【コメント】
- 参院選を前にした「2万円バラマキ」談義です。
- 消費税減税より2万円給付の方が国の財政健全化のためには合理的というのが自民党幹部の論調です。
- 財政健全化を徹底するならば2万円の給付もしないのが最も合理的な判断だと感じますが、物価高に対応した低所得者救済には一定の処置は必要です。
- そこで記事にあるようなマイナンバーを利用し所得に応じた給付をするという方法があがっています。これはキチンとできれば合理的ですが、自民党の選挙対策には不向きです。なぜなら有権者の多数に給付金が支払われないからです。給付や減税は選挙ネタであってはなりませんが、参政権を持っている有権者がどうしても自分の利害を第一優先することになりますので、善悪は別にして致し方ないですね。
- 私は野党と一部の自民党議員が唱えている「消費税減税」をもっと真面目に検討する余地があると感じます。
- イギリスの消費税(VAT)を見ると、標準税率は20%で、食料品や水道、赤ちゃんのオムツや子ども用の衣料品、文房具、書籍など生活必需品や子育てに関するものは無税です。低所得者や子どものいる家庭の負担を少しでも軽くするのがねらいとのことです。
- 私も30年前に5年ほどイギリスに家族と住んでいましたが、初めてスーパーへ行った際に「なんと合理的な税制なんだ!」と感動を覚えた記憶があります。30年前より標準税率は上がっていますが、消費税(VAT)の基本思想は今も普遍です。低所得者に優しく、かつ生活必需品と少子化対策に配慮した税制です。標準税率が適用される物品やサービスの購入が減退し経済に多少の影響があるとは思われますが、標準税率適用品目は丁寧に長く使う努力を行い環境にも優しい税制と捉えることができます。実際イギリス人はごく一部の超がつく金持ち以外の生活は質素です。
- 日本もこの税制を恒久的に取り入れれば、食料品は所得に関係なく一人当たりの消費量は概ね一定しており食品などの消費税をゼロにすれば低所得者には相対的に有利、また金持ちが贅沢品を購入する際には今より多額の消費税を支払わなけれなならないことになり、この二つの面で各所得層に公平な税制改正になります。また食品などの消費税ゼロ化の一定部分は標準税率UPで補え、財政にも優しい税制改正だと思うのですが、、、。
【記事概要】
- 石破茂首相は「バラマキはしない」と公言していたが、結局「国民1人あたり2万円の給付、子どもと住民税非課税世帯の大人に1人あたり2万円の加算」を参院選の公約に盛り込むことになった。野党各党の消費税減税に抗しきれないということだが、物価高対策として「(消費税減税に比べ)給付金のほうがはるかに効果的だ」とも述べた。
- 効果はともかく、ひとたび消費税を減税すれば、戻す際の大幅な増税に賛同が得られず減税が恒久措置になる可能性が高い。給付は原則単年度なので、恒久財源を失わずに済むというのが本音だろう。
- 「バラマキ給付」への国民の評価は低い。世論調査でも「評価しない」が圧倒的に多く、今回の都議選でも評価が得られたとは思えない。ではどうすれば「バラマキ」と呼ばれることを回避できるだろうか。
- 目の前の物価高対策でなく、デジタルを活用しマイナンバーで把握している所得に応じ給付する仕組みを作り、新たなセーフティーネットにつなげることだ。国民全員か住民税非課税世帯かという「バラマキ」から脱却できる。
- セーフティーネットの内容は、低所得者、とりわけ就職氷河期世代への就労支援を中心に、社会保険料の負担軽減効果も持たすこととする。
- デジタルの活用については以下の通りだ。現在わが国では自治体システムの標準化とガバメントクラウドを活用した情報連携の基盤整備が進む。住民税の課税ベースの前年度所得に応じた給付であれば、現金、ポイントとも対応できる段階にきている。
- 資産の把握ができていないというが、英国の給付付き税額控除のように資産性所得を資産の代理変数として活用すればよい。わが国では特定口座で取引される配当と株式譲渡益はマイナンバーで名寄せが可能である。
- 岸田前政権での定額減税は減税しきれない者には給付をする内容だったが、システムが整っていないため事務を担った地方自治体は莫大な時間と労力を使うこととなった。
- 令和国民会議(令和臨調)は4月、国民の所得・資産や税・社会保障負担と給付を一元化して相互利用する基盤である「ガバメント・データ・ハブ」の構築を提言している。デジタルを活用したセーフティーネットにつながる給付なら、国民はバラマキと批判しないはずだ。