ウォール街がトランプ氏を抑止 急所の米国債が「TACO」促すhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN101HD0Q6A410C2000000/
【コメント】
- トランプ大統領が示した停戦期間終了が今週21日(日本時間22日)に迫っています。
- 停戦期間が終了すれば、アメリカはイランの発電所など重要インフラ施設を破壊することになっています。
- 国際法違反とされる攻撃を控えていることから、トランプ大統領は早期終結を滲ませる言動が、この週末に目立っていました。
- 一方のイランは、アメリカの条件に合意できず、協議に参加するつもりはないと表明しており、今後の約2日、株式市場や債券市場は乱高下する可能性があります。
- ガソリン価格の大幅上昇や政策金利の高止まりによる高い住宅ローン金利への米国民の不満が募る中で、TACO(Trump Always Chickens Out(トランプ氏はいつも腰砕け))を期待した米国株の上昇が先週末に見られました。これを受け今日の日本株も上昇すると見られています。
- これまでは米国債は中東諸国や新興国などのベースとなる運用として保有され、価格が安定的でしたが、ドル離れにより米国債は経済状況に敏感に反応する機関投資家の手に移っています。
- トランプ大統領がイラン問題で強気に出ると米国債の価格は大幅下落(金利上昇)する恐れがあり、またこれを受け株価下落が懸念されます。
- あと約2日。トランプ大統領は再度TACOを発動し、停戦期間を延ばすのでしょうか?(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- 米国とイランの停戦を期待し、日米株が最高値を更新した。トランプ政権が軟化したのはホルムズ海峡封鎖が市場の混乱を通じて自身の政権基盤を揺るがすためだ。世界秩序を意に介さない政権をも市場が突き動かす。
ローン高く不満
- 「株価は上がっている。全て順調だ」。16日、トランプ米大統領はガソリンの値上がりについて記者に問われると株価を持ち出して反論した。
- 米国株は17日も上昇し最高値を更新した。イラン攻撃後の底値は3月30日。トランプ氏が「2〜3週間で終結」と早期幕引きの姿勢を強めてから市場は「TACO」を期待し上昇に転じてきた。
- TACOはTrump Always Chickens Out(トランプ氏はいつも腰砕け)の頭文字をつなげた略語で、英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニストが考案した。強硬策で市場が荒れるとトランプ氏が拳を下ろす様を皮肉っぽく表す。
- 国際法違反とされる電力施設の攻撃すら脅しに使うトランプ氏だが、市場には動かされやすい。株価以上に反応しやすいのが金利の上昇だ。
- 米中西部ミズーリ州、カンザスシティー在住のニコール・ウィットロックさんは結婚を機に夫と家を買った。約25万ドル(約4000万円)が残る30年ローンの金利は6.8%。借り換えを探るが金利が上がり、待つしかない状況だ。「周りをみても誰も家を買う余裕がない。本当に悲しいことだ」と語る。
- 春は住宅市場に供給が増え、売買が活性化する繁忙期。そこに紛争による住宅ローン金利上昇が直撃した。南部テキサス州フォートワースの不動産仲介業、マシュー・クライツさんは「熱心なトランプ支持者にも、住宅ローン金利が下がらないことに不満を感じている人は多い」と話す。
- 市場が政策に不安を感じると国債が売られて利回りが上昇し、住宅ローンに波及する。高金利に悩む有権者の不満として政権に跳ね返る。
- 25年1月の第2期トランプ政権発足以降、相互関税の一部停止や中国への追加関税引き下げ合意、デンマーク領グリーンランド取得に向けた武力行使の否定といった「TACO事例」は、金利が急伸したタイミング近辺で起きている。
ペトロダラー退潮、強まる債券自警団
- 3月23日には直前まで4.44%台と8カ月ぶりの高水準まで上昇していた米長期金利が4.30%まで急低下した。トランプ氏が「インフラ攻撃を延期するよう指示した」とSNSに書き込んだことに反応した。
- 債券市場が政治を抑止するという考えは新しいものではない。
- 1980年代に「債券自警団」という言葉を生み出した米著名ストラテジストのエドワード・ヤルデニ氏は「政策当局者が規律を維持しない場合に、市場が規律付けを代行するというのが『自警団』の根幹だ」と話す。
- トランプ氏の翻意は「ウォール街がワシントンの政策決定に確かな影響力を持つことを示した」とヤルデニ氏はみる。
- 米国債需要を支えてきた国際的な資金循環は変化している。
- 70年代の石油危機下で米国とサウジアラビアが交わした合意により、原油取引はドル建てになった。中東産油国は米国から軍事支援を受ける代わりに、原油輸出で稼いだドルを米国債の購入に充当。米国債需給のアンカー役を担い、ペトロダラー(オイルマネー)と呼ばれた。
- 80年代にはサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートの3カ国だけで海外保有分の3割弱を占めた。
- 近年はシェール革命でエネルギーの純輸出国に転換した米国にとって、中東の戦略的重要性は相対的に低下した。第三国の口座で管理する分があるとみられるが、足元では3%程度にとどまる。
- 中国など経常黒字国による米国債買いも減っている。米ドルを使った経済制裁や米国の債務拡大を目の当たりにし、外貨準備を金などに分散しているためだ。米国債は国内外のヘッジファンドや投信運用会社など機関投資家の保有割合が高まり、価格が動きやすくなった。
- 米憲法で大統領3選は禁じられており、トランプ氏が有権者の審判を受けるのは11月の中間選挙が最後となる。残りの任期中の大統領権限行使を阻むものはほとんどなくなる。市場すら抑止できなくなるかもしれない。
- 著名投資家で世界秩序の歴史を研究するレイ・ダリオ氏は、「市場の混乱は『症状』であり、政治の機能不全こそが『病原』だ」と指摘する。
