ニデックにPwCが出した「意見不表明」とは 異例対応、監査18年担当https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG049CZ0U5A900C2000000/
【コメント】
- 不適切な会計処理が懸念されているニデックの監査が混迷しているようです。
- 延長していた有価証券報告書の提出を9月26日に行ったようですが、監査人であるPwCは「意見不表明」としました。
- おそらく第三者委員会の調査結果が出ていない中では監査人としては「意見不表明=監査人が入手した監査証拠の範囲では監査意見を表明できない」という判断なのだと思われます。
- このようなケースでは一般的に、第三者委員会の結論を待ち、それを踏まえて会社は決算を確定し監査人に説明すると思います。有価証券報告書の提出も関東財務局の再延長(6月に一度延長しています)が可能だったようですが、、、。
- 9月26日には別の不適切会計が疑われる事案が判明しており、第三者委員会の終了が見通せないことから、会社としては監査人の意見表明無しで有報提出を決断したようです。
- いつまでも有報提出を遅らせていると投資家への説明責任が果たせないということがある一方で、監査人の意見が無い有報にどれだけの意味があるのかも懸念されます。なかなか難しい経営判断だと感じます。
- Pw Cは18年間ニデックの監査を担当していたようですが、その間に馴れ合いがなかったのかは興味深いところです。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- 29日の東京株式市場でニデックの株価が乱高下した。前週末に会計監査人のPwCジャパンが「意見不表明」とし先行き不透明感から売り買いが交錯した。大手企業の監査で不表明は異例で、しかもニデックの不適切な会計処理の疑いに関する第三者委員会の調査完了前だ。前身の京都監査法人を含めニデックの監査を18年間担当している。
- 企業の財務諸表が適正かどうかを監査人が表明する監査意見には、その適正さの程度に応じて①無限定適正意見②限定付き適正意見③不適正意見④意見不表明――の4種類がある。投資家が企業の財務諸表の信頼性を評価するのに使われ、東京証券取引所の上場維持にも影響を及ぼす。
- このうち意見不表明は「監査人が入手した監査証拠の範囲では監査意見を表明できない」と判断したことを示す。会計監査人は意見表明責任を負う。日本公認会計士協会の「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」によれば、監査人が意見不表明とすることは基本的に慎重に判断すべきであり、他の意見と異なり「極めて例外的な状況」にのみ許容される。
- PwCはニデックの25年3月期の監査報告書で、連結財務諸表、内部統制、財務諸表の3つについて意見を表明しなかった。ニデックが不適切な会計処理の疑いについて第三者委員会による調査を実施中だと指摘したうえで、「意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった」とした。
- 監査報告書は5ページ。PwCが意見不表明とした根拠は書かれているが、ニデックとどのようなコミュニケーションをしているか、経営者と見解が一致しているか、具体的にどのような監査手続きをしているかなどは明らかにしていない。PwCは日本経済新聞の取材に対し、「個別の監査業務・被監査会社に関することはコメントを控える」(広報)としている。
- 金融庁の19年の「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書によると、通常と異なる監査意見となった場合、監査人は監査報告書やそれ以外の手段を使って投資家への説明責任を十分に果たすよう求めている。「監査人が必要な説明・情報提供を行うことは、公認会計士法上の『正当な理由』に該当し、守秘義務違反とならない」としている。
- ニデックはグループ会社を含め不適切会計の疑いが浮上し、第三者委を設けて調査を進めている。6月には25年3月期の有報の提出期限を関東財務局に延長してもらい、9月26日がその期限だった。今回、再延長申請も可能だったが、第三者委による調査終了時期が見通せないことなどから有報の提出に至ったようだ。26日には別の不適切処理が疑われる案件も判明している。
- PwCジャパンは23年にPwCあらたとPwC京都が合併して発足した。ニデックの会計監査はPwC京都前身の京都監査法人が08年3月期から担当している。24年3月期までの有価証券報告書の監査意見はすべて「適正」だった。25年3月期の監査報告書には4人の公認会計士が署名しており、監査報酬は子会社分を含めて9億7700万円だった。
- PwCとニデックを巡っては、23年にニデックが会社法で定められた分配可能額を上回る株主還元を実施していたことが明らかになった。その際、ニデックは適時開示で「監査法人も見落としにより指摘できていなかった」と言及。旧PwC京都は「(ニデックの適時開示の)記載と相違はありません」とコメントを出した。当時、他の監査法人からは「監査法人に責任転嫁しているように見え違和感がある」との声が出た。