令和7年度以降の税制改正・制度見直しにより、個人がふるさと納税を活用するうえで知っておきたい変更点を、テーマ別に解説します。
今回の税制改正では、所得控除が増えることでふるさと納税の「限度額が減る」ケースが多くなります。また、総務省の制度見直しにより、2025年10月1日以降のポータルサイト上での寄附については、ポイント付与が禁止されることが決定しました。

 ※そもそもふるさと納税について知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
(参考ブログ:「ふるさと納税の税額への影響」
ふるさと納税限度額の算出~「退職所得」と「株式譲渡所得」を考慮~ 」)

 

基礎控除額の増加(所得税のみ)

令和7年税制改正以降、合計所得金額が2,350万円以下の方は、所得税の基礎控除額の引き上げによって減税されます。
ただし、課税所得が減少する結果、ふるさと納税の控除上限額もやや減少する可能性があります。
特に、合計所得金額が132万円以下の方は、基礎控除額が最大95万円(従来は48万円)に引き上げられました。

(参考:国税庁「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」

なお、今回の改正は所得税のみが対象であり、住民税の基礎控除額は改正されていません。
ただし、所得税控除の増加によって課税所得そのものは減るため、結果的に所得税のみでなく、住民税の所得割額も減る可能性もあります。その場合は、 ふるさと納税の限度額にも間接的にわずかな影響を与えます。

 

給与所得控除の最低保障額が65万円に

給与収入金額が190万円以下の場合、給与所得控除の最低保障額が引き上げられたこと(最大10万円の引き上げ)で、課税所得が減少するとともに、ふるさと納税の限度額も若干減少する可能性があります。
給与所得控除は所得税・住民税の両方に影響を与えるため、限度額に直接関わる可能性があります。

(参考:国税庁「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」

 

各種扶養控除等の所得要件の引き上げ

扶養控除、配偶者控除および、勤労学生控除などの適用要件となる所得上限が10万円引き上げられました。

(参考:国税庁「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」

これは「年収の壁」への対応として、より多くの人が控除対象になるようにするための措置で、対象世帯にとっては課税所得が減るため、ふるさと納税の限度額も若干下がる傾向があります。

いわゆる「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられた配偶者が、年収123万円(合計所得58万円)の壁を超えても、配偶者控除38万円が受けられなくなる代わりに、配偶者特別控除38万円を受けられることになります。一方で、年収160万円(合計所得95万円)の壁を超えると、配偶者特別控除が徐々に減少していきます。

 

特定親族特別控除の新設

19歳以上23歳未満の扶養親族について、従来は所得が48万円を超えると扶養控除63万円が取れませんでしたが、令和7年より所得が58万円超123万円以下の場合は、特定親族特別控除が段階的に取れるようになりました。(所得が58万円以下の場合は、扶養控除63万円が取れます)

(参考:国税庁「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
これにより、子育て世帯の課税所得がさらに減少し、ふるさと納税の限度額も減少する可能性があります。

 

ふるさと納税のポイント付与廃止(2025年10月~)

従来は、ポータルサイト(楽天、Amazon、Yahoo等)経由で寄附をすると、寄附先の自治体から返礼品を受け取るだけでなく、ポータルサイト上でポイントも還元されてきました。

しかし、総務省のふるさと納税の制度見直しにより、2025年10月1日以降のポータルサイト経由での寄附に関しては、ポータルサイト上のポイント付与が禁止されます。そのため、ポイントを受け取りたい場合は、2025年9月30日までにポータルサイト経由で寄附を行うことが必要です。

なお、今回の制度の見直しは、あくまでもポータルサイトが付与するポイントが対象ですので、寄附金の支払いにクレジットカードを利用した場合に、カード会社から付与されるポイントについては、従来通り受け取ることが可能です。

 

まとめ

今回の改正・見直し内容をまとめると、所得控除や扶養控除に関連するものが多かったため、以下のような方は、昨年と比べてふるさと納税の限度額が変動する可能性があります。一方で、下記に当てはまらない方にはほとんど影響がないと考えられます。

  • 年収103万〜160万円以下の給与所得者
    基礎控除額の見直しは、給与収入金額が2,545万円までの方が対象ですが、影響金額は軽微です。
  • パート収入が120万円前後の配偶者や、アルバイト等をしている19歳以上23歳未満の扶養親族がいる家庭
  • 昨年と比べて収入や扶養人数、保険料控除などの所得控除および住宅ローン控除などの税額控除に変動がある方
  • ポータルサイト経由でふるさと納税を行ってポイント還元を受けていた方

 

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