海外事業者と取引を行う際は、海外送金が発生することが多いかと思います。
今回は「海外送金」をテーマに、送金にかかる税金の解説や主要な送金方法の比較をしていきます。

 

海外送金の課税

海外送金に関して、課税されることはあるのでしょうか。送金金額自体と送金手数料(為替手数料等を含む)に分けて解説します。

送金手数料に対する消費税

送金手数料自体(送金手数料に含まれる為替手数料等を含む)は、「外国為替業務に係る役務の提供」にあたるので、非課税取引として消費税は課税されません。

 

送金額自体

送金手数料には課税がなくても、海外送金の対象となる取引自体には内容に応じて以下の課税が行われる場合があります。
消費税に関する記事はこちら所得税に関する記事はこちら

 

その他の税金

国内から海外へ送金する際に、贈与税の対象となる場合があります。

贈与税は個人から贈与により財産を取得した場合にかかる税金ですが、海外送金が贈与とみなされる着目点としては、送金者と受取人の関係性、送金額、送金の目的などが考慮されます。国税庁HP「受贈者が海外に居住しているとき」内の黒網かけに該当する場合は贈与税が課税されます。

なお、海外送金が贈与税の課税対象となる場合でも、暦年課税に係る基礎控除額として1年間に110万円以内であれば贈与税は発生しません。

  

海外送金に関連する税務上の注意点

税務署は一定の国外送金(100万円相当額の送金が目安)については、金融機関が税務署に報告する「国外送金等調書」により内容を把握できます。そのため、金額に限らず以下の適切な管理が求められます。

 

経費計上について

企業が事業目的で海外送金を行う場合、送金手数料は経費として計上できます。その他、外注費や旅費交通費は一般的な国内取引と同様に経費計上可能ですが、経費が業務に関連して発生していることを証明する書類を保存の上、送金手数料を含め、適切な帳簿管理と領収書の保管が必要です。

 

税務申告について

海外送金に関連する費用や手数料を正確に税務申告することで、税務署からの指摘を回避できます。

特に大規模な送金や頻繁な送金を行う場合は、外部の税理士のアドバイスを受けることが大切です。

 

海外送金方法の比較

海外送金は、​これまで​は銀行送金が​一般的で​したが、​近年は​Wiseや​PayPalなどの​オンラインの​送金サービスや​アプリの​利用も​広がっています。

状況にもよりますが、弊社では基本的にWISEでの取引をお勧めしております。ただし、​送金の​目的や​頻度、​金額、​送金先の​国などの条件、​法律規制、税制に​よって​最適な​選択肢は異なります。

まずは、それぞれの送金方法の特徴や長所短所を説明します。

 

国際銀行送金(SWIFT送金)

特徴
・銀行を通じて、送金元から送金先の銀行口座に直接資金を送る方法です。
・銀行間で仲介する銀行(コルレス銀行)を複数はさむため、手数料や時間が多くかかります。
・仲介には、SWIFTネットワーク(国際銀行間金融通信協会の略)を使用します。

 

利点
・世界中のほとんどの銀行で利用可能で、信頼性と安全性が高いです。
・送金上限額が高く設定されており、100万円超の大口の送金にも適します。
・送金の進捗を追跡することが可能です。

 

注意点
・手数料が高額になることが多いです(送金銀行では送金手数料、中継銀行ではコルレス手数料、受取銀行では受取手数料がかかる等)。
送金に少なくとも3~5日かかることが多く、土日や祝日を挟むとさらに時間を要する可能性があります。

 

オンライン送金サービスでは、少し前まではPayPalが有名でしたが、最近ではWISEがさらに為替手数料をカットして迅速かつ安い海外送金を可能にしています。ここではオンライン送金サービスとして代表的なPayPalとWISEの解説をします。

オンライン送金サービス

特徴
インターネットを利用したオンライン決済サービスで、個人や企業間での送金に利用されます。
海外送金サービス会社内の口座の移動で送金が完結するため、24時間365日いつでも簡単かつ迅速な送金が可能です。

 

 ペイパル(PayPal)

