首相、減税・給付に傾斜 物価高対策「切れ目なく」  参院選を意識 与野党「熟議」の代償
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250402&ng=DGKKZO87757080R00C25A4PD0000
【コメント】
  • 新年度開始にあたり、石破首相が記者会見を行いました。成立した2025年度予算の内容と今後の展開を予想させる発言が目をひきます。
  • 2025年度予算は、少数与党の弱みに漬け込み財政健全化を度外視した野党の「人気取りバラマキ」提案が横行したと感じます。
  • 特に予算成立を企図し維新を取り込みたっかった自民党が妥協した高校無償化は教育の質的改善という本質的な議論を棚上げした内容であり疑問符がつきます。米国では教育の質改善が図れていないことから文部省を廃止し各州に教育行政を委譲する取り組みが始まっています。この施策の善悪は別にしても、米国は「教育の質」という根本問題に目を向けていることについては評価できると思いますが、一方で日本は単に「教育をタダにする」に留まっており無策を露呈している感が否めません。
  • 首相の会見内容にもあるように、この後も参院選挙を睨んだ「国民の人気取りのバラマキ政策」が提案/実行されていくことは明白です。
  • そもそも野党が日本の財政に無責任であって良いわけではありません。国民から見れば与野党問わず国会議員は全員日本全体に目配せをし検討/決定していく義務があります。野党は人気取りの断片的な政策ではなく、財政を含めたバランスある総合的な提案をするべきと感じます。与党も与党でこれ以上の議席を失うことを恐れバラマキに加担している傾向がありますが、慎むべきです。
  • 根本的には、「バラマキ」に目が霞み本質的な政策を強く求めない我々国民の政治に対する意識の低さに問題があると感じます。
【記事概要】
  • 石破茂首相が1日に開いた記者会見は、国民生活の負担を減らす発信に傾斜した。「熟議の国会」と振り返った今国会の前半戦は少数与党として野党の主張を取り入れざるを得なかった。夏の参院選を前に与野党とも有権者に聞こえのいい政策を打ち出しがちで財政や社会保障の持続性への懸念を伴う。
  • 首相は最優先課題として「国民の不安を取り除く」施策を挙げ、食品やエネルギー価格の高騰に関する物価高対策を「切れ目なく」実行すると表明した。低所得者世帯への給付金の拡充、ガソリン税の旧暫定税率の廃止に向けた協議、所得税の非課税枠「年収103万円の壁」の再改革、高校無償化などを列挙した。
  • 首相が挙げた物価高対策の項目は野党が予算審議の中で求めた対策が目立つ。立憲民主党はガソリン税などの旧暫定税率の廃止や高校無償化などを含め3兆8000億円規模の修正案を提起した。国民民主党は103万円の壁の178万円までの引き上げを訴えた。7兆~8兆円の恒久財源が必要と試算される。財源の手当てのないまま与野党双方に配慮して打ち出した政策は多い。日本維新の会と合意した高校無償化については必要な恒久財源を確保できていない。
  • 首相が記者会見で言及した高額療養費制度も同様だ。25年度予算の審議の過程で参院自民党や野党の主張を受け入れ、患者の負担上限を上げる方針を見送った。当初は引き上げた分を少子化対策の財源に充てる予定だった。首相は療養費制度に関し「秋まで実施を見合わせ丁寧なプロセスでさらに検討を重ねる」と述べるにとどめた。
  • 記者会見では「国民の負担を軽減するための社会保障改革」にも触れた。
  • 首相は国民に負担を強いる政策に言及しにくい政治状況に置かれる。記者会見の冒頭、自らの商品券配布問題に関し陳謝した。自民党内では参院選前に内閣支持率が低迷する首相の交代を求める声もくすぶり、党への目配りは欠かせない。
  • 政府が1日に公表した国土強靱(きょうじん)化の中期計画の素案では5年間の事業規模を20兆円強とした。自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長は3月下旬の会合で20兆円強を求める考えで一致しており、政府がそのまま受け入れた。自民党の食料安全保障強化本部などは3月下旬、農業インフラの整備などを目的に「思い切った規模の予算を確保すべきだ」との決議をまとめた。「既存予算とは別枠」にする案も示し、補正予算での計上も選択肢に入れているとみられる。
  • 後半国会で政府提出法案を成立させるため野党にも配慮が要る。少数与党のもと野党が一致すれば内閣不信任決議案も可決できる。
  • 与野党が手柄を競うなかで財源や公平性に考慮した与野党の政策調整は期待しづらい。参院選を前に与野党からさらに歳出圧力が高まるとみられる。
  • 首相は記者会見で「徹底した議論、熟議の国会、その実現に政府としても努めていきたいと考えている」と強調した。様々な意見を反映することで、より建設的な政策につなげるという「熟議」の本来の形は遠い。