「高市円安」占う、補正予算の行方 20兆円超、円売り加速も 国債増発の警戒感もhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251114&ng=DGKKZO92582920T11C25A1DTE000
【コメント】
  • 昨日、約9ヶ月ぶりにドル円は155円を突破しました。高市政権の積極財政を警戒し円売り傾向が強くなっているようです。
  • ユーロ円も一時1ユーロ=179円台後半となり、1999年に単一通貨ユーロが誕生して以降の最安値を更新しました。円は対主要通貨で「最弱」となっているとのことです。
  • 直近では、市場は補正予算の規模に敏感になっています。これにより国債の増発観測につながるからです。「仮に20兆円程度まで膨らむようだと国債増発への警戒感が出てきそうだ」とのコメントもあり、当面の注目点です。
  • 数日前にも記載しましたが、需給面で円高になる要素は見えない中で、さらなる財政悪化を伴う政策が実行されれば円安とならざるをえないと思われます。
  • 円安局面でいつも話題になるのが政府介入の有無です。最近では2022年と2024年の円安局面で円買い介入が行われ一旦円安が是正されていますが、2回とも「米国景気指標悪化」というドル安要因がたまたま重なった時期でした。つまり円安が是正されたのは、介入の成果ではなくドル安要因であったということです。
  • 2022年は約145円で、また2024年は約155円で介入を開始していました。日本は変動為替相場制を採用している国家ですので、介入を行うにしても前回介入レベルよりも相応に円安である必要があるようです。これから推察すると次回の為替介入は165円近辺でしょうか?
  • 結局長期トレンドで見ると円は徐々に弱くなる通貨であるようです。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
  • 外国為替市場で根強い円売りが続いている。対ドルの円相場は約9カ月ぶりに1ドル=155円台に下落した。高市早苗政権が経済政策の司令塔となる会議に、財政規律よりも経済成長を優先すべきだと主張する有識者をそろえたことがきっかけの一つだ。2025年度の補正予算規模が20兆円を超えるかどうか――。市場は「責任ある積極財政」の行方を見極めようとしている。
  • 「円売りが止まる要因が見当たらない」。オールニッポン・アセットマネジメントの石見直樹・最高投資責任者(CIO)はこう漏らす。円は対主要通貨で「最弱」だ。対ユーロでは13日、一時1ユーロ=179円台後半と、1999年に単一通貨ユーロが誕生して以降の最安値を更新した。
  • 世界的に財政拡張と通貨価値の下落は市場の一大テーマだ。日本市場も貪欲にもうけを狙うマネーをひき付ける。国内外に人脈を持つ石見氏は一部の海外ヘッジファンドが本格的に円売り持ち高を構築し始めたと聞いた。「海外勢を中心に、日本では実質低金利に伴う株高・円安が当面続くとの連想が強まっている」(石見氏)という。
  • 高市政権に対する市場の見方を映す物差しとして、新発30年物国債と新発10年物国債の利回り差がある。財政拡張への警戒が強まると償還までの期間が長い金利が上がりやすくなり、利回り差は広がる。今週に入り1.5%台に拡大し、10月21日の高市政権発足以降では最大となった。歩調を合わせるように円売りが広がり、1ドル=155円台に到達した。
  • 高市首相の政策スタンスへの警戒は、財政規律派とされる麻生太郎自民党副総裁の影響力が大きいとの見方からいったん収まっていた。ここにきて再び緊張が走り始めたのは、経済財政諮問会議や日本成長戦略会議の民間メンバーが発表されてからだ。高市氏の持論を後押しする積極財政派が顔をそろえた。
  • 例えば成長戦略会議の新委員の一人であるクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミスト。企業の投資を喚起するために財政を拡張すべきだと主張する。企業と政府がともに投資超過となり、企業の貯蓄率と財政収支の合計(ネットの資金需要)をマイナスにもっていくことが好ましいとする。
  • 会田氏はネット資金需要をマイナス5%にするには約600兆円の名目GDP(国内総生産)の5%(30兆円)の財政支出が必要と主張する。高市政権が11月中にも発表する総合経済対策の25年度補正予算案について「20兆円規模」を理想としたうえで、財政拡張によって喚起される民間投資は「10兆円が望ましい」と話す。
  • 市場は補正予算の規模に敏感になっている。大きさによっては国債の増発観測につながるからだ。2024年度実績(13.9兆円)を上回ることは市場でおおむねコンセンサス(共通見解)となっている。バークレイズ証券の門田真一郎為替債券調査部長は「仮に20兆円程度まで膨らむようだと国債増発への警戒感が出てきそうだ」と話す。
  • 現時点で市場は冷静さを保つ。岡三証券の武部力也シニアストラテジストも20兆円はインパクトがあるとしつつ「麻生派の存在感は強く、そこまで財政拡張的な政策はとれないのではないか」との見立てだ。りそなホールディングスの井口慶一シニアストラテジストも「健全な形で財政が拡大されるならば、直ちに財政拡張=悪、とはならない」と話す。
  • とはいえ財政規律が緩む方向に議論が進めば、市場も安心はできない。諮問会議の民間議員に就いた若田部昌澄早大教授は「プライマリーバランス(PB)黒字化目標はデフレ時代の歴史的産物で使命を終えた」と指摘し、高市氏の方針を後押しした。ある国内運用会社のストラテジストはこうした議論が海外勢に「日本売り」の理由を与えないか心配する。
  • 民間メンバーの意見が実際の政策に反映されるかは未知数だ。市場関係者は議論の行方を注意深く見守ることになる。三井住友銀行為替トレーディンググループで為替ディーラーを務める納谷巧グループ長は「補正予算の中身や規模次第では1ドル=158円程度まで下落する余地がありそうだ」とみる。年末にかけての円相場は一段と神経質な展開が予想される。