年金改革の難路(1)基礎年金上げ、国会の火種 厚生年金「流用」案に批判 会社員、45年度まで受給減
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250115&ng=DGKKZO86055250U5A110C2EP0000
【コメント】
  • 頭の痛い年金問題が、通常国会で議論になります。
  • 論点を簡単に書くと、①将来基礎年金が不足する危機 ②26-45年の間、厚生年金支給額を減らし将来の基礎年金の原資に充てる ③更に国庫負担も必要で、その財源が見つかっていない  というものです。
  • 議論のポイントは、厚生年金を支払ってきた厚生年金受給者の支給額が今後約20年間減額してしまうということです(なお、45年以降の受給者には減額影響はありません)。基礎年金と厚生年金の財源は違うので、これを「流用」することは公平性の観点でかなり議論が必要と思われます。
  • もう一つのポイントは、国庫の財源です。09年に基礎年金の国庫負担を引き上げた際には消費税増税で賄いましたが今回はどうするのかです。
  • 103万円の壁問題解消などで税収が減少する可能性があることに加え、この基礎年金補填による国庫負担問題。やはりまずは国と地方の大胆な行政改革によるムダ排除を行うことを前提に、消費税を増税するしか打つてはないのかもしれませんが、どう思われますか?
【記事概要】
  • 厚生労働省が提出準備を進める年金改革法案は2025年通常国会で最大の火種の一つとなる。議論になったのは将来の基礎年金を底上げする改革案だ。
  • 基礎年金(国民年金)は横ばいの経済状態が続くと30年後には現在より3割ほど目減りする見通しだ。基礎年金に頼る自営業者や低所得者は老後に困窮する恐れがある。対策として厚労省が示したのが厚生年金に加入する会社員らの受給額を一時減らし、それによって生まれた財源を将来の基礎年金に回す改革案だ。
  • 会社員の年金額は、26年度から45年度までは今の制度より最大で月約7000円に達する。一方で、46年度からは会社員がもらう基礎年金部分の増額分が厚生年金の減額分を上回るようになる。60年度ごろには今の制度より月約8000円多くなる。実際の影響は働き方や年収によって一人一人異なるものの、45年度までに亡くなる会社員は減額になるケースが多い。平均寿命で亡くなると仮定すると男性は1964年度以前、女性は58年度以前に生まれた人が当てはまる。世代によって年金が減る人が出てくる点に野党は批判的だ。厚生年金の財源を基礎年金に「流用」する点には経済界に反発がある。「厚生年金に加入する現役世代の不信感が高まる」「基礎年金に使われることに違和感がある」。2024年12月10日の厚労省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会で、経団連と日本商工会議所の委員がそれぞれ慎重姿勢を示した。労働者側である連合の委員も賛成しなかった。
  • 自民党内で慎重論が出ているのは巨額の国庫負担が必要になるためだ。「年2兆円を超える財源を確保できるのか」。12月の衆院厚労委で立民の長妻昭衆院議員が財務省に問いただした。基礎年金の底上げには厚生年金の財源のほかに追加の国庫負担も投入する。将来は最大年2.6兆円にものぼるが、政府は具体的な財源確保策を示していない。
  • 政府は09年度に基礎年金の国庫負担を従来の3分の1から2分の1に上げた際は、12年に社会保障と税の一体改革で消費税増税を決めて財源を確保した。今回も消費増税が想定されるが、夏に参院選を控えるなかで増税論の想起は避けたい。自民党内で底上げ策に慎重論が残るゆえんだ。
  • 基礎年金の目減りを食い止めて、老後の困窮を防ぐ必要性は年金部会でも異論は出ておらず、長妻氏ら野党議員も認める。具体策となると減額になる人や厚生年金財源を「流用」される労使が納得できる説明が要る。世論に反対論が強いままでは与野党の調整も着地点をみつけにくくなる。