交渉暗雲」楽観の日本株 米関税上乗せ、期限迫る 需給良好で業績も堅調
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250708&ng=DGKKZO89869290X00C25A7DTC000
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【コメント】
- 別記事で、トランプ大統領が日本に関税に関する書簡を送ったようです。内容は ①交渉期限を8月1日まで延ばす ②交渉不調ならば関税率25%を発動 です。
- この記事にあるように、7月9日の交渉期限は予想通り引き延ばされました。日本の株式市場が関税交渉に関し楽観視した相場展開をしているという解説は結果として当たりでした。
- この状況を受け日本株はある程度堅調に推移中です。一旦4万円台を回復したのちにまた3万円台に突入していますが、今のところ思ったほどの下げではない感じです。
- 今後はどうでしょう? 記事にもあるように、関税交渉や参院選など不透明要因が多いためアナリストも下方修正(上方修正は期待薄?)が追いついていない感じです。
- 加えて例年夏場は概ね株価は不調です。
- 短期売買を行なわれている方は、ここは一旦手仕舞いでしょうか?既にそうしているかたも多いと思いますが。 長期目線でのかたは絶好の買い場が到来するかもしれませんね。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- 米相互関税上乗せ分の一時停止期限が9日に迫るなか、日本株が底堅さを見せている。高い関税は結局発動せず、交渉は続くという楽観論が今なお優勢のためだ。良好な需給に覆い隠されている面もある。関税影響が大きい自動車以外に対しては、織り込み不足との指摘もあり、今後の「ショック」は大きくなりかねない。
- 7日の日経平均株価は前週末比223円(0.6%)安の3万9587円で終えた。トランプ米大統領が新たな関税率を通知する文書を7日から相手国に送ると「最後通牒(つうちょう)」を突きつけたのにもかかわらず、日本株の下げは限定的だった。「交渉延長を織り込んだ株価形成となっている」。かんぽ生命保険の岩原央門市場運用部課長は指摘する。
- トランプ政権は相互関税発動直後に国ごとに定める上乗せ税率を90日間停止した。日本は上乗せ部分の14%が停止され、基本部分の10%だけが現在適用されている。90日の期限を7月9日に迎えるが、ラトニック米商務長官が発効は8月1日と発言し、実質的な交渉期限が7月末まで延びたと受け止めた。
- 相互関税前の3月末を起点にとると日経平均は11%高い。米国との「ディール」に至った英国(FTSE100指数、3%高)やベトナム(VN指数、7%高)、枠組み合意にこぎ着けた中国(CSI300指数、2%高)を大きく上回っている。5月以降、日本株はトップを走っていたが、6月後半からペースを上げた形だ。
- 日本と米国の通商交渉は難航している。それにもかかわらず、株価が「意外高」となっているのはなぜか。2つの理由が考えられる。
- 一つは良好すぎる需給環境だ。6月下旬から主要企業から7兆円規模の配当金が投資家に渡り、多くが再投資に回った。NTTデータグループに対するNTTの大型TOB(株式公開買い付け)も2兆円規模の資金をもたらした。株主総会前には「株価対策」で自社株買いが入りやすい一方で、政策保有株の解消売りはいったん自粛されやすい傾向もあるという。
- 次に見かけ上、底堅い企業業績見通しだ。QUICK・ファクトセットによると証券アナリストの予想平均を積み上げて算出する東証株価指数(TOPIX)ベースの12カ月先予想1株当たり利益(EPS)は足元で198.65円。1年前と比べて5.4%増益を見込む。年初時点の13%増からは増益幅は縮小したが、減益までは織り込んでいない。
- 日経平均が24年7月に4万円台をつけた際に比べて1株当たり利益が伸びていることで、予想PER(株価収益率)は低下している。つまり足元の株価水準に割高感はなく、買いがじわじわ続く構図だ。
- ただし「堅調な」アナリスト利益予想を前提とした株価形成にはリスクもある。UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗ストラテジストは「関税影響を織り込んだ業績予想をこれからの決算で初めて示す企業も出てくる。企業自身の業績予想が切り下がれば、市場予想も下がってくる」とみる。
- 政治・経済の先行きが不透明な局面ではアナリスト予想の修正が遅れがちだ。今回は米関税の税率が定まらず、多くのアナリストが業績予想の作成に苦労している。米国をはじめとした世界景気の先行きも読みにくい。第1次トランプ政権では18年から中国との貿易戦争が激化したが、業績見通しが前年比マイナスとなったのは19年に入ってからだった。
- JPモルガン証券は相互関税がトランプ氏が示唆した「35%」まで引き上げられた場合の業績インパクトをトップダウンの視点で試算した。TOPIXベースでは10.9ポイントの1株利益押し下げ要因になる。期初時点では市場は今期9%の増益を見込んでいたので減益に転落してもおかしくない。西原里江チーフ株式ストラテジストは「市場の相互関税引き上げへのリスク警戒は自動車関税に比べて薄く、実際に導入が決まった際の株価影響は大きく出かねない」と警鐘を鳴らす。
- 関税影響が少ないとされてマネーが集まるIT(情報技術)関連にも注意が必要だ。ある国内証券のストラテジストはSCSKなど「製造業に強いIT企業」に業績リスクを感じ取っている。売上高に占めるトヨタ自動車など自動車業界向けの比重が大きいとされている。一時は最高値更新をうかがった日本株だが、脆弱性を内包した株高との認識を強めたほうがよさそうだ。