中小企業に人が来ないワケ 人事評価制度、6割が持たず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD307EM0Q5A730C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA
【コメント】
  • 今朝は朝刊休刊日です。
  • 熊本では線状降水帯の影響で大きな被害に見舞われています。一昨日来の報道もほとんどこれ一色でした。被災された方々にはお見舞いを申し上げます。
  • WEB版に人事評価制度が、特に中小企業の人財確保に重要との記事がありましたので掲載します。
  • 従業員数が30人以下の企業の大部分が人事評価制度が設けられていないそうです。
  • 人事評価制度は、会社の成長戦略を個々の従業員に具体的に示すツールであり、これが個々の従業員のマインド向上につながり会社の成長に直結します。
  • 人手不足の中で中小企業に人財を呼び込むためには、処遇面の改善も重要ですが、何をどこまで達成したら評価されるのかを具体的に提示できることが今の若い世代に好まれるのだと思います。
【記事概要】
  • 人手不足はとりわけ中小企業が深刻だ。大企業に比べ人材の採用で不利なのは否めないが、みずからハンディをつくり出している面はないだろうか。じつは中小企業の6割は、人事評価制度を設けていない。従業員の能力や成果を評価し、的確な処遇や昇進・昇格につなげる仕組みがないのなら、人材を引き付けられなくても当然だ。
30人以下の企業、4分の3が人事制度を設けず
  • 帝国データバンクの「2024年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」が、中小企業による人事評価制度の導入状況を集計している。
  • 人事評価制度を「設けている」と回答した企業は全体の40.6%。従業員の規模別にみると、31人以上の中小企業は過半が設けていると答えたが、30人以下の企業は25.1%にとどまる。
  • 人事評価制度は、賃金の決め方や昇進・昇格の判断が公正であることを従業員に示す仕組みだ。従業員の納得感を高める効果が見込め、新卒採用や中途採用でも制度があることによって応募者に一定の安心感を与えられる。大手企業では制度導入が当たり前だ。
  • 制度の有無は従業員の定着率に影響している。
  • 6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」の割合を引いた雇用人員判断指数(DI)が中小企業はマイナス37。大企業はマイナス28で、中小は不足の度合いが大きい。
  • 中小企業は雇用人員判断DIのマイナス幅が、23年3月調査から10四半期連続で35以上となっている。深刻な人手不足は企業が人事評価制度を設けていないことも一因ではないか。
制度が従業員の定着率を引き上げる
  • 人事評価制度があれば経営者は従業員の能力向上や会社への貢献度を見極めやすくなり、昇給の判断に役立つ。賃金の引き上げに向けて、制度が経営者の背中を押す側面も見逃せない。
  • 厚生労働省の6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によれば、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.3%減と、6カ月連続でマイナスになった。物価上昇に賃金の伸びが追いついていない背景には、雇用された人の7割が働く中小企業に人事評価制度が十分浸透していないこともありそうだ。
  • 人事評価制度をつくっていない企業には、中小企業特有の考え方もみえる。帝国データバンクが制度を設けていない企業にその理由を聞いたところ、「経営者が全従業員の状況を把握している」との回答が多く、従業員30人以下の企業では56.6%にのぼった。31〜100人の企業も45.1%、101人以上の中小企業でも29.2%あった。
  • たしかに従業員数が少ない企業なら、個々人の働きぶりや必要なスキル(技能)の習得状況をよくつかんでいる経営者もいるだろう。だが、処遇の根拠を明確に説明できるようにし、従業員に納得感をもって高いモチベーションで仕事をしてもらうには、人事評価制度を設けるに越したことはない。数十人規模の企業になれば、制度は欠かせないとみられる。
制度設計を通じ企業の成長戦略を明確に
  • 民間エコノミストからは、日本経済はすでに需要不足の状況にはなく、深刻な人手不足の影響で大幅な供給力不足に陥っているとの指摘がある。日本の成長の足を引っ張っている人手不足の改善が急がれる。中小企業に人事評価制度が広がれば、その一助になる。
  • 人事評価制度の設計は、どのような技能や専門知識を持った人材で企業組織を構成したらいいか、追求する作業でもある。自社の成長戦略を確認したり、練り直したりする機会になる。
  • 帝国データバンクの調査では、5年前と比べ人材育成の取り組みを増やしていない中小企業のうち、「育成する能力が明確になっていない」と答えた企業が14.9%あった。取り組みを増やした中小企業も20.5%がそう回答している。ターゲットとなる能力が不明確ということは、どんな事業や分野を伸ばしていくかがはっきりしていないことを意味する。
  • トランプ米政権の関税政策などで経営環境の不確実性は増しており、企業規模を問わず、早急に経営戦略の明確化が求められる。併せて人事評価制度も整備して、企業の成長基盤を固めたい。