沈むな日本車 「安く速い」に勝てぬ現実  成功体験を捨てよ 中国から学び米・印へhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260714&ng=DGKKZO97533660U6A710C2MM8000

【コメント】

  • 日本のお家芸である自動車産業が窮地に立たされています。
  • 欧州車とともにここ約5年で世界シェアを落とし、もはや中国に抜かれる寸前です。
  • 日本は「すり合わせ技術」をもとに10年前には「中国車は日本車に追いつけない」と言っていました。エンジンが主体だった過去には日本やドイツの精密な機械技術が圧倒的優位でした。
  • しかしもはや自動車はスマホと同様なデジタル商品と化しています。中国企業がデジタル商品の世界の工場となってきたことにより、中国のデジタル技術は今や一級品です。輸入車扱いの伝統あるヤナセが中国BYDの日本代理店を開始するとの発表もありました。ヤナセはBYDの商品力を認め、もはやベンツやBMWと同様にBYDを扱う意向だと思います。
  • エンジン主体の自動車からEV化や自動運転化への政府の政策遅れも日本車メーカーの弱体化につながっていると感じます。
  • 今日の別記事で、総務省が無人自動運転に必要な通信網を全国に整備するとの記載があります。すでに米ウェイモや中国の百度(バイドゥ)が自動運転タクシー(ロボタクシー)を事業化している現状を直視し、EVや自動運転の技術向上を図らなければ、日本の自動車産業の復権は望み薄で、日本経済がさらに地盤沈下する恐れがあります。

【記事概要】

  • 4月中旬、ホンダの三部敏宏社長が独り中国・広州市の空港に降り立った。出迎えた駐在幹部と足早に空港を後にし、合弁を組む中国車大手の広州汽車集団などを3日間で回った。
  • 前月に電気自動車(EV)戦略の撤回にともなう巨額損失を発表し一部から退任圧力が強まるなかでの訪中だった。

中身は中国車

  • 1カ月後の5月14日、三部社長は中国メーカーの「車台」をホンダ車に採用すると表明した。車台は車の基本構造にあたり、価格や走行性能を決める。そんな最重要部分を中国メーカーに任せることになる。
  • 実は3年前にも同様の検討をした。広州汽車のEV車台をテストしたが採用を見送った。
  • 自前路線は裏目に出た。中国勢が高機能のEVを相次ぎ投入するなか、ホンダの中国販売は2025年に23年比で半減。部品メーカー幹部は「同等以上の機能を持つ現地メーカーに対し、ホンダは10万元(約240万円)以上高い」と明かす。
  • ホンダだけではない。トヨタ自動車が3月に中国で発売したEV「bZ7」はシルエットが広州汽車の「A800」に似通う。前後輪の間の長さなどはミリ単位で一致する。トヨタの中嶋裕樹副社長は「まずはパートナーから車をもらう段階」と割り切る。
  • いま中国で売れている日本ブランドのEVは程度の差こそあれ「中身」は中国車となっている現実がある。日産自動車マツダは中国外への輸出も始めた。
  • 「中国車は日本車に追いつけない」。日本メーカー幹部が口をそろえた2010年代は今や昔だ。中国勢はクルマをデジタル製品ととらえ、日本勢の成功体験だった「すり合わせ」とは異なるクルマづくりを確立した。
  • 「黒灯工場(ダークファクトリー)」。24年3月にEVに参入した小米(シャオミ)は自社工場をこう呼ぶ。ロボットや人工知能(AI)を駆使して無人状態を維持し、照明が要らない工場を目指している。

シェア逆転目前

  • 中国勢は開発にもAIを積極的に取り入れ3交代24時間体制で進める。開発スピードは従来の日本車の2倍だ。EV電池やレアアース(希土類)を含め、官民挙げてつくり上げた新たなサプライチェーン(供給網)が安さと速さを支える。
  • 米調査会社によると、中国メーカーの世界市場での販売シェアは25年に25%となり、10年間で倍増した。一方、日本勢は4ポイント減らし26%に低下、逆転が迫る。
  • この状況はかつて「家電の王様」と呼ばれたテレビを想起させる。今では東芝の「レグザ」やソニーの「ブラビア」などの製品が中国家電大手のもとで開発・生産されることになる。
  • 国際競争力が低下する日本の自動車産業への成長期待はしぼむ。日経平均株価が過去5年で2.5倍になるなか、ホンダの上昇率は3割、トヨタですら4割にとどまる。
  • トヨタは「雌伏」の先をうかがう。上海市に100%出資の新会社を設立し、高級車ブランド「レクサス」のEVを27年から生産する。まずは中国勢から学び、取り込んだうえで再び自社開発で競おうとしている。
  • 中国勢は待ってはくれない。彼らがまだ入りこめていない米国やインドへのアクセスを生かすときだ。世界2位と3位の巨大市場で、中国流のコストとスピードに、強みを持つ高い信頼性を融合し成長する必要がある。
  • ホンダの三部社長は新しいクルマづくり習得へ覚悟を口にする。「勝てる手段を3年以内に『手の内化』する。できなければ危機だ」。
  • 日本の自動車産業が追われる立場から追う立場に変わった。日本の全産業の1割にあたる559万人が関連産業に従事し、名目GDP(国内総生産)に占める出荷額の比率は1割強と衰えていない。屋台骨が揺らげば日本経済が揺らぐ。