日米協調介入を機に政策の規律をhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260804&ng=DGKKZO97954640U6A800C2EA1000
【コメント】
- 日米両財務相がドル円の協調介入を実施したことを正式に表明しました。米国がユーロを売って円を買うという手段で円安を止める介入を実際に行ったことはある意味サプライズです。おそらくユーロを売られる立場のECB(欧州中銀)も介入を認めたのだと思います。日米欧が揃って円安是正に動いたことになります。
- この協調介入によりドル円は一気に10円近く円高に振れました。今も157円前半です。
- 日本単独ではなく、欧州の承認のもと米国も介入に参画したことは相当に強力なドル円市場へのメッセージで、今週からドル円のトレンドが変化したと感じます。
- この協調介入により、日本政府は米国政府に大きな借りをつくりました。日銀の利上げ遅れ、高市政権の積極財政の方向転換を迫られます。
- そもそも円安の根源は、財政悪化と異常な低金利にあります。これを修正すれば少なくともこれ以上の円安に歯止めはかかります。輸入物価に下落効果があります。
- しかし、利上げと積極財政の修正は経済活動に打撃を与える可能性があります。設備投資意欲が削がれ民間企業は再度守りの経営に陥入り日本株の株価低迷を引き起こす可能性があります。また円高によりNISAなどで行っている投資利益が目減りする可能性があります。
- 本当に積極財政の修正を実行するならば、現在決めかけている消費税減税実施は論外です。輸入物価下落実現の円高誘導ならば、消費税減税は控えても良いのかもしれません。
- 日銀の利上げや高市政権の積極財政の方向転換を早期に打ち出さなければ、再度円安ドル高に戻っていく可能性があります。
- しかし高市首相は、積極財政と低金利政策による日本成長戦略は変更しないと感じます。再三のドル円介入をどこまで継続できるのか、それまでに強い日本経済が構築できるのか、、、どうなのでしょうか?
【記事概要】
- 日米両政府が28年ぶりに協調して円買いの為替介入に動いた。歴史的な円安に対抗し、一致して行動した意味は大きい。米国の協力は円安が日本の長期金利の上昇と連鎖し、世界の市場が混乱するという危機感の裏返しだろう。
- 問われるのは日本政府・日銀の政策対応だ。円安の背景にはインフレや財政悪化の不安がある。政府はまず財政支出を巡る節度を確立し、日銀は利上げの出遅れ懸念を払拭する必要がある。
不安呼んだ日本の脆さ
- 日米通貨当局は米現地時間の7月31日に協調介入を実施した。米当局は円買い・ユーロ売りの取引だったとみられる。
- 片山さつき財務相とベッセント米財務長官はそれぞれ公表した談話で協調介入を認め、「無秩序な変動に対抗する」狙いがあり、「さらなる協調行動をためらわない」とほぼ同じ表現で強調した。
- 歴史的な円安に日米が具体的な行動で一致したのは評価できる。円相場は7月下旬には一時1ドル=164円に迫り、1986年11月以来の安値をつけた。中東情勢の緊迫で原油高の懸念が続くなか、円安は輸入物価の高騰を通じて国内の物価高に拍車をかける。
- 協調介入は原則、緊急時にしか発動せず、その意味は重い。直近は2011年で、東日本大震災後の円高局面での円売り介入だった。円高に苦しむ歴史が長かったため、今回のような円買い協調は1998年以来で異例だ。
- 当時は日本が金融不安のさなかで、アジア通貨危機とあいまって円の急落が国際市場の不安要素に浮上していた。米側は日本に銀行の不良債権処理と経済活性化を求めたとされる。
- 今回も日本の脆(もろ)さが不安を呼んだ。日本は債券安にも直面し、10年物国債利回りは7月に一時2.9%と約30年ぶりの水準に上昇した。ベッセント氏は日本発の円安・債券安が世界の金融市場に混乱をもたらし、米経済安定の生命線である米債券市場に波及するリスクを意識していよう。
- 米中対立が深まるなか、日本は中国に代わる米国債の最大の買い手の地位を保つ。日米の金融面での相互依存関係は強まっている。
- 介入の際に日本が保有する米国債を大量に売ると米長期金利の上昇要因になる。日米は米当局から米国債を担保にドル資金を調達する危機対応の仕組みを今後の介入に活用する点でも合意した。
- 三村淳財務官は「今回の協調介入はいわば日米通貨同盟の完成形だ」と語った。経済安全保障の観点でも、日米が通貨安定で連携を強化するのは望ましい動きだ。
- もっとも、日米の協調介入だけで円安・債券安の流れそのものを転換できるとは限らない。
- ベッセント氏が協調に応じたのは、単に同盟国である日本の経済運営を支援しようというだけではないだろう。表向き高市早苗政権の政策を支持するものの、政府・日銀に対し、物価の安定を主眼に置いた経済政策の運営を求めている可能性が考えられる。
- 米国に言われるまでもない。協調介入という「時間稼ぎ」の間に、政府・日銀がどんな政策対応をとるかが問われている。
- 首相が表明した2年限定での食料品を対象にした消費税率の引き下げ方針は、明確な財源が示されないまま、自民党内で議論が進んでいる。
市場が信頼する財政に
- 消費税収が支えてきた社会保障制度の財源に穴が開く。財政の信頼が揺らいで円安進行を招けば、かえって物価高が進みかねない。撤回が望ましいが、議論を詰めるにしても期間を限る制度的な保証や財源の明確な説明が大前提だ。
- 市場の信認を得るうえでは来年度予算の編成が焦点だが、出発点である概算要求基準は「青天井」となった。真に経済成長に役立つ支出に絞る選択と集中に加え、歳出の抑制が欠かせない。財政規律の確保に向けたより確かな健全化の道筋の提示も急がれる。
- 日銀も物価の上振れリスクを踏まえ、利上げの加速も視野に入れてもっと強い姿勢を示すべきだろう。政権内にはなお利上げに慎重な空気が残る。首相自ら利上げ路線を支持すると宣言すべきだ。
- 拡張的な財政を続けて日銀の利上げに慎重な姿勢を貫くなら円安が続くのは自明だ。そのしわ寄せを為替政策だけに負わせれば、いくら日米協調を貫いても、円安の抑止効果は短命に終わる。
- 為替などの市場の安定は物価の安定と並び、長い目でみた経済成長の大前提である。市場の信頼を得るべく、政府・日銀は経済政策の規律を取り戻すときだ。
