高市政権「脱リフレ」強調 米に対応. 対日要求、金融・財政へ 圧力回避探るhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20261002&ng=DGKKZO99061660R01C26A0PD0000

【コメント】

  • トランプ大統領までもが、円安懸念の発言をしています。米国の対日輸出が停滞することへの懸念が理由です。
  • 高市首相はこれを受け自らをリフレ論者ではないと強調し始めています。
  • リフレ政策の目的は、デフレ状態を終わらせ、物価が過度に急上昇しない程度に引き上げることです。その実現のために、中央銀行による国債購入や金利引き下げ(金融緩和)、政府による財政支出の拡大(財政出動)を組み合わせていきます。
  • まず、高市政権は産業活性化と公約実現による食品消費税期限付き減税により財政の拡大を行おうとしています。金利政策については日銀の専管事項で9月に利上げが実施されましたが、内閣から日銀に今でも利上の懸念点を勘案するようにとの要望が発せられています。つまり高市政権は利上げには内心反対ということです。
  • この2点を見ると、高市政権がリフレではないと言い切るのは難しいと感じます。
  • 将来の高インフレを止めるには利上げは必要です。これにより円安に歯止めをかけることが一つの狙いですが、そもそも輸出入のバランスが輸入超過となっており、かつ日本企業も日本人も対外投資を活発化している状況では、利上げだけでは円安は止まらないと思われます。
  • 食品消費税期限付き減税には疑問がありますが、高市政権の産業活性化政策は必須です。日本の産業を強化し、バランスが崩れている輸出入をバランスさせ、魅力ある日本を演出できれば日本企業や日本人の投資も外向きから内向きになり、円安抑制となります。
  • ただし、これは来年や再来年に効果が現れてくるものではなく相当な時間を要します。その間に日本の一般消費者が円安による物価高と、インフレの芽をつむための利上げに耐えられるかが問題です。
  • 産業活性化政策に時間がかかり円安がなかなか解消されないならば、住宅ローン金利で毎月負担間を感じる日銀の利上げはせめてやめてほしいという声が一般消費者から声高に上がってくることもあり得ます。利上げを止めれば、米国が景気悪化局面で利下げをしてくるまで円安基調は続きます。
  • 利上げを止め、円安で交易条件が改善してくる日本へ再び日本企業の工場を呼び戻し輸出を増やし、加えて一般国民の対外投資(オルカンなど)を対内投資に振り向けさせる政策を行えば、比較的早期に円安に歯止めがかかると感じます。ただし、工場運営の人手不足をロボットなどで補う施策が必須ですが。

【記事概要】

  • トランプ米政権の日本への要求が貿易から金融、財政にまで広がってきた。高市早苗政権は「脱リフレ」を強調して米国の攻勢をかわす狙いだ。日本には歴代米政権の圧力で政策の修正を迫られてきた歴史がある。
  • トランプ大統領は9月22日の日米首脳会談で、高市首相に円安への懸念を伝えた。
  • 首相は10月1日の日本テレビのインタビューで、トランプ氏から「円安によって米国の貿易が苦しい」と話があったと明かした。円安を通商の問題として取り上げた。
  • 首相は「円の過小評価は問題だ」と伝えたという。
  • ベッセント米財務長官に加え、大統領も日本側に懸念を伝えたことで米国の圧力は一段と強まった。
  • 高市政権は説明する必要が生じた。片山さつき財務相は9月23日、首相から「私はリフレ論者ではないから、それを言って」と指示されたことを明らかにした。
  • 片山氏はその後のベッセント氏との電話協議で「高市首相はリフレ論者ではない」と伝えた。
  • 高市政権の「責任ある積極財政」の旗振り役である城内実経済財政相の発言も変わってきた。25日の記者会見で「金融をどんどん緩和し、財政も機動的に取り組むアベノミクス的なリフレ政策の局面は終わっている」と述べた。
  • 城内氏はこれまで「責任ある積極財政はリフレ政策とは異なる」との説明にとどめていた。日米首脳会談を受けて踏み込んだ。
  • 高市政権がメッセージを発信する背景には米国の要求がある。
  • ベッセント氏は9月1日、日本は「リフレ政策をやめるべきだ」と表明した。片山氏と日銀の植田和男総裁にも「円安が国内のインフレ圧力を強めている」との認識を伝え、金融・財政政策の転換を求めた。
  • 首相は首脳会談後に周囲に「なぜ米国から懸念を示されないといけないのか」と語り、不満ものぞかせていた。
  • 円安は今後も続く可能性がある。政権の姿勢を発信することで米国の要求が収まるかは見通せない。
  • 経済政策を巡り米国は言葉ではなく行動を求めてきた歴史がある。
  • 米国による要求は1970年代に遡る。日本の輸出競争力が高まり米国にとっての対日貿易赤字が膨らんだ。繊維を皮切りに鉄鋼、テレビ、自動車へと対象品目が広がり、日本は輸出の自主規制や自国市場の開放を迫られた。
  • 貿易不均衡を為替面から是正しようとしたのが、85年のプラザ合意だった。米国の貿易・経常赤字を背景に先進5カ国(G5)がドル高是正で協調し、急速な円高が進んだ。
  • 日本は金融緩和と内需拡大で対応したが米国の対日貿易赤字は減らなかった。米国は日本市場の構造にも踏み込む。88年に「スーパー301条」を導入して制裁をちらつかせて市場開放を迫った。
  • 89年の日米構造協議では土地、流通、系列取引、公共投資など国内制度の改革を求めた。
  • 第1次トランプ政権は高関税を振りかざして日本に貿易赤字の縮小を求めた。日本は20年に発効した日米貿易協定で農産品などの関税を引き下げた。
  • 第2次政権も相互関税や自動車関税を材料に対米投資や米国製品の購入を求めた。
  • 現在の米国の注文も過去の延長線上にある。かつて求めた内需拡大とは逆に、インフレと国債市場への影響を避ける狙いから利上げや財政規律の確保を日本に促している。
  • 東大の伊藤元重名誉教授は日本が「脱リフレ」を主張していることに関し「骨太ショック以来、市場への配慮がかなり前面に出てきている」と分析する。
  • 一方で「日本の金融政策は実質金利ベースでみたらまだ縮小していない。今後も円安が進むようであれば日米間の議論はさらに高まるかもしれない」と語った。