ネット証券、遅れた乗っ取り補償 金融庁と対話すれ違い
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250822&ng=DGKKZO90818280R20C25A8EE9000
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【コメント】
- 証券会社の口座を乗っ取られ、損害を出している事象が続いています。
- 野村や大和など対面営業で株式を売買している大手証券は、損害額の100%を補償していますが、SBIや楽天などのネット証券は損害額の半分しか補償しません。今後もこの方針は変わらないようです。
- ネット証券は割安な手数料で自分の好きな時に取引ができますが、その分自己責任が問われます。
- 改めて、ネット証券なのか大手対面証券なのかを考えてみると、デイトレードなどをおこなう投資家にはネット証券がむいているのかも知れませんが、長期で投資信託などを積み立てていくには安心感がある大手証券も検討の余地があると思われます。
- 貯蓄から投資への流れにのって毎月積み上げている大事なお金は、多少の証券売買手数料がかかっても100%補償を受けたいと言うニーズも強いのではないかと思います。
- 証券売買手数料=乗っ取り保険料と思えば、案外安いのかも知れません。
- 皆さんはどう思いますか?
【記事概要】
- 証券口座の乗っ取り補償を巡り、大手証券会社の被害補償の方針が出そろった。SBI、楽天、松井の各ネット大手が被害額の2分の1を補償すると発表したのは7月25日。対面大手の方針決定から1カ月ほど遅れた背景には、金融庁との対話の不調があった。
- SBIと楽天は不正に買われた株式で発生した損失額の半分を金銭で返す。もともと持っていた株が売られただけの場合は損失算定の対象にしない。松井は不正な買い付けと売却ともに2分の1補償を適用する。
- 不正売買された株をすべて元通りにする原状回復を採用した対面大手とは対応が分かれた。個別の担当者が営業する対面とは異なり、ネット証券は自己責任に基づく利便性の高いサービスで事業を広げてきた。約款で免責にしてきた被害補償に踏み切っただけでも異例だとの立場だ。
- ところが、監督官庁である金融庁とのやりとりは大きく揺れた。あるネット証券の幹部は「そもそも3月下旬時点では、証券会社が被害補償をしないという選択肢も金融庁は容認していたはずだ」との認識を示す。4月下旬に金融庁の態度が変わったと主張する。
- その後のコミュニケーションでもすれ違いは続く。5月の補償方針の発表後、金融庁は具体的な方法について「各社の経営判断に任せる」という姿勢だった。
- あるネット証券が6月中旬に「原則2分の1補償」の計画を金融庁に持っていったところ、「100%補償をめざしてほしい」と再提出を求められたという。首脳は「どれだけ態度を変えるのか」と憤る。
- 対する金融庁は「一貫して投資家保護を最大限やってほしいと伝えていた」との立場だ。金融庁に補償内容を要求する法的な裏付けはない。本意は全額補償にあったとみられるが、意思疎通は円滑にいかなかった。
- 24年1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)で、投資の裾野は一気に広がった。金融庁幹部は「投資が一般的でなかった10年前だったら、乗っ取り事件が起きてもここまでの補償の議論にはならなかったかもしれない」と語る。ネット証券の2分の1補償については「納得していないが、受け入れるしかない」とぼやく。
- 野村や大和のような伝統的な証券会社は旧大蔵省に証券局があった時代から、連綿と続く対話の歴史がある。対面大手は「貯蓄から投資」の逆回転を回避する観点から原状回復を選び、結果的に金融庁の意向と合致した。
- 大手ネット証券の多くは2000年前後の創業で、相対的に関係は浅い。あるネット証券の首脳は「我々は金融庁の世話になったこともなく、特別な貸し借りがあるわけでもない」と言明する。
- ネット証券が2分の1補償を採用したのには、個人のセキュリティー意識を高め、自己責任が原則の証券取引のモラルハザードを防ぐという意図もある。投資家保護とは何か、最後まで金融庁と目線が合わなかった。
- 日本証券業協会によると国内株取引に占めるネット取引のシェアは24年10月~25年3月に37%と、1年半で12ポイントも上昇した。監督側と事業者側でめざすべき理想像を擦り合わせる重要性は急激に高まっている。