【コメント】
  • 国会での予算審議が佳境を迎えています。
  • 与党は予算の年度内成立を切望しており、一方野党は「103万円の壁」「高校無償化」「小中学校の給食無償化」など国民受けするテーマで少数与党に対応を迫っています。
  • 石破首相はかつて立民が与党だった時代に、当時の野田首相に「年度予算成立ができないということは、内閣府信任と同義だ」と言った経緯があることから、内閣総辞職に追い込まれないよう必死に予算成立をしようとしているように見えます。事実、過去には何度か年度内に予算成立をさせるため、引き換えに内閣総辞職をした例があります。
  • 野党は年度内予算成立で窮地に立っている少数与党を脅すように、財政論議をせず国民受けする政策を推し通そうとしているように見えます。一方与党は財政規律に責任を感じていることから、野党案を飲むための財源確保を検討はしていますが、「高額医療費の変更(国民の負担増)」を提案しましたが、検討不十分で癌患者などから強い非難を浴び修正を迫られるというていたらくです。
  • 与党/野党ともに目先の自党の保身にしか興味がない状況が我々国民には透けて見えます。
  • 記事にもあるように、賛否はありますが、米国では財政規律を意識しイーロンマスク氏を使った徹底的な官庁合理化を加速度的に進めています。
  • 野党の各要求は国民として望ましいことであるのですが、野党はこの財源を確保するために国会議員や地方議会議員の定数削減による歳出削減など「野党議員みづからも痛みを伴う」提案を同時にしてほしいものです。国/地方ともに本当に現状の議員数が必要なのか、第三者委員会を立ち上げ再度真剣に見直して欲しいものです。
【記事概要】
  • 前回の衆院選で、国民民主党が「手取りを増やす」の旗印を掲げて躍進した。賃上げやインフレ、円安で増えた税収を、減税や社会保険料の軽減で国民に還元するキャッチフレーズは明確だ。
  • 他方で「税収が増えれば減税」と言うなら、次の不況時に「税収が減れば増税」と言わなければ整合的ではない。財政収支は、デフレ期には赤字、インフレ期には黒字となることで景気変動を安定化させる重要な機能がある。
  • もっとも不況期でも減らない社会保険料負担は、とくに給与水準の低い若年層を苦しめている。日本の社会保障制度は社会保険料への依存度が著しく高い。
  • 日本の医療制度には多くの無駄がある。高齢の患者が複数の診療科を渡り歩き、検査や投薬の重複が生じる。欧米の家庭医制度が日本でも導入されれば、患者負担も医療費も大幅に減る。そうなれば社会保険料を引き下げる余地は大きい。そうした制度改革論なしに、社会保険料の引き下げを唱えるのは無責任だ。
  • 所得税の「年収103万円の壁」の引き上げ論は、金持ちほど有利で、大きな財源が必要となるポピュリズム政策だ。むしろ定額の税金を一律に控除する方式が、低所得層に対象を絞れ、少ない財源で大きな効果がある。また減税策は、もともと所得税を払っていない貧困層は対象外だ。そのため、非課税所得層にも一定額の税金を還付する「給付付き税額控除」が、先進国の所得再分配策の基本である。
  • 本来、増税に反対し、無駄な財政支出を削減するのが保守政治だ。それに対して、福祉の充実を訴え、その財源として高所得層への増税を求めるのがリベラル政党である。
  • しかし、日本では与党が補正予算の規模にこだわり、野党は減税を訴える。いずれも財源は二の次という状況だ。財政再建自体を目標にすべきではないが、急速な高齢化社会を目前に控えており、今後の社会保障費の増加に備える余地を作る必要がある。
  • 米国のトランプ政権には多くの批判があるが、財政の無駄をなくすための政策を公約に掲げて速やかに実行することは、本来の共和党の路線である。仮に、それが米国民に受け入れられなければ、次回の大統領選で民主党政権に交代するだけだ。日本の国会でも、まともな財政論争が必要だ。