利点
・200国以上、22の通貨に対応しています。
・受取人がPayPalアカウントを持ち、銀行口座を登録していれば、即座に送金が完了します(個人間送金ではクレジットカード等のカードの利用はできません)。

 

注意点
・送金金額や通貨に応じた手数料が発生します。
 ※送金手数料499円
 ※通貨が異なる際は、送金側が負担する場合は4%、受取人が負担する場合は3%の為替手数料が上乗せされたレートで計算されます。
・送金の上限金額があり、1回あたり100万円までです(第二種資金移動業者のため)。
・一部の国や地域で利用制限があります。

 

WISE(旧:TransferWise)

利点
・手数料を安価に抑えられることが多いです。
 ※送金手数料1,212円~
 ※為替レートは常にリアルタイムの為替レート

・アカウントを持っていれば、即座に送金が完了します(大半が24時間以内に着金)
・複数のアカウントを持つことはできませんが、1アカウント内で10通貨の口座情報を取得(=マルチカレンシー口座を持つ)できます。
・銀行口座を持たない人にも対応しています(送金方法は、マルチカレンシー口座の残高、デビットカードもしくは銀行振込。受取方法はWiseのマルチカレンシー口座等)。

 

注意点
・100万円を超える場合は「SWIFT」での送金になり追加の手数料がかかります。
 ※2024年に第一種資金移動業者として登録・認可され、最大1億5000万円相当額の送金を行うことができますが、WISE残高からの出金やWISEのアカウントで保有できる資金の限度額は100万円までです。
・一部の国や地域で利用制限があります。(詳細はWISEのHPをご覧ください。)
・現金や小切手での取引はできません。

 

 WISEの登録のおすすめ

これらを踏まえて、状況にもよりますが、弊社では基本的にWISEでの取引をお勧めしております。

WISEのアカウントには、個人アカウントと法人アカウントがあり、個人アカウントは個人取引にのみ使用可能で、法人アカウントはフリーランスや個人事業主の方も法人取引にのみ使用可能です。 

いずれのアカウントも、初期費用や月額料金は無料、アカウントに保有しなければならない最低金額の縛りもありません。開設するハードルは高くないので、海外との取引の多い事業者の方は、ぜひ利用を検討してみてください。

 

ただし、主な注意点として以下の点が挙げられます。

・信託会社、財団、慈善団体、非営利団体(NPO)は登録できません。
・SWIFT送金で米ドルやカナダ・ドルの受取りには入金ごとに固定手数料がかかります。
・SWIFT送金での受取りには中継銀行手数料等がかかる可能性があります。

 

各国の送金規制等

カントリーリスクの一つとして、海外送金を行う際に各国の外貨規制が存在するケースがあります。

政治情勢が変化すると、規制内容が変わる可能性もあるので、注意して現在の状況を把握することが大切です。例えば、日本貿易振興機構(JETRO)のWEBサイトから状況を追うことが可能です。

 

また、国内の規制として、「海外の銀行」から「日本の銀行の口座」で受領する場合、又は「日本の銀行」から「海外の銀行の口座」への送金を行う場合、外国為替及び外国貿易法第55条の規定により、送金額が3,000万円相当額を超える場合に、財務大臣への事後報告として、日本銀行や取引を行った銀行等に対し「支払又は支払の受領に関する報告書」を提出する事後報告の必要があります。

なお、提出期限は、銀行等を経由する場合は取引実行日から10日内、経由しない場合は取引実行月の翌月20日と、取引方法や内容によって事後報告方法が異なるので注意が必要です。事後報告の詳細は、下記日本銀行のリンクをご覧ください。

 

まとめ

今回は「海外事業者との取引における海外送金」を解説しました。

海外送金には様々な種類があり、送金の目的や頻度、金額、送金先の国などの条件、法律規制、税制によって最適な選択肢が異なることがあります。また、海外送金に関連してかかる税金も様々なケースが考えられますので、適切な帳簿管理と領収書の保管、適切な税務申告を徹底することが大切です。

 Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。
何かありましたら、お気軽にご相談ください。


【海外事業者との取引におけるその他の記事】
・消費税に関する記事はこちら
・所得税に関する記事はこちら