【コメント】
- 2015年にコーポレートガバナンスコード(CG)が導入されましたが、それから10年経過しました。日本企業の情緒的な古い統治体制を客観的/合理的なものに変革し投資効率を高める取り組みですが、この施策の基本は不祥事の撲滅です。
- 今日の朝刊で、最近、東証や野村證券、三菱UFJ銀行など、信用が売り物の企業で重大な不祥事が派生していることを憂いている記事がありました。
- 数十年前にJ-SOXが導入されましたが、導入当初はお祭り騒ぎで各企業は熱心に取り組んでいましたが、その後形骸化していった過去が想起されます。
- CGコードは企業統治の厳格化に実効性を持たせる制度ですが、記事にもあるように、最近の各企業の動きは頻繁な会議と超大な資料作成に終始している感が拭えません。
- 今一度初心にかえり実効性あるCGコードの運営を行わないと、日本企業の価値向上が望めないどころか、10年前に逆戻りする恐れすらあると思われます。
【記事概要】
- 今年の干支(えと)、「巳(み)」はヘビのことで、再生を象徴するという。脱皮するからだ。企業経営でもこれにあやかりたい。
- コーポレートガバナンス(企業統治、CG)コードが導入された2015年からちょうど10年、少なくとも形式的には日本企業のCGは長足の進歩をとげた。上場企業は例外なくCGコードに基づく社内体制を固め、各種開示書類の充実に汗をかいている。
- ところが、昨今、企業の不祥事やCG不全が頻発している。とくにCGの深化、充実をリードすべき証券会社や銀行の一部の行動が情けない。
- 最大手証券会社の元社員が強盗殺人未遂などで起訴されたのは論外だが、同社の市場への背信行為も深刻だ。昨秋、国債先物取引の相場操縦で厳しい処分を受けている。近年には別の大手証券が株式取引の相場操縦で処分された。
- 最大手メガバンクでは、元行員の長期にわたる貸金庫の顧客資産の巨額窃盗事件や強要未遂が発覚した。同メガバンクグループは不正な顧客情報共有問題で傘下の主要3社が処分を受けたばかりだ。
- さらに市場の番人のはずの東京証券取引所の元社員が、インサイダー取引を巡り起訴されたことには声を失う。
- 他人の資産を預かる証券や銀行、取引所には顧客などの信頼が不可欠だが、関係各社のそれは地に落ちた。
- これらの会社の上場持ち株4社に共通するCG形態は、指名委員会等設置会社だ。現下のCG体制では最強の仕組みを採用しているのに、うまく機能していないと言える。
- 背景には、指名委等設置会社に限らず、CGを巡る取り組みが実質を伴っていないことがあるのではないか。
- 最近の企業は、CGや経営理念の分析に膨大な時間と労力をかけている。関係会議の多さにはあきれるほどだ。従前、全社レベルの会議は取締役会と経営会議のほかは若干のプロジェクト会議程度だったが、いまやガバナンス委員会からウェルビーイング会議まで、毎日が会議の連続だ。
- その結果、膨大な資料が作成され、関係者たちは奇妙な達成感に満たされる。だが、果たして会社の隅々まで、それが浸透しているだろうか。
- 古い身体から脱皮したつもりでも、内実を伴わなければ無意味である。今年こそ、真の再生に向けた脱皮を心がけてほしい。