エネ補助金が阻む円安修正 資源高でも減らぬ内需、ドル買い圧力にhttps://www.nikkei.com/paper/20261021M101/DTC0000/article/DGXZQOUB15AVL0V11C26A0000000
【コメント】
- 原油をはじめとした資源高が円安の原因になっています。
- 通常、価格が上がれば需要が減るのですが、ガソリンなどの補助金が需要減少に歯止めをかけており、原油の輸入量は昨年比で上回っているようです。
- 昨日の原油価格は100ドルを超えており、高い原油を相当量輸入するので円安が助長されています。
- 原油だけではなく銅などの非鉄金属も値上がりしており、これも円安につながっています。加えて、食肉や医薬品の輸入額も増加しており、円安を加速する要因になっています。
- 日本の半導体は輸出超過ですが、最近では高性能半導体(NVIDEA製など)の輸入量が増加しており、半導体分野の貿易黒字は縮小傾向にあります。
- 日本企業や個人の対外投資の増加やデジタル課金の支払い増加も相まって、円安修正が実現する流れは見えていません。
- 日米両政府による為替介入の神通力も萎えてきており、一部のアナリストは当面再度165円を試す展開もあると述べています。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- 対ドルの円相場がじりじり下落している。中東危機による原油高が長引く中、実需の円売り・ドル買い圧力が収まらない。相次ぎ浮上する新たなエネルギー補助金が輸入需要を下支えし、貿易収支の悪化が一段と粘着質になるとの見立てが増えている。
- 9月に一時1ドル=152円台まで円高・ドル安が進んだ円相場は、足元で158円台で推移する。「(日米当局が試みる円安修正で)政治的には円売り要因が小さくなったが、気を抜けば円が下落する状況」。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のヨム・グリム外国為替・コモディティ営業部ディレクターは話す。
- 円高を阻む要因の筆頭は、資源価格の高止まりに伴う根強い実需の円売りフローだ。日本はエネルギーや鉱物資源を輸入に頼る。ドル建てで取引される国際商品を購入するには円を売ってドルを買う必要があり、資源高は貿易収支の悪化を通じて円安・ドル高圧力となる。
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「資源高は円安圧力の中でも粘着質で突出して力が大きい」と語る。北海ブレント原油先物の期近物は20日に1バレル110ドルを超え、5月以来の高値となった。市場が注目するのが価格の高さに加えて、輸入量の増加で輸入額が膨らんでいる事実だ。
- 貿易統計で月次の原油輸入量をたどると、4〜5月はホルムズ海峡の実質封鎖の影響で輸入は急減したが、米国など代替調達先の確保で6月には回復。7〜8月は前年同月を上回り、欧州の調査会社ケプラーによると9月も前年超えとなったようだ。
- エネルギー価格が上がることで消費量が減れば、全体として輸入にかかる費用は抑制される。ところがガソリンは政府が石油元売り会社に支給する補助金で値上がりを防いでいる。本来1リットル200円を超える店頭価格が170円台に抑えられ、消費を下支えしている。
- ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは「輸入量の増加には在庫確保に加え補助金の存在がある」と指摘する。春先に原油が100ドルを超えていた時は中東産の供給制約から購入量も減っていたが、今は代替調達が進む。「価格上昇と調達増が重なって一段と貿易収支を悪化させる」と話す。実際に原油の輸入額は8月に1.2兆円と前年同月比6割増えた。
- ここにきて新たなエネルギー補助金の導入案も浮上する。今月16日、赤沢亮正経済産業相は冬場の灯油価格の上昇を抑えるため、輸入価格と国内卸価格の差額を国が補助する仕組みを導入すると発表した。昨年の国内の販売数量で灯油はガソリンの4分の1ほどの規模がある。18日には自民党幹部が電気・ガス代補助の再開にも言及した。
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野氏は「補助金の拡大が日本の財政を悪化させるという面でも円安圧力になっている」と指摘する。債務の膨張は日本円の価値の希薄化につながる。
- エネルギー価格を押し上げる中東情勢は改善が見通せない。仮にホルムズ海峡が自由に航行できるようになったとしても、原油価格はすぐに下がらないとの見方がある。ANZのヨム氏は「供給が回復すれば今度は備蓄の買い戻しが始まり、数年は価格の下支え要因になる」と予想する。
- 国際相場以上に日本が輸入するエネルギーは高い。中東以外やホルムズ海峡を迂回するルートから代替調達を進めると、輸送コストが上乗せされる。足元では原油などを運ぶタンカーの運賃も高騰しており、コスト高に拍車をかける。
- 資源高の波は原油に限らない。国際商品の総合的な値動きを示すFTSE・コアコモディティーCRB指数は2008年に付けた最高値を射程に収める。
- 中でも非鉄金属の銅は9月に付けた史上最高値圏で推移している。人工知能(AI)に欠かせないデータセンターの設置や、それに伴う巨大な電力需要を満たすインフラ整備には大量の銅が必要になる。マーケットエッジの小菅努代表は「鉱山からの供給が年々細る中で需要が急拡大しており、上昇圧力は長期化する」と指摘する。
- 資源は日本の経済活動の基盤だ。原油などの調達先の多様化や輸入量の確保は安全保障上避けて通れない。外国為替の視点から見れば、長引く資源高が円の上値を抑え続けることになる。
