賃上げ、物価高に届かず 中小の持続力課題に 伸び率、主要国で最低 民間予測
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250313&ng=DGKKZO87304010S5A310C2EA2000
【コメント】
  • 昨日は企業側からの25年度賃上げ集中回答日でした。
  • 大手は雇用者側の要求水準を確保する勢いだったようですが、それでも「実質賃金」は低下傾向との予想となっています。
  • ガソリン価格の上昇や米国の関税政策の余波で25年度も相応の物価上昇が確実視され、実質的な日本国民の生活は豊かにはなり難いという論評です。
  • 大手企業の手元資金は豊富な一方で中小企業の賃上げは充分ではなく、これが日本全体の賃上げ水準に低下圧力をかけています。25年度の賃上げ率は主要国の中でイタリアと並び最低水準の見通しで、23年の統計データの平均賃金はG7中最低、OECD34カ国中25位でした。
  • 大手企業は、中小の協力会社の値上げ要求を真摯に受け止め、これによりこれまで定位に置かれている中小企業の賃金を一気に底上げし、日本国内全体の需要増加に繋げることが必須と思われます。中小企業の従業員は日本全体の70%を占めているのですから。
【記事概要】
  • 25年春の労使交渉で、大手企業では連合が目標に掲げる「5%以上」の賃上げが続出した。中小を含む全体の賃上げ率は前年の平均5.33%から4.92%へと4年ぶりに低下する見通しだ。
  • 金属労協の12日の集計では主要製造業のうち、満額回答(満額以上の回答含む)した企業の比率も24年の8割超から6割に低下した。
  • 賃上げが物価上昇分を上回るかは予断を許さない。1月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比で3.2%上昇し、3カ月連続で伸び率が拡大。生鮮食品を含めた伸び率は2年ぶりに4%台になった。24年は33年ぶりの5%超の賃上げが実現したにもかかわらず、実質賃金は24年まで3年連続マイナス。25年1月も前年同月比で1.8%減った。
  • 今後、政府のガソリン補助金の縮小などでエネルギー価格の上昇も予想される。米トランプ政権の関税政策などで世界的なインフレ懸念も強まる。日銀は、25年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)の上昇率の見通しを24年10月時点の予測より0.5ポイント高い2.4%に引き上げ、「上振れリスクの方が大きい」と分析した。5%程度の賃上げでは物価上昇を補えず、従業員の生活保障のためにさらなる賃上げや手当の支給が必要になる可能性もある。
  • 24年9月末時点の東証プライム上場企業約1千社の手元資金は110兆円を超えており、25年3月期の純利益も過去最高を更新する見通し。全体としてみれば大企業の賃上げ余力は大きい。体力に乏しい中小企業では賃上げのハードルは高まる。
  • 主要国でみても日本の賃上げ率は見劣りする。米コーン・フェリーの予測でも、25年の日本の賃金上昇率は平均3.5%で、主要国でイタリアと並ぶ最低水準となっている。
  • 経済協力開発機構(OECD)によれば、23年の平均賃金(購買力平価ベース)は約4万7千ドルで主要7カ国(G7)中最低。米国の6割、ドイツの7割の水準で、OECD加盟の34カ国中25位だった。
  • デフレの長期化で30年にわたり賃上げが停滞するなか「安いニッポン」が定着した。賃上げの勢いが鈍れば、海外との賃金格差がさらに開きかねない。