円相場は安定するのか 「高市政権」と米利下げ観測、双方に変動要因https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB182QH0Y5A011C2000000/
【コメント】
- けさは朝刊休刊ですが、ドル円が動いといることで日経電子版が解説をのせていますので取り上げます。
- 高市氏の総裁就任で153円程度まで円安が進みましたが、ここにきて149円台に戻す場面がありました。現在は150円ちょうどです。
- 高市氏と野党各党は財政出動による経済対策を志向していることから円売りとなりましたが、一方米国の地方銀行の信用不安が発生し利下げの勢いが増すとの予想が強まりドル安の傾向が顕在化しています。
- 明日は首相が決定します。おそらく高市氏が首相に就任すると思われますが、米国地銀の混乱による利下げ加速観測との綱引きが起こり、ドル円は安定しないようです。
- 為替水準の予想は非常に難しいですが、これまで140-150円のレンジでしたが、今後は145-155円とレンジを切り下げていく可能性もあります。
【記事概要】
- 外国為替市場で円相場が揺れている。16日明らかになった米地銀問題を受けて米利下げ観測が強まり、17日の東京市場では一時1ドル=149円台まで円高が進んだ。焦点は円安進行が一服し、相場が安定するかどうか。高市早苗・自民党総裁を首相とする新政権の発足や米利下げ観測の行方が左右する。米政府閉鎖後で初の公式主要統計となる消費者物価指数(CPI)も変動要因だ。
- 先週の対ドル円相場は週後半にかけて円高が進んだ。週前半は1ドル=151〜152円台で推移したが、16日に米地銀の信用問題が話題になると米長期金利の低下を受けて円買い・ドル売りが膨らんだ。17日の東京外国為替市場では2週間ぶりに1ドル=149円台まで円高・ドル安が進んだ。
- 自民党総裁選の高市氏勝利後に進んだ円安は、同氏の志向する積極財政と慎重な利上げを見込んだ円売りが主な要因だった。ところが米地銀の信用リスク騒動とリスク回避ムードのなかで米ドル全面安となり、円も一部買い戻された形だ。
- 今週の焦点は155円台を目指すような円安進行局面が再び来るかどうかだ。市場の関心は①自民・高市総裁の首相就任が実際に決まるか②米利下げ観測の行方――の2点に集まる。双方に変動要因がある。
- まず日本では21日召集の臨時国会で首相指名選挙が控える。自維両党の政策協議は前進しており、自民党の高市早苗総裁の首相就任が見込まれている。維新が協力する形で政権が発足した場合、高市氏の志向する政策を進める基盤が整う。
- 新政権の経済政策はガソリン軽油の暫定税率廃止や「年収の壁」引き上げなどが柱になりそうだ。「財政拡張への懸念から円売りが再燃する可能性がある」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)との指摘があった。
- 次に米金融政策の行方。10月28〜29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える。市場は10月と12月のFOMCでそれぞれ0.25%の利下げを決めると100%織り込んでいる。利下げ見通しが揺れれば日米金利差を通じて円相場も振れやすくなる。
- 米地銀の信用問題は一時、米景気懸念と利下げ織り込みの加速につながった。16日には1回利下げ幅が0.5%を超える「倍速利下げ」に年内1回以上動くとの織り込みが2割に達した。ところが17日の市場では過度な警戒感がいったん落ち着き、倍速利下げ予想もほぼ消えた。
- 市場では「金融システム全体に波及する信用不安ではない」(東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト)との見方が広がる。今週も米地銀の信用問題が沈静化に向かえばドル全面安傾向は止まり、再び円安に進みやすくなる。
- 市場が今週注視するのは24日公表の9月の米CPIだ。政府機関閉鎖で重要政府統計の公表が止まっているが、給付などの算定に必要なCPIに限り、当初予定に比べて遅れて発表されることになった。
- 英LESGによると市場では前年同月比3.1%上昇(原数値)と8月(2.9%上昇)から加速が見込まれる。前月比(季節調整値)は0.4%上昇と8月と同水準だ。関税が引き続き商品価格を押し上げる。市場予想並みであれば「FRBの次の政策判断に影響する可能性は低い」(米バンク・オブ・アメリカ)との指摘がある。
- 一方でCPIの上昇率が市場予想を大きく上回った場合は円安が再加速する可能性がある。インフレ懸念が残る限りは、FRBも米国の労働市場を下支えするための利下げにも動きにくいとの見方につながり、米金利上昇と日米金利差の拡大で円売り・ドル買い要因となる。
- 対米ドル以外の円相場をみれば、円売り優勢の傾向は止まっていない。対ユーロや対スイスフランなどは史上最安値圏で推移する。現時点で新政権の政策や米地銀問題の行方を見通すのは極めて難しいが、総じて対ドルでも円安が進みやすい環境であることに変わりはない。当面の目安として10日に付けた1ドル=153円20銭台の直近安値が意識されている。
