起業家が萎縮する「ゼロリスクルール」 日本のVC投資、米国の1.5%https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC019P60R01C26A0000000/
【コメント】
- 昨日、米アンソロピックがIPO(新規株式公開)の目論見書を公開し、いよいよ史上最高額となるIPOが現実味をおびてきました。
- 米アンソロピックは2021年1月に創業、創業5年です。5年で史上最高のIPOを行うに至った原動力は、米国のV C(ベンチャーキャピタル)です。
- 日本はどうでしょうか?記事にあるように日本のV Cは「ゼロリスクルール」が根底にあります。2000年代前半のIT(情報技術)バブルの崩壊で、日本のVCはリスクを必要以上に避ける投資ルールを強固にしてきたことから、投資の確実な出口を優先する傾向にあります。
- この投資思想がある限り、成功の不透明さと巨額資金が必要なディープテック(先端技術)の育成は不可能と思われます。
- 民間V Cの保守的な投資姿勢があることから、日本は政府主導で先端技術開発の資金提供をするという考え方があるのだと思います。しかし商売の経験のない政治家や役人には適切な投資判断は難しく、失敗の連続につながっているのだと思われます。
【記事概要】
- 核融合スタートアップで企業価値が1000億円を超えた京都フュージョニアリング(東京・大田)。経済産業省の認可法人の出資を受けて国が支援する新興企業の代表となったが、同社の資金調達をリードするのは日本のベンチャーキャピタル(VC)ではない。
- 8月に発表した167億円の調達をまとめたのは韓国のファンドだ。上之段琢磨最高コーポレート責任者(CCO)は「20億〜30億円を投資できる国内VCは少なかった」と振り返る。
- 「大きく成長した日本の企業でVCの資金が原動力になった事例はほとんどない」。東大発AI(人工知能)スタートアップの燈(同・千代田)を率いる野呂侑希社長は言い切る。26年、VCではなく三菱電機と提携して50億円を得た。
テック立国へ、リスクマネー脆弱
- 高市早苗政権はAIやロボット、宇宙などディープテック(先端技術)の育成に向け「スタートアップ総力創出パッケージ」をまとめた。官民を挙げて次世代技術を磨く新興企業を育てる局面を迎えた今、リスクマネーを供給する役割を担うVCの脆弱さが際立つ。
- ディープテックは技術開発の初期から多額の開発費を必要とする。だが、日本のVCが投じられる資金は1社あたり数億円が相場だ。米国は100億円単位が珍しくなく桁が2つ違う。
- VC全体の投資規模は比較にならない。日本は米国の1.5%に過ぎず、さらに差が広がる。直近15年間で米国は6倍に拡大し日本は2.5倍にとどまった。
- VCの力を奪ってきたのは日本国内に浸透した「ゼロリスクルール」だ。
- リスクを取り大きく育てるよりも、投資の確実な出口を優先する――。2000年代前半のIT(情報技術)バブルの崩壊も経て、日本のVCはリスクを必要以上に避ける投資のルールを強固にしてきた。
- ルールは起業家との間で結ぶ契約に表れる。例えば「株式買い取り請求権」。スタートアップが期限内に上場できなかった場合などにVCが保有株の買い取りを起業家に求める。買取額はあらかじめ決める。
- スタートアップの成長計画が未達でも、VCが損失を被りにくい立て付けだ。VCが創業者個人に責任を負わせる契約は世界では異例といえる。創業者が事業売却で利益を得ても損失を出しても、いずれの場合もVCが優先的に資産配分を受ける契約も多い。
- 「起業家を過度に萎縮させる」。経産省は25年、株式買い取り請求の見直しを求めた。
投資は「元本割れ」、リターン稼げず
- 損失回避に重きを置いていては多額のキャピタルゲインは見込めず再投資の原資も得られない。日英の共同調査によると10年前に組成した国内VCファンドの投資の回収倍率は0.99倍。1倍を下回りリターンがない「元本割れ」だ。世界全体の1.1倍を下回る。
- ディープテック企業はVCに頼らず資金を得る道を模索する。民間調査によると、融資に頼ったスタートアップが25年は302社と5年前から倍増した。
- 戦後、日本企業の飛躍を支えた金融は銀行融資だった。だが、いまや世界には確信のない技術革新に賭けるマネーがあふれる。先がみえない競争で海外のライバルに先んじるためには、リスクマネーの出し手であるVCが旧来ルールを書き換える必要がある。
