資本騒乱 膨張アクティビスト(2)気がつけば「ファンド天国」 官が強めた企業への圧力
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241203&ng=DGKKZO85194740T01C24A2MM8000
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【コメント】
- アクテイビストの活動が日本で活発化しています。
- アベノミクスの一環で株式持ち合いの解消をすすめている日本企業が、企業の保有株式数が減少している一方でアクテイビストの投資額が増加しています。
- アクテイビストに狙われる理由の本質は、資本効率が相対的に悪い日本企業のパフォーマンスにあります。高い自己資本比率と低い負債依存度により、米国に比較してROE(株主資本利益率)が低いことに象徴されます。
- 厚い株主資本を保有している割には、設備投資や研究開発費、M&Aに対する投資額が欧米に劣っている点がROEが低迷している理由かと思われます。
- この投資額の低さにより、最近の日本には革新的な技術やそれによる商品/サービスが生まれておらず、これが収益が改善しないことつながり、ROEが改善しないという悪循環に陥っていると感じます。有能な日本人は報酬額の低さから海外企業で研究開発に従事する傾向にあることも原因かもしれません。
- 記事にあるように、日本は株主提案や臨時総会の提案のハードルが低く、それにより企業が振り回される危険性があります。またアクテイビストが投資した企業の株価のトレンドを見ると、短期的には株主還元などにより株価が上昇するが、その後下落していく傾向にあるというデータもあります。
- アクテイビストの提案も極端なところはありますが、本質的には日本企業の革新力が弱く、資本を効率的に使用する経営を行なっていないことに問題があるのだと思います。官の保護の下に生き延びているゾンビ企業の存在なども大きな問題と思われます。
【記事概要】
- 米ダルトン・インベストメンツは2000年代前半に帝国臓器製薬(現・あすか製薬)などにMBO(経営陣が参加する買収)を提案したが失敗。アクティビストを忌避する日本の風土に阻まれ、ファンドの規模縮小も経験した。
- 転機は19年。経済産業省が株主利益の保護を狙った「公正なM&Aの在り方に関する指針」を策定した。ローゼンワルドは金融庁や経産省、東京証券取引所と会合を持ち「日本の当局はアクティビストに友好的だ」と変化を確信した。
- 欧米では企業がM&Aで集約されて強くなり、上場社数は減った一方、東証は足元で約3800社と30年間で2倍超に増えた。小粒な企業が相次ぎ上場し、PBR(株価純資産倍率)1倍割れが多発した。東証の改革は進展し、足元では「数より質」を重視との姿勢を鮮明にする。23年3月には「資本コストや株価を意識した経営」を要請し、負担の高まりを背景に上場廃止する企業も増えている。
- 東証や経産省の指針はアクティビストの格好の口実になり、東証のPBRに関する公表文を引用した。オアシス・マネジメントのセス・フィッシャーは「社外取締役ともっと対話したい」と、社外取を通じて企業に改革を迫る構えだ。
- 統治改革は企業の稼ぐ力の向上や日本経済の強化を狙った。圧力一辺倒だったこの10年の結果、株主に認められた法的な権利が強すぎるというバランスの悪さも指摘される。
- 日本の株主提案の要件は緩い。総議決権の1%か300個以上の議決権を6カ月間継続保有すればよい。欧州では5%以上が多い。独ドイツテレコムに株主提案するには約8000万円の投資が必要だが、NTTは約460万円ですむ。配当金額や政策保有株の売却の提案は米国ではできない。大阪大学教授の松尾健一は「欧米では会社の業務執行は経営陣に任せる考えが強い」と指摘する。
- 臨時株主総会の招集請求もハードルが低い。日本では議決権の3%以上を6カ月間継続保有すれば可能だが、英国では10%以上が要件だ。米国のデラウェア州では会社側があらかじめ定款で臨時総会の招集請求権を制限することができる。
- 大和総研の鈴木裕は、株主に対して甘い日本の法制度が「アクティビストを呼び寄せる一因になっている」と話す。安易な株主提案が乱発され、企業が振り回されるリスクにも目配りが欠かせない。