日本の1人あたり名目GDP22位に 昨年 円安・高齢化が押し下げ 韓国と逆転、G7で最下位
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241224&ng=DGKKZO85671140T21C24A2EP0000
円相場、高まる介入警戒感 直近下落率「神田ライン」超え 財務官、水準より変動率重視
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241224&ng=DGKKZO85664780T21C24A2ENG000
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円相場、高まる介入警戒感 直近下落率「神田ライン」超え 財務官、水準より変動率重視
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20241224&ng=DGKKZO85664780T21C24A2ENG000
【コメント】
- 名目GDP総額がドイツに抜かれ世界4位に転落したという記事があ離ましたが、今度は一人当たりGDPの話です。日本の一人当たりGDPは、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位で、23年度はお隣の韓国にも抜かれ、24年度は台湾にも抜かれる見込みです。主な要因は円安で、加えて労働生産性の低さとのことです。
- 国際比較はドルベースで行うため、昨今の円安でドルベースでは不利に働きます。
- また日本は急速に高齢化が進み、60歳になると労働の前線から離脱するような制度が未だ主流で、「GDPにあまり貢献しない、長生きする60歳以上の増加」が一人当たりGDPにネガテイブに働いているということのようです。
- 今日、同時に円安による為替介入観測の記事がありました。先週の日米金融当局の政策発表(米国利下げ鈍化、日本利上げ鈍化)によりグッと円安が進んだからです。
- 一人当たりGDPが冴えない「主な理由を円安」と記載していますが、果たしてそうでしょうか? 超短期的には円安が一人当たりGDPの押し下げ要因になっていることは間違いありませんが、「主な理由」は「円安になっている真因」にあります。
- 真因は、人口減少による今後の働き手である若年層の相対的減少ですが、記事にあるように60歳以上の積極的な活用も課題と思われます。
- 60歳になると働く場の提供はありますが、賃金が大幅に下がります。これではやる気が削がれ生産性の向上は望めません。最近、60歳以上になっても賃下げを行わないという企業が現れてきていますが、これを急速に拡大していくことが重要と思います。
- 豊富な経験による「知恵」を持っている60歳以上の有効活用が、日本の一人当たりGDP向上に直結すると思われます。
- いつも政府が行う為替介入は、実態を人為的にねじ曲げる恐れがあると感じます。世界中で為替介入を行なっている国はあまりないと思います。為替介入は、経済実態が円安にならざるを得ない状況の中で、それをカモフラージュしている麻薬のようなものだと思います。この麻薬によって、本質的な課題への打ち手が遅れているのではないでしょうか?
- 特に現下では、投機筋の円売りの動きもあまりない中での円安ですので、この円安は構造的なものだと言えます。賃上げがインフレに追いつかない状況が日銀の利上げを逡巡させ円安を招いています。インフレ率は穏当だと感じますので、日本全体が賃上げができるようなハード/ソフト両面での技術革新と生産性向上を行うべきかと。その動きを阻害しているのは、過度に保守的な政府の規制とマイナカードに象徴されるお粗末なDX思想ではないかとも感じます。
【記事概要】
- 内閣府が23日に発表した国民経済計算の年次推計によると、豊かさの目安となる日本の2023年の1人あたり名目国内総生産(GDP)は3万3849ドルだった。韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退した。、1980年以降最も低い順位だった。主要7カ国(G7)ではイタリアの3万9003ドルを下回り、2年連続で最下位だった。
- 円安に加え、高齢化による成長力低下や労働生産性の低さが足かせとなっている。
- 名目GDPはモノやサービスの価格変動を含めた指標で、国・地域の経済活動の大きさを示す。日本経済の実力は円ベースのGDPで示す一方、ドル建ての国際比較は各国の「国力」の指標となる。
- 主な要因は為替だ。内閣府は今回の試算で、23年度の為替レートの前提を1ドル=140.5円に置いた。24年も1~11月平均では1ドル=151.3円となっており、為替によるGDP押し下げはさらに拡大する可能性が高い。日本経済研究センターの試算では、日本は1人あたり名目GDPで24年に台湾にも抜かれる見通しだ。
- 円安に加えて、労働生産性の低さを指摘する向きもある。日本生産性本部によると、23年の日本の時間あたり労働生産性は56.8ドルで、OECD加盟国中29位と下位だ。「本質的な問題は日本の労働生産性が韓台に大きく後れを取っていることだ」(日経センター)といい、デジタルトランスフォーメーション(DX)やリスキリング推進が必要だとの声がある。
- 日本はすでに世帯の半数以上が65歳以上がいる世帯で、賃上げなど企業側の努力だけでは成長に限界があるとの声もある。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「今後5年間でバブル世代が一斉に60歳以上になる。シニアの労働供給を絞る現在の制度設計を変えなくては、家計所得向上に向けた根本的な解決にはならない」と指摘する。
- 外国為替市場で対ドルの円相場が約5カ月ぶりの安値圏にある。取引が細る年末年始は値動きが激しくなりやすい。市場では為替介入への警戒感が高まりつつある。
- 円相場は20日、一時1ドル=157円90銭台を付けた。日米の金融政策決定会合を経て、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが鈍化し、日銀の追加利上げ時期は後ろにずれるとの思惑が広がった。
- 介入実務を指揮する三村淳財務官は「特定の水準」ではなく「ボラティリティー(変動率)」が重要との認識を示していた。足元の急落は、介入の実施条件を満たすのか。ヒントとなるのが7月末に財務官を退いた神田真人氏の過去の発言だ。神田氏は3年間で24兆円を超える介入を指揮し「令和のミスター円」とも呼ばれた。
- まず意識されるのが、2022年9月上旬の「半年強で25%程度も円安方向に変化し(中略)急激な動きと言える」との発言だ。足元では6カ月前から円が対ドルで1%しか上昇しておらず、急激な動きとは言いがたい。
- 23年10月には「年初来でドル円相場が20円以上の値幅があるのも(過度な変動の)一つのファクター」と述べた。24年初から12月20日までの下落幅は17円に達しているが、同発言が示す「過度な変動」まではあと3円ある。
- 24年3月の「2週間で4%は、なだらかなものとは到底言えない」との発言に照らせば、足元の値動きは明らかに「過度な変動」だ。直近の円の下落率(2週間前比)は5%台に上昇した。
- 三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは「値動きから、投機筋の円売り持ち高は7月の円安進行時ほどには積み上がっていないとみられる」と話す。円売りが膨らんでいない局面での円買い介入は、市場参加者に新たなドルの買い場を提供することになりかねない。