IPO、公器への転換を自覚せよhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260309&ng=DGKKZO94834780W6A300C2KE8000

【コメント】

  • イラン情勢は相変わらずで終わりの見えない戦いが続いていますが、今朝は新規株式公開に関する非常に良いコメントが掲載されていたので取り上げます。
  • 下の本文を是非一読ください。

【記事概要】

  • 近年、新規株式公開(IPO)を目指す企業の不祥事が後を絶たない。ガバナンス不全、役員によるハラスメント、そしてそれを「なかったこと」にする組織的対応。これらは決して一部の例外ではなく、構造的な問題として繰り返されている。
  • 私の身近でも、IPO準備を進める企業で管理部門の役員によるハラスメントが発生し、内部で問題提起がなされたにもかかわらず、創業者や監査役が実質的にこれを黙認し、最終的には事実上のもみ消しに至った事案があった。形式的な調査は行われたものの、結論は会社側に都合のよいものに収束し、被害者を守る仕組みは機能しなかった。
  • IPOとは、本来「公器」への転換である。創業者や一部役員の私的な成功や財産形成のためのイベントではない。株主、従業員、取引先、そして社会全体に対して説明責任を負う存在になるという覚悟が問われるプロセスであるはずだ。
  • しかし、現実にはIPOを最重要課題とするあまり、「上場に不利になること」は見て見ぬふりをされがちだ。主幹事証券は引受手数料という利益を優先し、顧問弁護士は「波風を立てない」調査結果をまとめ、内部告発者やハラスメント被害者は置き去りにされる。誰もがリスクを回避する一方で、正義を引き受ける主体が存在しない。
  • 近年のIPO関連不祥事は、この構造的欠陥を象徴している。短期的な上場の成否ばかりが重視され、企業として最も重要な「信頼」が軽視されているのではないか。日本経済は少子高齢化や国際競争力の低下、深刻な労働力不足に直面している。良質なIPOベンチャーが継続的に生まれ、高付加価値産業が拡大すれば、生産性向上を通じた労働力不足の解決が進み、日本経済の新たな成長ドライバーとなり得る。
  • だからこそ、IPOを目指す企業には、技術力や資金力だけでなく、人権を尊重し、不正やハラスメントを許さない文化が求められる。IPOはゴールではなく、社会から信任を受けるスタートラインである。その原点を、いま一度、関係者全員が問い直すべき時ではないだろうか。