株主総会「時期を遅く」、金融庁要請  有報確認、投資家に配慮 企業は人事など影響懸念
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250207&ng=DGKKZO86576070W5A200C2EE9000
【コメント】
  • 株主総会と有報開示の関係の問題です。
  • 昔から議論されていますが、日本では大多数の企業が総会後に有報を開示しています。これでは総会で企業活動を詳細に記載している有報を基に議論することができず、特に欧米の株主から改善を求められています。
  • 欧米では有報開示後に充分な時間をおいて総会を開くのが一般的です。
  • 金融庁は、この問題に対し企業に本格的に改善を求める方向で議論を始めるようです。
  • 日本の企業側からは、「配当の権利確定日」や「取締役の人事確定時期」の問題があるとして難色を示す声が上がっています。しかし欧米では問題なくできていることが日本で問題になってしまうことには疑問を感じます。
  • 日本では株主総会が6月(の特定日)に集中し、株主が持ち株企業の総会全てに参加し難い問題点がありますが、この問題の解消にもつながります。
  • 日本企業の難色の真因は、「株主に有報をじっくり分析されて総会で議論となることを避けたい」「総会開催を特定日に集中させて株主の参加を減らしたい」などといったことではないでしょうか?本末転倒の発想だと感じます。
【記事概要】
  • 金融庁は、投資家が企業の有価証券報告書(有報)を株主総会前に確認できるようにするため、企業に総会の開催時期を後ろにずらすことを求める。6月総会が多い3月期決算企業には7月以降への変更を促す。2025年中に方向性をまとめる。
  • 有報は金融商品取引法に基づく書類で、決算日から3カ月以内に開示することが義務づけられている。連結ベースの役員報酬や政策保有株の状況、人的資本といった非財務情報など事業報告にはない項目が含まれる。
  • 投資家に日本で有報を総会前に示す企業の比率は1%台にとどまる。米欧では有報が先に出るのが一般的だ。投資家にとって重要な情報は総会前に開示するのが望ましいとして、岸田文雄前首相がコーポレートガバナンス(企業統治)改革の一環で提唱した。
  • 有報の前倒しは難しいとの見方が多い。金融庁のヒアリングでは、上場企業から「監査法人の対応が2週間程度かかるので6月上旬の開示が限界だ」との声が上がった。
  • 有報で開示を求められる情報が増えている事情もある。例えば27年3月期から順次、義務化される温暖化ガス排出量などの持続可能性に関する情報の開示は、サプライチェーン(供給網)全体の排出量の測定などで企業の作業負担が増す。
  • 有報の開示を前倒しするのが難しいなかで、金融庁は総会の日程を後ろにずらすことで投資家が重要な情報を精査する時間を設けたい考えだ。
  • ただ企業側は総会の日程を後ろにずらすのも課題があるとみている。一つは配当を受け取る権利を確定する日をいつにするかという問題だ。現状は基準日を配当の「権利確定日」として、決算期末日と一致させている企業が多い。3月期企業であれば決算が締まる3月末時点の株主に配当を支払っている。基準日が5月末になれば、5月末時点の株主に配当を支払うことになるとみられる。1年間の経営成績に対して支払う配当の権利確定日が決算期末日よりも遅くなってしまう恐れがある。
  • もう一つは取締役が交代するまでの期間が長くなることだ。3月期企業であれば6月に株主総会を開き取締役人事を決めている。株主総会が8月になれば、4月に事業年度が始まってから取締役が交代するまでに4カ月程度かかることになる。
  • 企業からは「配当や人事などの要素を考慮する必要がある。有報開示の都合だけで総会の開催時期を決めにくい」(機械大手の投資家向け広報担当者)との声がある。
  • 総会を巡っては、以前から6月に集中すると複数企業の株式を持つ機関投資家が出席しにくいとの声がある。総会の開催時期の見直しはこれまでも議論されてきたが、ほとんど進んでこなかった歴史がある。開催時期を後ろにずらすことで時期が分散されれば、投資家が参加しやすくなる可能性がある。金融庁は企業の実務負担も考慮しながら制度設計する。