【コメント】
  • 夏の参議院選挙を目前に控え、消費減税が政策論争の焦点になっています。
  • 野党各党がさまざまな形で消費減税を訴えている一方、自民党は「消費減税は行わない」と明確に表明しました。
  • これを受け記事では石破政権の決断を評価しています。
  • 今日も別の記事で経団連新会長の筒井氏(日本生命前会長)は否定的な見解を表明、また先日大学教授らが消費減税への危機感を示していました。
  • 将来のさらなる財政悪化リスクを無視した、失職を恐れる国会議員(自民党参議院議員も含め)がこぞって近視眼的な票集めに走っている姿は非常に問題だと感じます。
  • 不幸にして経済弱者になってしまった国民には手厚い支援は必須ですが、国民一律に税負担を軽くする消費減税を失職回避の手段とすることは間違いです。
【記事概要】
  • 自民党が7月参院選の公約に消費税減税を盛り込まない方針を決めた。野党がこぞって各種減税案を掲げ、石破茂内閣の支持率が低迷していることを考えれば、大いなる決断と言っていい。
  • 選挙が近づくと票目当てのバラマキ政策が声高に叫ばれる。民主党政権下で「社会保障・税一体改革」を実現させた野田佳彦氏率いる立憲民主党までが限定的ながら消費税減税論を唱え始めた。
  • 消費税は働く世代が納付する所得税中心からの脱却を目指して1989年に導入された。労働力が減少し高齢化の進行で社会保障費が膨らむことが目に見えていたからだ。
  • 誰もが負担する消費税は人口減少社会に不可欠な長期安定財源なのだ。
  • こうした中で自民党執行部は参院議員の抵抗を押し切って目先の選挙対策より日本の将来を見据えた責任政党としての誇りを示した。
  • それでは有権者はどう考えているのだろうか。最近の各種調査では減税賛成論が大勢だが、直近のテレビ東京と本紙世論調査の結果は興味深い。消費税率について「社会保障の財源確保のために維持すべきだ」が回答者の55%を占めた。国民は目先の対策より将来の安心を手に入れたいのだ。
  • 企業の賃上げの浸透で国民の収入は増えているが、それに見合って支出は増えていない、という現状はそれを示しているのではないか。
  • 総務省「家計調査」によると、昨年の勤労者世帯(2人以上世帯)の可処分所得は、名目で5.6%、実質で2.3%増えた。一方、消費支出は名目で2.0%増えたが、実質では1.2%減少したのだ。消費性向は2.2ポイント低下した。
  • 関連してもう一つ。自民党は27日、公明、立憲民主との3党協議を経て、厚生年金の積立金を活用した基礎年金の給付水準引き上げ案に、党内の一部反対論を抑えて正式に合意した。
  • 基礎年金に多くを頼らざるを得ない就職氷河期世代にとって、わずかながらも救いになろう。もちろんこれでは足りない。国民の将来不安を緩和するには受給開始年齢の引き上げなどさらに踏み込んだ思い切った改革が不可欠だ。
  • いずれにしろ、与野党拮抗する中で、石破政権がリスクを覚悟で大きく一歩踏みこんだことは評価したい。