税は接待を変えるか 「1万円」へ変更 ランチ需要に波及 夜の会食は効果限定的
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250728&ng=DGKKZO90286240X20C25A7TCJ000

 

【コメント】

2024年度税制改正で接待飲食の費用枠が広がりました。
1万円以下だと会社の規模に関わらず、ビジネスに関係する会食は税務上経費計上が可能になりました。
これを受けて、夜の高額な接待からビジネスランチが増えているようです。
公私を分ける働き方が一般的になっている欧米と同様に、日本でも今後ビジネスランチが増えていくと思われます。
ただし、税務上の経費計上基準の緩和と経営上の経費使用効率化は別です。会食などは、あくまでビジネスへの有効活用が原則ですね!

 

 

【記事概要】

社の規模にかかわらず税務上の経費にできる接待飲食の費用は「1人1万円以下」。新型コロナウイルス下でダメージを受けた飲食産業の支援策として、2024年度税制改正で金額の基準が5000円以下から引き上げられた経緯がある。まだ「夜の接待」への影響は限定的のようだが「ビジネスランチ」への効果が出ていると指摘する声もある。税制は接待文化を変えるのか。
交際費は原則、税務上の経費に当たる「損金」にできないが、取引先など社外関係者が参加する会食の費用は損金計上が認められる場合がある。「関係者」は得意先や仕入れ先といった直接の取引先以外に株主や同業者など幅広い。物価上昇による飲食費の高騰もあり、長らく据え置かれてきた「1人5000円以下」の金額要件が見直された。
ただ実際に企業が使う交際費は社内規定にも縛られる。税法上の上限引き上げと連動するかは別問題だ。
日本経済新聞と日経リサーチが共同で読者1052人にアンケート(6月18~23日、オンラインで実施)したところ、24年4月以降、経費として認められる金額は「変わらない」が60.2%を占めた。税制改正に沿った「5000円以下から1万円以下への引き上げ」は18.3%にとどまった。
料亭など日本料理店の業界団体「全国料理業生活衛生同業組合連合会」(東京・中央)の山戸聖一事務局長は「夜の料亭は客単価4万~5万円が大半だが、1万円以下のランチ営業は引き合いが出ている。小料理店や料亭でも相対的に価格帯の低い大都市以外の地域では夜も『1人1万円基準』の恩恵を受けているケースはある」と評価する。
その上で「近年の物価水準を考えると1人2万円程度まで引き上げられないと影響は限定的。1人当たり基準の引き上げではなく、大企業の接待が復活しないと法人需要の本格的な回復は難しい」と話す。
接待飲食費の税務上の取り扱いは会社の規模で異なる。資本金100億円以下の企業は1人当たりの金額にかかわらず一部を損金にできるが、資本金100億円超の企業は1人1万円を超えると全額が損金にできない。税制上の損金の基準とは別に経費の基準を設定している企業もある。アンケートでは、資本金100億円超の企業で働く人の約3割(29.0%)が、経費として認められる接待交際費を1人当たり「1万円超」としている。
外食チェーンの業界団体「日本フードサービス協会」(東京・港)は「食材費や人件費の高騰で飲食店の倒産も増えている。法人需要を刺激するためにも26年度税制改正に向けて『1人2万円』への引き上げを要望していきたい」とする。
金額の水準を巡っては、24年度税制改正要望に向けて日本商工会議所が「1人2万円」を掲げるなど議論はあった。最終的に飲食業界を所管する厚生労働省が「1人1万円」を要望した。金額の根拠は、東京都内のホテルを対象とした調査に基づく「ビジネスランチで最も多く利用されるコース額の平均値」(25年3月18日の参院予算委員会での国税庁次長答弁)だった。

飲食も会議扱い

社外関係者を交えた飲食費を損金計上できるのは、会食が税務上「会議相当」と見なされるからだ。出前やテイクアウトを伴う社内会議や、喫茶店などでの商談と同様の扱いだ。「会議相当の趣旨を踏まえると『ビジネスランチ』を意識して損金計上できる金額などの基準を設定するのは一つの考え方としてあり得る」(財務省主税局)
アンケートでも「人とのつながりは大切だが、ビジネスは公平にジャッジしたい。会食もアルコールの入りやすい夜に開く必要は必ずしもないのでは」(不動産業・60代・監査役)との指摘や「最近は社内でも夜の会合への参加者は少なく、打ち合わせを兼ねた昼食について経費申請することが多い」(製造業・60代・社長)との声が聞かれた。

働き方の変化も

帝国データバンクの調査では、24年度の社員1人当たりの交際費(25年6月時点の速報値)は月平均2万2823円。交際費にはゴルフや旅行、贈答品といった費用が含まれるケースもあるが、21年度の同1万7633円を直近の底に、少なくとも交際費全体では回復傾向が見える。
リクルートマネジメントソリューションズの武藤久美子主任研究員は「リモートワークや人工知能(AI)が活用される中、関係構築や多面的な情報収集につながる会食への需要は一定数ある。一方で『接待』のイメージから『本音で話せるので関係が深まる』など夜のメリットも強調されるが、昼だから会食が設定しやすかったり、しっかり話せる内容もあったりするのでは」と指摘。その上で「関係構築には接待が必要といった、従来の『勝ちパターン』にこだわる職場に窮屈さを感じる人もいる。接待のあり方も含めて働き方や成果創出の方法の選択肢が多いほど人材は集まりやすい」と話す。