バイデン氏、日鉄に買収中止命令 USスチール巡り  「安保上の懸念」 日鉄、米政府を提訴へ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250104&ng=DGKKZO85844400U5A100C2MM8000
米国の「象徴」買収、壁高く USスチール巡る計画頓挫  日鉄、大統領選に翻弄 国家が崩した「資本の論理」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250104&ng=DGKKZO85844050U5A100C2NN1000
【コメント】
  • 日本製鉄のUSステール買収で、バイデン大統領から中止命令が出ました。米国の自国主義を象徴する事案だと思います。
  • USW(全米鉄鋼労組)の反対によるとことが大きいようですが、USWは85万人の組合員で構成され、このうちUSスチールの従業員は1万人程度だそうです。実質的問題というよりも、米国の伝統企業が他国に買収されるという感情的問題での中止命令だったようです。
  • 米国は、中国の過剰設備による超安価な鉄鋼製品輸入を阻止するために高関税をかけ続けます。これは日本製鉄の対米輸出にも影響があり、日本の人口減による需要減も相まって、USステール買収により業績の維持を図ることが狙いだったようです。
  • 日本製鉄は米政府を相手取り提訴するようですが、おそらく無理筋かと思われます。
  • 日本では、セブン&アイがカナダ企業に買収される危機に陥っています。これを米国ファンドによる多額の借入で非上場化をしようとしています。セブンイレブンの店舗ネットワークは一つの社会インフラであり、米国政府と同様に日本政府が買収中止命令を出せば、あえて財務基盤を脆弱にする非上場化を選択する必要はないと思います。日本政府は「個別企業の案件には関与しない」という建前で、肝心なところでの指導力を発揮していないと感じます。
  • 今後、日本政府は日本製鉄やセブン&アイの事案にどう対処するのか注目です。
【記事概要】
  • バイデン米大統領は3日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画に対する中止命令を出した。日鉄が国内鉄鋼大手の買収により「米国の国家安全保障を損なう恐れのある行動を取る可能性がある」と判断した。
  • 日鉄は買収中止命令を巡り、米政府を相手取り提訴する方針を固めた。米政府の手続きの適正さなどを争う構えだ。日鉄とUSスチールは4日、買収中止命令を巡り「米国憲法上の適正手続きに明らかに違反している。今後、あらゆる措置を講じていく」とのコメントを連名で発表した。
  • 買収計画は、米政府の省庁横断組織「対米外国投資委員会(CFIUS)」が審査していたが、省庁間の意見がまとまらず2024年12月23日にバイデン氏に判断を一任していた。日本企業のM&A(合併・買収)が大統領による中止命令の対象となったのは初めて。
  • 日本の武藤容治経済産業相は3日、「国家安全保障上の懸念を理由とする判断は理解しがたく残念だ」とのコメントを出した。
  • 日鉄は地元自治体やUSスチール従業員から支持を得ていることをアピールしたが、共和党、民主党の両大統領候補からの反対という逆風に抗しきれなかった。
  • バイデン氏は今回の判断で、日鉄の対米投資よりも国内鉄鋼大手への外資関与の拒否を優先した。外資企業が対米投資に二の足を踏むことにつながりかねない。
  • USWのデービッド・マッコール会長を、日鉄は最後まで説き伏せることができなかった。USWは85万人の組合員で構成され、このうちUSスチールの従業員は1万人程度とされる。USWの合意は買収の必要条件ではないが、マッコール氏のかたくなな反対姿勢が最終的にバイデン氏の判断を方向付けた可能性がある。
  • 丸紅経済研究所の今村卓社長は「USスチールというアイコン企業を外国に譲り渡すという反発が、合理的な判断を上回ったのではないか」と指摘する。