米「製造業第一」の全方位関税 「不公正な取引」列挙  対EUやインド、高い税率問題視 対インドネシアは障壁是正求める
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250215&ng=DGKKZO86753780V10C25A2EA2000
【コメント】
  • ここ数日、世界中が注目しているトランプ大統領の関税政策の記事が大きく掲載されていたので取り上げます。
  • トランプ大統領の主張は、各国との関税率の差異と非関税障壁により米国が貿易で不利な扱いを受け、米国消費市場が「食いもの」にされていると同時に、米国の製造業が長年にわたって衰退してきたということです。この状況を是正するために貿易相手国と対等な水準まで関税を引き上げる「相互関税」の導入を検討しています。
  • それでは「関税」とはそもそも関税は何オタ目にあるのでしょうか?調べてみると定義は以下です。「関税とは、輸入品に課される税のこ とで、関税が存在する大きな理由は、国内産業を守るためである。 関税をかけるこ とにより、国産品と輸入品の価格の差を縮め、国産品が売れなくなることを防いでいる。 」です。
  • この定義からすると、個々の国での個別の産業政策により自由に関税率を設定できることが基本です。WTO(世界貿易機関)が不公正と思われる関税を調停する機能はありますが現在ではどこまで機能しているのか疑問です。何が不公正なのかは個々の国の産業政策に依拠するので、その産業政策を「悪」とみなすことには限界があるからです。
  • 「米国産業の再生」がトランプ政権の産業政策ならば、トランプ大統領の関税政策は決して否定されるものではないと思います。発言からすると、米国が相対的に不利益を被っている状況を後公平に戻そうとしているだけで、米国に有利になる関税政策を行うとしているようには思えませんが実際はどうなのかよく見ていく必要があります。
  • 米国は「非関税障壁」にも言及しており、「ローカルコンテント(販売する国の部品の使用率を指定)」や「過度な安全基準」をあげています。公正な貿易を追求するならば、ローカルコンテンツは廃止すべきですし、個々の製品の安全基準は世界統一で設定/合意する必要があると感じます。
  • 極論ですが、公正な貿易を行うならば全ての関税を撤廃することも考えられます。そうすれば真に競争力がある製品や農産品が世界中で多く売れるようになる完全競争市場となります。ただし、食料品の自給問題など個々の国の安全保障をどう考えるかも要検討です。
【記事概要】
  • トランプ米大統領が貿易相手国と対等な水準まで関税を引き上げる「相互関税」の導入を指示した。全方位に関税をかけて製造業を国内に呼び戻すことを狙う。
  • 第1次政権からの持論である外国との「相互的(reciprocal)な関係」の実現を狙う。
  • トランプ政権はまず「高い税率」そのものを問題視する。ホワイトハウス高官はインドの関税を、同国の王様を意味する言葉になぞらえて「マハラジャ関税」と呼んだ。インドの平均税率は17%、農産品に限れば平均39%に達する。
  • 欧州連合(EU)の自動車関税や、ブラジルがエタノールにかけている関税もやり玉にあげた。
  • カナダやフランスが導入した「デジタルサービス税」についても、米巨大テック企業を狙い撃ちにし「年間5億ドル(約760億円)以上を徴収している」として相互関税の調査対象に含めた。
  • 各国の独自規制などの「非関税障壁」の是正も求める。ベッセント米財務長官は13日の米FOXニュースのインタビューで「インドネシアにおけるiPhone16の扱い」が典型だと説明した。インドネシアは国内で販売するスマートフォンについて、部品などの約40%を国内で調達するよう義務付けている。「ローカルコンテント要求」と呼ぶ規制で、この基準を満たしていない米アップルのiPhone16は現地で販売できていない。
  • トランプ政権は米国と異なる外国の安全基準や原材料の使用基準も問題視する。トランプ氏は特定の国名は挙げずに、自動車の安全基準について「ボウリングの球をボンネットに落とすテストを義務付け、戦車でもない限りクリアできない」と主張した。
  • トランプ氏が13日に署名した覚書は具体的な内容が乏しく、外交関係者の間では「張り子の虎」という見方もある。法的根拠や、これまで打ち出された関税政策との関係性は不明確だ。はっきりしているのは、トランプ氏には米国の消費市場が「(外国から)食い物にされている」という不満と「国外に流出した産業・雇用を取り戻す」という強い意志があるということだ。USTR代表候補のジェミソン・グリア氏は「グローバル化によって6万もの米国内の工場が失われた。もうこれ以上許されない」と語った。トランプ氏は「米国内で製造すれば関税はかからない」と何度も強調している。