高校無償化、私立向け懸念 支援額上げ、学者7割が「反対」 授業料上げ誘発指摘も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250221&ng=DGKKZO86876580R20C25A2MM8000
公立高校離れに拍車 私立無償化の大阪・東京で顕著 教育の質向上、後回し
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250221&ng=DGKKZO86876290R20C25A2EA1000
【コメント】
  • 私立高校向けの支援学引き上げと、支援の所得制限撤廃議論が予算成立に向け活発化しています。
  • 日経新聞が著名な経済学者47人に意見を聞いたが、「反対」が約70%を占めまたそうです。主な理由は、「支援拡充により私立の学費が上がることや、公立高の教育の質が低下することを懸念」です。
  • 教育政策としての優先順位は、「教育の質向上」や「幼児教育の拡充」とのことです。
  • 個人的感想ですが、高校だけでなく小中学校も含め、そもそも教員の待遇改善や設備投資により公教育をもっと充実させることが国費の使途としては適切と感じます。公教育に不満があることが私立進学への引き金になっていると感じます。
  • また支援の所得制限を撤廃することは如何なものかとも感じます。多額の年収がある家庭にも支援を行う必要は全くないと思います。「支援」なのですから、負担能力主義で所得制限を設けることは当然と思います所得制限無しの支援を実施すれば、他の支援にも波及し最終的には国民からの徴税額の増加に繋がります。
  • そもそも、与野党ともに今年の参院選挙を念頭に「国民の人気取り」に終始する政策ばかりを議論している感があります。もっと国の根底に関わる重要な政策に議論の時間を割くべきと思料しますが、皆さんはどう思われますか?
【記事概要】
  • 日本経済新聞社と日本経済研究センターは経済学者に政策の評価を問う「エコノミクスパネル」で高校無償化への賛否を尋ねた。自民党と公明党、日本維新の会がめざす私立高校向けの支援額引き上げには70%が反対した。支援拡充により私立の学費が上がることや、公立高の教育の質が低下することを懸念する声が多かった。
  • 現行の就学支援金は、子供が私立高校に通う年収590万円未満の世帯には39.6万円を上限に支給している。自民・公明両党と日本維新の会は支援に関わる所得制限をなくした上で、上限額を引き上げる協議を続けている。
  • 経済学者47人に「上限額は多くの私立高をカバーできるよう引き上げるのが望ましい」かを尋ねたところ、「そう思わない」(57%)「全くそう思わない」(13%)の合計で反対が70%に達した。
  • 多くの経済学者は、私立高校向けの支援額を引き上げると、私立が学費を上げると指摘する。東京大学の渡辺安虎教授(実証ミクロ経済学)は「私立校は学費を上げても給付があるので出願者数が減らなくなり、学費を上げるインセンティブが生じてしまう」と懸念を示した。慶応大学の小西祥文教授(実証ミクロ経済学)も「高校授業料無償化は私立校・塾の授業料の高騰や受験競争のさらなる過熱化を招いてしまう危険性があり、支援額を引き上げた場合、その効果が増幅される可能性は否定できない」との見方を示した。
  • 実際に支援額を引き上げた大阪府では公立高校の定員割れが増えている。早稲田大学の野口晴子教授(医療経済学)は無償化の拡大により「私立高への集中が起こり、ただでさえ疲弊している公立高の教育環境の悪化を招くのではないか」と述べた。
  • 一方、東京都立大学の阿部彩教授(貧困・格差論)は「私立校にもいろいろあり、通信や定時制など、貧困層や不登校の子どもを対象とした高校への支援を増やすべきだ」と支援拡大に一定の理解を示した。
  • 与野党が協議している高校無償化の拡大には数千億円の財源が必要になる。そもそも教育政策としての優先順位は高いのか。目立ったのは「教育の質向上」や「幼児教育の拡充」の方が優先順位が高いとの回答だ。一橋大学の佐藤主光教授(財政学)は質を高める政策として「教職員の処遇改善、教育のデジタル化などに予算を充てるのが優先」と述べた。一橋大学の森口千晶教授(比較経済史)は「教育格差をなくすためには早期の教育投資の方が効果が大きいため、幼児教育や義務教育に関する支援の方が優先度が高い」と語った。