超長期債、売買5割が海外勢 財政悪化を懸念、利回り急上昇のリスク
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250509&ng=DGKKZO88534620Y5A500C2ENG000
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【コメント】
- 日本の超長期国債の利回り上昇が止まらないようです。超長期国債の価値が毀損し国債の価格が低下している、つまり長期的に日本の価値は財政悪化により低下傾向にあるということです。
- 海外投資家が客観的に日本の財政政策を問題視し始め、金融市場にその警笛が現れています。
- 6月の都議会選や7月の参院選に失職を恐れる候補議員がバラマキの経済政策を打ち出したり、米国が日本に多額の防衛費負担を求めてくる可能性があるなど、更なる赤字国債の発行が懸念させることのあらわれです。
- 米国はトランプ関税の影響で、株・債券・通貨のトリプル安に見舞われています。このままでは日本も同様の状況に追い込まれる可能性があります。
- 中国の「四書五経」と言われるものの一つである「礼記」に記されている「入るを量りて出ずるを制する」がやはり財政政策の基本です。
【記事概要】
- 日本の超長期国債市場で海外投資家の存在感が強まっている。売買高全体に占める割合は約5割と生命保険会社など国内勢を引き離す。
- 市場のデータからは、日本の財政悪化リスクを背景に海外勢が一段の金利上昇(債券価格の下落)を見込む様子がうかがえる。
- 超長期債は償還までの期間が10年を超える国債を指す。主な投資家層には国内の生命保険会社や年金、そして海外勢などが挙がる。
- 国内生保は25年からの新たな資本規制への対応のため金利水準にかかわらず超長期債を積み増してきた。だが今では対応が一巡し、海外勢しか主要な買い手がいなくなった。その結果、超長期債の売買高全体(債券ディーラーを除く)に占める海外勢の割合は足元で約5割を占める。約2割だった20年ごろから比率は右肩上がりで、横ばい推移が続く国内勢とは対照的だ。
- 海外勢はどんな姿勢で日本の超長期債を取引しているのか。海外勢は相対的に長い年限の金利の上昇を見据えているといえる。
- 背景にあるのは日本の財政悪化に対する懸念だ。6月に東京都議会選、7月には参院選と政治イベントが続き、経済対策を通じた財政拡張は連想されやすい。
- トランプ米政権が日本に防衛費の増大を求めているのも重荷だ。「防衛費増の財源確保で国債発行以外に手立てはあるのか」「国債発行が必要になればどの程度の規模になるのか」。アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストには海外勢からこうした問い合わせが相次ぐという。
- 市場は警鐘を鳴らす。3月末までの利回り上昇が一服した短中期債と異なり、超長期債では利回りの上昇が止まらない。8日の国内債券市場では新発30年物国債の利回りが一時2.885%と04年8月以来の高さまで上昇。40年債利回りは3.33%と過去最高水準をつけた。
- 財政懸念の強まりから超長期国債の利回りが急上昇するような場合には、他の年限の国債にも売りが広がり幅広く金利が跳ね上がる可能性もある。22年には英国で大型減税を公表して財政懸念が浮上し、金利急騰でトラス政権が退陣に追い込まれた「トラス・ショック」はその一例だ。
- 岡三証券の長谷川氏は「(自国資産に投資が偏る)ホームカントリーバイアスを持ちやすい国内勢に比べ、海外勢の方が財政への意識は働きやすい」とも話す。財政問題が大きくなれば超長期債の市場を通じて日本の市場全体に波乱をもたらすきっかけとなりかねない。