加速していく中で、労働生産性が恐ろしく低い日本は、このままでは早晩「没落国」になってしまうことを強く自覚することが必須です。
【記事概要】
  • ソフトウエアを中心とするIT(情報技術)投資が増えているにもかかわらず、日本企業の生産性が低迷している。システムを更新しても働き方を変えず、IT資産を使いこなせていない。投資も既存システムの改修が中心で、経営の革新につながらない。
  • 全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大規模な決済システムなど固定資産として計上するソフトへの投資は2023年度で7.4兆円。新型コロナウイルス感染拡大前(18年度)から39%増えた。人手不足による省人化やデジタル化への対応などを進めたためだ。
  • だが、日本は投資を増やしても生産性の向上につながりにくい。原因は2つある。
  • システム投資後も既存の働き方にこだわり、IT化による業務の効率化が進まない。「新しいシステムを導入したが使い物にならない。御社のシステムに切り替えたい」――。システム投資後、思うような成果が出せない企業が大手ベンダーに駆け込むケースが目立つ。日本では新システムに合わせて業務を変えるのではなく、現場中心にシステムを作り込む例が多い。組織改正などのたびにシステムの改修が増え、長期化する。
  • 独ソフト大手SAPの日本法人SAPジャパン(東京・千代田)の村田聡一郎コーポレート・トランスフォーメーションディレクターは「欧米企業は統合基幹業務システム(ERP)など横断的なシステムを導入し、会社全体で働き方を変え仕事の効率化に取り組んだ。日本は部門ごとの改善にとどまった」と分析する。
  • システムをいかして成長につなげる意識が乏しく、IT投資の大半が既存システムの更新にとどまる。これが2つ目の原因だ。
  • 日本情報システム・ユーザー協会(東京・中央)の企業IT動向調査(23年度)によると、ハードウエアを含む企業のIT予算のうち「現行ビジネスの維持・運営」として配分した比率は75.5%。「ビジネスの新しい施策展開」は24.5%にとどまり新型コロナ前とほぼ変わらない。
  • 世界を見れば、日本のソフト資産の規模は海外主要国に比べなお見劣りする。労働投入量に対するソフト資産の合計(ソフトウエア装備率)は、23年は米英が4ドルを超え日本の2倍以上。5年間の増加率は日本の6%に対し、米英は2~5割に達する。この装備率が高いほど労働生産性も高まる傾向が見られる。日本生産性本部がまとめた日本の時間あたり労働生産性(23年)は56.8ドル。80~90ドル台の米英に引き離され先進国38カ国中29位に甘んじる。「投資の見劣りで、作業の効率化のほか革新的な商品・サービスの開発が遅れ、生産性を低迷させてきた」(大和総研の石川清香研究員)
  • 企業の競争力を高めるうえで、ソフトを含めたIT投資は不可欠だ。今後は金額を増やすだけではなく、システム更新に合わせた業務のあり方そのものの変革が求められる。