日本株PBR1.59倍 「天井」1.6倍迫る 資本効率改善に期待
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250819&ng=DGKKZO90742640Y5A810C2DTC000
【コメント】
  • PBR(株価純資産倍率)が過去の上昇相場で跳ね返された1.6倍に迫っています。
  • PBRは、株価÷1株あたり純資産 です。株価がバランスシートの純資産をどれだけ上回っているのかを示す指標です。株価は将来を見据えて買うわけですので、対象企業が将来に渡り利益を出し続ける(=純資産増加)と投資家が予想すれば、株価は純資産を上回ります。
  • 日本企業はPBR1倍割れがまだまだ多く、証券取引所はPBR1倍割れ解消を企業に強く要請しています。
  • PBR1倍割れとはどのような状態かというと、本日企業が解散した場合の価値(解散価値)を株価が下回ってしまっているという状態です。この状態ならば、すぐにでも企業を解散させ、純資産を株主が分け合った方が良いですね。
  • PBRを向上させるには、①将来の成長性を高める施策の立案と実行を株主に示し株価を上げる ②自社株買いなどにより純資産を減らす の二つがあります。 実際にはこの二つを組み合わせていくことになります。
  • 日本企業全般に言えることは、純資産を溜め込みすぎていて(=毎年出た利益を企業内に留保しすぎていて)将来の利益拡大につながる投資がなされていないということがあります。これが失われた30年の元凶です。
  • 企業が今後、人(人件費)やモノ(M&A、設備)にどれだけ果敢に投資できるかがPBR向上にかかっています。
  • 今回の日本株の上げ相場で、過去の壁の1.6倍を超えるかどうかが、投資家の日本経済への評価になると思います。
【記事概要】
  • 日本株のPBR(株価純資産倍率)が上昇している。日経平均構成銘柄のPBRは18日に1.59倍となり、2024年の相場の天井となっていた1.6倍に迫った。PBRの水準は日本企業が取り組む資本効率改善の象徴となっており、壁を突破できるかどうかが投資家の改革期待の強さを測る試金石となる。
  • 東京証券取引所は2023年3月、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請した。理論的には自己資本利益率(ROE)が株主資本コストに満たないとPBRは1倍を下回る。東証による改革はPBR1倍割れが多い日本企業の意識改革につながってきた。
  • 23年3月末に1.18倍だった日経平均構成銘柄のPBRは上昇し、24年の3月と7月には1.57倍まで高まった。その後は相場の停滞を背景に低下していた。
  • 足元で再び日本株が買われている要因には、企業が自社株買いなど株主還元を活発化させており、海外投資家に資本効率改善への期待が高いことがある。
  • トランプ政権による高関税政策がもたらすインフレ圧力や消費への打撃は今のところ限定されており、米国株も最高値更新が続いている。三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「日本国内にインフレが定着しつつある中では、高めに見える市場の業績期待も正当化できるようになってきた」とみる。
  • もっとも、日本株の上昇が持続的なものになるには上場企業全体で10%に満たず欧米に見劣りするROEの改善が欠かせない。豊富な手元資金を活用したM&A(合併・買収)や一段の株主還元が広がるかがPBRが1.6倍の壁を突破し、さらに高まるカギになる。